DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-04おばちゃん
曰く、行方不明になった子供たちは、村を抜け出して遊んでいた。
消える直前、奇妙な靴で遊んでいた子供がいる。
記憶を無くし、子供返りした、或いはその振りをした男が、盗みを働き、村の牢屋にいる。
調査を続ける中で、学校に辿り着いた。
消えたのは子供ばかりということであるし、何かわかるかも知れない。
職員の女性に笑顔で断りを入れ、教室の中に入る。
「おばちゃん!勉強の邪魔しないでよ!」
職員に見送られたことであるし、教室が騒がしかったので、休憩中かと思い入って来てしまったが、違ったらしい。
職員の顔が赤かったのは、気分を害していたのかも知れない。
悪いことをしたと謝ろうとするが、なぜか相手の子供のほうが、教師や他の子供たちに、すごい勢いで窘められている。
どうやらおばちゃんと呼んだのがまずく、おねえちゃんと呼ばねばならないらしい。
子供からすれば大人の女性はおばちゃんであろう、と口を挟んでみるも、
「ライアン様を、おばちゃんだなんて、とんでもない!」
と口を揃えられてしまった。
年長の女性にお嬢さんなどと呼びかけることは無いし、今となってはおねえちゃんという言葉を使うことも無い。
よくわからないが、そういうものなのであろう。
ともかくこちらに注意が向いたところで、邪魔をしたことを詫び、学校を出る。
次に、牢屋に来た。
牢番に笑顔で断りを入れる。
また、顔が赤い。
囚人が子供返りを装い、罪を免れようとしている、と疑う者もあるそうであるし、牢番も憤っているのかもしれない。
囚人がこちらに気付き、声をかけてくる。
「おばちゃんだあれ」
「おねえさまだ!」
答える前に、牢番が素早く割り込んで来た。
やはり、おばちゃんは駄目らしい。
そしてやはり、自分はのろまであるかもしれない。
「おばちゃ」
「おねえさまだ!」
「……おば」
「おねえさまだ!」
話が進まないので、子供返りしている者に、道理を説いても仕方なかろうと――その道理もよくわからないのだが――牢番を止める。
牢番は黙ったが、囚人を睨みつけている。
囚人は怯えている。
やはり話が進まないので、牢番には離れてもらう。
あのような怪しい男とふたりきりにする訳には、と渋りながらも受け入れてくれたことに、笑顔で礼を言う。
憤りのためか、真っ赤になりながらも、睨むのをやめてくれたので、離れてもらう必要は無かったかも知れない。
囚人の名前が『アレクス』であることを確認して、牢屋を出る。
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