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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第68話 =地底世界ヨツンヘイム=

 
前書き
さて…久しぶりの(そこまでひさしぶりじゃないけど)更新です!! 

 


夜空を見上げると暗闇の中にいくつもの煌く光があった。…いや、ここは空ではないと訂正しなければいけないとその光が物語っている。光の正体はだだっ広い天井から垂れ下がる無数の氷柱、その内部からほのかに光を発している。天井…という時点で空なんか見えるはずも無くRPGではもはや定番といったステージ、もしくはダンジョンである洞窟の底だ。…それも今まで通ってきたルグルー並の大きさならまだ可愛いと思わせるほどだったけど。軽く見た程度で正確な距離はわからないが端の壁から反対側の壁までがおよそ30kmは当たり前だろう、さらにこの地底から氷柱の生えている天井までは約500m、東京タワーがすっぽり入る大きさだ。さらにこの地面には断崖や峡谷などの自然風景はもちろん、あまりの寒さに白く凍りついた湖や雪山、さらには明らかに人工物と見られる城や砦などの建築物まで見える。

「……まさに地底世界ってヤツだな」

誰が上手いこと言えって言ったんだよ…とスプリガンの剣士に突っ込みたくなるも誰もその言葉を発しようとしない。まぁそれほどの大きさだからだ。サラマンダーの副官、そして古参のシルフからによるとアルヴヘイムの地の底に広がるもう1つのフィールドであり、恐ろしい邪神モンスターが支配する闇と氷の世界。

その名前は《ヨツンヘイム》



――――――

「ぶえっくしょーい!!」

「ぅおぃっ!?」

「リ、リーファ、シー!」

女性にあるまじきパワフルな音を出しながらくしゃみをしたリーファにサウスが必死の形相で口元に指を当てている。さすがに言われる間もなく気付いたのか急いで口を押さえ、3人して緊急避難場である祠の出入り口を警戒する。さっきのリーファのくしゃみで邪神級モンスターさまが「やぁ、こんばんは」と挨拶のようにこちらへやって来ないことも限らないからだ。ただ、その警戒は幸いにも無駄となり外には雪が舞うだけだった。何も来ないことを改めて確認するとゆらゆらとゆれている焚火へと視線を移す。

「…あ、リクヤ君ごめん……」

「いや、また作り直せばいいから気にするなって」

ちなみに俺は手軽なスープ――料理スキル0でも成功確立50%のものだが――を作っていたがさっきの音で操作をミスってしまい真っ黒な珍しいスープが完成してしまったのだ。…いわゆる失敗ってやつだな、飲んでみたけどありえないくらいに不味い。たとえるならリバースした液状のもののよう……うわ、想像しただけで気持ち悪くなってきた……。

「…で、なんでこの人はこんな中でウトウトできるのかな……」

「睡眠欲と食欲だけは旺盛なキリトだからだな」

明らかにジト目でサウスが見ているのは実にユルい顔でこっくりと頭を揺らすキリトだった。アインクラッドでは外での昼寝や何人前あるんだという量の料理を平らげたりと実に欲求にそった生活をしていたときがあった人物、今もそれと大して変わりは無いだろう。

「おーい、起きろー」

「………これは寝ちゃうね……というかユイちゃんはもう…」

リーファの声にも、耳を引っ張る結構痛そうな行動にもむにゃむにゃと言うだけで反応なしな同行者とその膝で丸まっている小妖精を見たサウスが苦笑いしている。

「ほら、寝るとログアウトしちゃうよー」

いいながらリーファがさらに耳を引っ張ると、その力に逆らわずにリーファの方へ体を傾け、ストンとその頭を太ももへと乗せる。さらにもぞもぞと動いてポジションを探していた。

「……膝枕…」

「あら、やってほしいのリクヤ君~?」

サウスがニヤニヤと俺のほうを見て言うのでそれに対し「別にいいよ」とそっけなく返すと「お願いしますって言われたら引くけどね」と笑いながら返してくる。…こんなやつだったっけ?と思いたくなるが高校の半年間という短い期間だが思い当たる節々はいくつかある、と思い込もう。

「そこの2人で漫才してないでキリト君起こすの手伝ってよ」

「はーい……頬叩いてみれば?」

「さっきからやってるよ」

「それでも起きないのはさすがキリトだな…って納得して落ちられても困るから一発ガツンと殴っちゃえば?」

さすがに殴るのは躊躇いがあったらしいリーファだったが決心したのか左手で拳骨を握るとツンツンと逆立った黒い髪の真ん中に狙いを定め、そこへ落下させた。「ガツンっ」ではなく「ヴォグシッ」という爽快な効果音と肉弾攻撃の黄色いエフェクトが奇妙な声と同時に発生しその直後キリトは飛び起きた。辺りをきょろきょろしているキリトの顔に対しリーファはにっこりと微笑みかけ、優しい声をかけた。

「おはよー、キリト君」

「………おはよう…もしかして俺、寝ちゃってたり…?」

「あたしの膝枕でね。小パンチ一発で済ませてあげたのを感謝しなさいよね」

「…そりゃ失礼。何ならお詫びにリーファも俺の膝枕で「要りません!」…だよな~」

「2人とも、漫才はいいから。キリト君は夢の中でナイスアイデアでも浮かんだんでしょ?」

自分のことを棚にあげ注意するサウスにリーファは呆れていたがそんなものは華麗にスルーし、キリトに訊ねる。だが彼が夢で見かけたのは巨大プリンアラモードがもう少しで食べられるらしい夢という本当に同でもいい夢だった。

それにしても…キリトが寝ている間だがキャッキャとサウスとリーファはおしゃべりしていたのが不思議でたまらない。人間ってこういう状況だとすぐに仲が良くなるものなのだろうかと思わせるほどだった。
実はこの2人、ここに来る前までは結構ギスギスとしており、サラマンダーとシルフの関係の溝が深すぎたのか何を言ってもこの2人は衝突していて俺とキリト、ユイはヒヤヒヤさせられていた。でも今では先ほどもいったとおり話していてその中にギスギスしたような雰囲気はまったくといっていいほど感じられない。

「早いよね、女子が仲良くなるスピードって」

「ホントにそう思う…つい数時間前からなんか想像できないくらいだよ。俺にはとても真似できない」

という傍らの男子の感想。どうやらキリトはこういう友達作るのは苦手っぽい。俺は友達作るのは得意だ、ていうかそうじゃないとやってけないって。…などと思っていると何故か地底で舞っている雪のせいで思わず寒さに身震いしてしまい、嫌でもここまで来た経緯を思い出させる。
領主会談のあと、最初の目的であるアルンを目指し飛んでいた俺たちだが会談が終わったのが午前1時、さすがに時間が時間なのでそろそろ落ちようか、ということになりリーファが偶然見つけた小さな村に向かって降下し無事着地したはいいものの本来いるはずのNPCが1人もいないという不思議な村だった。だが、ここで俺たちは中に入るだろうと思い込み宿屋と思われる一番大きな建物へ向かったときに事件がおきた。なんとその建物3つあったのだがその全てが崩れた、しかも溶けるように。建物だったものはヌルヌルしている肉壁へとなり、地面も同じようにヌルヌルとした肉になっている。どうやら巨大なミミズモンスターらしく次の瞬間、足元がぱっくり割れてその中にサウスとキリトは飲み込まれ、俺とリーファは危険を察知し出来る限りジャンプし飛ぼうとしたが舌で捕まえられてキリトたちと同じようにミミズの消化器ツアーに無理やりの参加となった。リーファは「最悪な死に方だー!」と騒いでおりサウスも「嫌だ嫌だ嫌だ」と心底気持ち悪そうにしていた。かくいう俺も気持ち悪くて鳥肌でびっしりだったけど…。
そんなこんなで胃が拒絶したのかこのツアーも終わり、ぽいっと投げ出され全員でここ、ヨツンヘイムの雪原に不時着した、というわけだ。

「ハァ……まだヌルヌルしてるよ…気持ち悪い…」

「いや、気にしすぎだろ」

「だってヌルヌル苦手だから仕方ないだろ…」

こればっかりは仕方が無い、SAOの時から苦手種族ナンバー1のモンスターはスライム系統、次第に体が拒絶し始めてくるほどにあれは無理だ。なので雪原に落ちて、安全を確保したあと真っ先にしたことは雪を使って体のぬめりを取ることだった。

「今でも信じられないな……村に擬態できるモンスターがいたなんて」

「ほんとよねぇ……誰よ、アルン高原にモンスターが出ないなんて言ったの」

「リーファだけどね」「リーファでしょ」

「記憶にございません」

なんともやる気の無いボケツッコミも数秒で終了し、それと同時にスープも完成しそれを飲みながら対策を考えているのか皆口を閉じたので沈黙に包まれた。
ここがただの長いダンジョンなら今からでも歩いて探索して出口を見つけるところなのだが徘徊しているモンスターがやばすぎる。
最初に見たのは五階建てアパートを軽く超えていそうな多脚型モンスター、ほかにもジンベイザメのような邪神が空中を泳いでいたりと軽々しく動きたくない。

「えぇと、脱出プラン以前に俺、このヨツンヘイムってフィールドの情報がゼロなんだよな」

「俺もまったく知らないだよな、そういえば…」

俺たちが知ってる情報はキリトの渡した金額はここでキャンプしながらの討伐じゃないと稼げない金額だった、ということだけで詳しいことはよくわかっていない。リーファに問われたときには「友達からもらった」と必死に言い訳していた。

「…領主さんがああ言ってたってことはこのフィールドで狩ってるプレイヤーもいるわけだ」

「ならミミズ一方通行だけじゃなくて双方向で行き来できるルートがある……ってことか。サウスとリーファはどう思う?」

「あるにはある……みたいね。来るの初めてだから詳しくはあたしよりかサウスさんに聞いたほうがいいと思うけど…確か王都アルンの東西南北に大型ダンジョンが4つあって、そことヨツンヘイムが繋がってる…でいいのかな」

「うん。わたしは何度か来たことはあるけど……ごめん、ここらへんから繋がる道はちょっと…」

そういいながらウィンドウを開いて地図を可視モードにするサウス。そして4つの場所と俺たちがいるであろう場所を指差した。

「多分、わたしたちがいるのはここらへん、西のほうに近いんだけど…いつも入ってる場所は東側だから」

「…そっか、シルフとの対立があるからか」

俺の声にサウスとリーファの2人は頷いた。領地が隣同士ってだけでこんなに中が悪かったんだな。

「話戻すね。階段を上ってくダンジョンなんだけど……そこを守護してる邪神が当然のようにいるの」

「俺たちでも勝てるくらいか?」

「将軍を破ったキリト君がいても無理だよ。軍隊で行ったんだけど最初の邪神でさくっと全滅しかけて将軍ですらも10秒しか持たなかったし」

「……そりゃまた……サウスはどうだったの」

「わたしも数秒で死んじゃった」

笑いながら「死ぬ」と言うサウスに少しだけ変な感じがした。向こうのが抜けてないせいだろうか、いまだに死にも、その言葉にすらなれない。やっぱりまだまだここがゲームって割り切れてないのかな…。

「サウスさんですら駄目だったんだ……。あ、今は重装備のプレイヤー、公殲滅力の火力担当、支援と回復がそれぞれ最低8人必要らしいからあたしたちじゃ何も出来ずにプチプチと踏み潰されるわよ」

「そいつは勘弁だなぁ…」

「でも、やってみたくない?」

今の話で挑戦心に火がついたというか思わずにやりとしてキリトを見ると彼も同じらしく小鼻をひくつかせている。

「ま、それ以前に九分九里階段ダンジョンまではたどり着けないけどね。この距離歩いたらどっかではぐれ邪神を引っ掛けてたげられたと思う間もなく即死だわ」

「ここじゃ光が届かないせいで飛べないからね。しかも、邪神モンスターは足遅そうに見えてめちゃくちゃ速いよ」

サウスの言うとおり俺たちの翅は光を吸収出来ていないせいで全員分、萎えている。赤いサラマンダーの翅もシルフの緑の翅もスプリガンの翅も全て汚れた黒色に見える。もちろん、ヴォルトの翅も例外じゃなかった。

「と、なると最後の望みは邪神狩りのパーティの大規模パーティに合流させてもらって一緒に地上に戻る手しかないな」

キリトがそういうもその望みは結構低いだろう。アルヴヘイムの時間はまだ午後7時くらい、バリバリのゲーム時間だが現実ではすでに2時すぎ、さすがにそこまでの時間で大規模パーティとなると相当数が限られるだろう。力なく笑みを浮かべたキリトはそのまま自分の膝上にいる小妖精をつついて起こす。

「ふわ……。おはようございます、パパ、にぃ、リーファさん、サウスさん」

「おはよう、ユイ。残念ながらまだ深夜だけどな。いきなりで悪いけど近くに他のプレイヤーがいないか検索してくれないか」

キリトの声に瞼を閉じて耳を澄ませたユイ。だが、すぐに目を開くと申し訳無さそうに耳をたれさせてつやのある黒髪を黒髪を横に揺らした。

「すみません、私がデータを参照できる範囲内に他プレイヤーの反応はありません。…いえ、それ以前にあの村がマップに登録されていないことをに気付いていれば…」

「気にしないでユイちゃん。あの時はあたしが周辺の索敵を厳重にって言ったから…」

ユイに言葉をかけるリーファだがそのあとの潤んだ瞳にやられたらしく顔を少し赤く染めていた。さらにユイによる犠牲者が増えてしまったか…。ちなみに初めてユイと会った全員はもうとっくの昔にやられている。

「ま、こうなったらやるだけやるしかないよね」

「やるってなにをさ」

「何ってリクヤ君……あたしたちだけで地上までいけるかを、だよ」

「でもさっき無理って言ってなかった?」

「99%はね。でも残りの1%になら…慎重に行動すれば可能性はあるわ」

その発言にユイが拍手をし、そのまま立ち上がろうとするのでとっさに俺はその袖を掴んで、引き戻した。

「な、何よ…」

「あのさ、リーファはそろそろログアウトした方がいいよ」

「え、な、何でよ…」

「何でって、もう2時半だよ。リアルじゃ学生らしいし、それなのに俺たちに無理やり付き合ってもう8時間連続でダイブ中、さすがにこれ以上つれまわすのは申し訳ないって言うか…」

「……べ、別に1日くらい徹夜したって」

そういうリーファだが学校へ行っていない俺とキリト、そしてすでに進学先の大学が決まっているサウスと違ってまだまだ学生で明日も学校があるのだろう、そんな人が俺たちなんかと一緒に来てもらう理由は無い。

「リーファ、本当にありがとう。リーファがいなかったらここまで来ることは多分出来なかったよ。めちゃくちゃ感謝してる。どれだけ言っても足りないくらいにそう思ってる」

「………別に、君のためじゃないもん…」

不意にその呟きが聞こえ、少し下げていた頭を上げると目線をそらされさらに口を開いた。

「あたしが…、あたしがそうしたかったからここまで来たんだよ。それくらい判ってくれてると思ってたのに無理やり付き合ってもらってた…。そう思ってたの?」

「そんなこと…」

思うわけが無い、けれどリーファから流れる涙を見て俺はそんな風に思わせることを言ったんだ、と自覚させられた。感情がオーバーになるVRMMOだからこの涙は嘘のものじゃないだろう。

「あたし…今日の冒険、ALO始めてから一番楽しかった。ドキドキしたりワクワクしたり……ようやくあたしにももう1つの世界なんだって信じられる気がしてたのに…!」

「…リーファっ!?」

そう言ってリーファは外へと駆け出そうとするのを止めようと腕を伸ばす。が、その瞬間ボルルルルルゥ…と、低い咆哮が俺たちの耳まで届き足を止めさせる。この咆哮は大型モンスター、つまり邪神モンスターというのは確定だろう、というかヨツンヘイムには邪神しかいないらしいし。その証拠にさらにずしんずしんと地震を起こすような足音も聞こえてくる。

「…待ってって、リーファ!」

「離して!あたしが敵をプルするからその隙に…」

抑えた口調でささやきあうがその間にリーファの肩に手を乗せたサウスが外に視線を向けてさらにささやく。

「そうじゃないよ、リーファちゃん」

「そうじゃないって……どういうこと?」

「…1匹じゃない」

キリトの声に俺も耳を澄まして聞いていると確かにエンジン音のようなものと木枯らしのようなひゅるるという音も聞こえてくる。

「だったらなおさらのことだわ!誰かがタゲられたらその時点でもう手遅れよ!」

「だからそうじゃないって言ってるでしょ……その2匹の邪神は」

「互いを攻撃しあっているようなんです!!」

まさかモンスターとモンスターの戦闘があるとは……どうやらここにいる全員そんな体験は無いらしく慎重にだが様子を見に行くことにした。
 
 

 
後書き
涙「サウスとリーファの絡みをどうするかにちょっと悩んだんだよな」

リ「あー…サラマンダーとシルフだから…」

涙「でも結果的にああなりましたwwさて、SAO12巻読んだ人ってどれくらいいるんでしょうかね~」

リ「原作買った人はもう読んでるだろ」

涙「アニメから入った僕でもいまじゃ原作もコンプリートなう!…じゃなくて、内容だよ」

リ「ネタバレ?」

涙「…だから中々いえないけどユージオのあの技とキリトの技が強すぎるような気がするww特にユージオ君のは某格ゲーのあの技に似てる気がww」

リ「煉獄?」

涙「そのネタはこの小説は言ってないから言わないでおこうねww」

リ「確かに……やめておこっと」

涙「さて…近状報告!僕の小説の登場キャラのモデルの人何人かとはまたクラスメイトですww」

リ「どうでもいいな……ま、これからもこの小説をヨロシク!」

涙「感想とか待ってまーす!!」 
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