| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

一章 王宮の女戦士
  1-11戦い

 外に出ると、日はまだ高かった。

 この靴らしきものを使えば、子供たちのところに行けるはずである。

 時間は、ある。
 時間が、惜しい。

「ホイミン。これを履けば、いなくなった子供たちのところに行けるはずだ。消えるように移動するそうだから、しっかりつかまっていなさい」
「はい、ライアンさん!」

 ホイミンがしっかりしがみついたのを確認して、ライアンは奇妙な靴らしきものを――靴と履き替えるべきか悩んだが、移動後の行動に支障が出そうだ、伸縮性があるので靴に重ねて履けないか、履けそうだ――履いた。

 瞬間、景色がぶれて身体が浮き上がる。


 次の瞬間には、全く違う景色が広がっていた。

 空を飛んだ靴らしきものを脱ぎ、周囲を見る。

 高い建物の屋上であるようだ。
 遠くに村が見え、建物は湖の中心の島にある。
 イムルの西、湖の塔か。

 と、子供の泣き声がした。

「えーん、えーん。はなしてよー」

 見ると、子供が魔物に引きずられ、階下に消えていく。

 古井戸の底にいたはずは無い、あの空飛ぶ靴らしきものを隠し持っていたのか、事件との関連を疑わないでも無いだろうに、子供とはどこまでも無鉄砲なものだ。

 考えながらも追いかけるが、別の魔物たちに阻まれる。

 あちらは障害なく目的地に辿り着けるが、こちらは何度も邪魔される。
 引き離された以上、無暗(むやみ)に焦っても仕方が無い。


 武器を構え、指示を出す。

「ホイミン。攻撃を受けないように、下がって。離れすぎないように」

 古井戸の底の比でない強さを感じる魔物たちだ。
 背後に(かば)い、わざと攻撃を受け続けるような、無茶はできない。
 かと言って離れ過ぎ、孤立したところを狙い撃たれれば、守り切れない。
 位置取りは重要だ。

 だが、無理ではない。
 今までが、甘過ぎた。

 離れ過ぎれば呼び寄せ、近過ぎれば遠ざける。
 多くは防ぐが、時折ホイミンにも攻撃が(かす)る。
 自分が危なくてもライアンを優先しようとするホイミンに、自分を回復させる。

 生き延びられぬほどの危機では無いが、間違えれば死ぬ。
 いつかは、覚えるべき手際。
 いつかが、今だっただけだ。

 最初はたどたどしいながらも致命的な失策は免れ、慣れてくるころには敵も数を減らし、遂には危なげなく最後の敵を打ち倒した。

 ホイミンが周囲を見回し、ライアンの顔を見る。
 ライアンが頷く。


 ライアンの仲間になったホイミンの、最初の本気の戦いだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧