DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-13最善
ライアンは、ではこの男は、ホイミンを邪悪な魔物として斬り捨てることはしなかったのだな、しかし今になって仲間にしたいなどとは、それではまるで。と考えている。
「ややっ!お前の後ろにいるのは、ホイミンじゃないか!全く、お前が羨ましいよ。」
ライアンは、しかし悪いようにばかり考えることは無い、この男はホイミンを仲間にせず、斬り捨てもしなかった。
ホイミンは、私の仲間になった。
ホイミンは、喜んだ。
私は、楽しい。
この男のおかげと言えぬこともない。と考えている。
男が顔を赤らめ、口ごもる。
「そ、それでライアン。こうして会ったのも、何かの縁だ。よ、良かったら」
ライアンにも、何を言われるのかはわかる。
ここまで辿り着いた数少ない王宮戦士、力を合わせてことに当たるのが最善であろう。
王宮戦士として、そうするのが正しいだろうこともわかる。
だからこそ、この男も、顔を赤らめ恥を忍んで、言い出そうとしているのだろう。
ライアンは鮮やかな笑みを浮かべた。
男が硬直する。
「お互いに、頑張ろうではないか。ではまた、王宮でな。行くぞ、ホイミン」
王宮戦士として、自分の背を彼に預けることは、できる。
しかし、ライアンの仲間、ホイミンの背を、奴に預けることはできない。
ライアンを守るようには、奴はホイミンを守らない。
そのような者がいれば、ライアンがホイミンを守ろうとするとき、どうなるか。
奴が直接、ホイミンを斬り捨てるなどと、心配はしていない。
覚悟を持って命を預けあうその場に、居て欲しく無かった。
便利な道具のように、扱って欲しく無かった。
拒絶の笑みで切り捨てられ、真っ赤になって立ち尽くす男から返事は無いが、構わず歩き出す。
ホイミンは、嬉しそうに揺れている。
「ぼく、仲間にするのを断られて、とっても悲しかったんだ。でもそのおかげでライアンさんに会えたから、あの人にちょっと感謝かも。」
「そうだな、ホイミン。私もだ」
王宮戦士としての最善で無くとも、王命を果たせばそれで良い。
自分の力及ぶ限り、選ばねばならぬときなど来させない。
これは、力の及ばぬことでは無い。
ふたりで立ち向かう。
これが、今のふたりにとっての最善だ。
「王宮に帰ったら礼を言おう」
偶然に阻まれなかった、幸せの礼を。
同僚の男と別れ、ふたりはなおも塔を進む。
いかにも怪しい地下室に慎重に踏み込み、肩透かしを食うが、部屋にあった魔法陣で気力体力を回復し、宝箱から魔力を帯びた強力な剣を入手して、戦力を高める。
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