真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第11話
小十郎side
遂に揚羽様が川神百代なる者と、死合をされる日が来た。死合の場所は川神院。開始時刻は夜中だ。今回の死合で揚羽様が川神百代と戦うのは最後になる。今日の死合まで日々修行なされた揚羽様のコンディションは完璧な状態だ。
負ける要素などまるで無い。勝つのは揚羽様だ! 俺は悠斗と揚羽様とステイシーと李と共に夜の川神市を歩いている。今回の死合には川神院が防衛を固めてくれるので邪魔が入らない様になっている。だが、それは川神院に到着したらの話だ。
今現在、街の中を歩いて川神院に向かっているが揚羽様の命を狙う刺客どもが後を絶たない。
揚羽様は直接戦闘は一切されていない。護衛である俺達に全てを委ねていられる。
(く!こんなに刺客が多いのは初めてだ!だが、悠斗がいるお掛けで俺達はまだ、刺客と戦う事が無いんだよな)
夜の川神市を歩いて川神院に向かっているが、刺客の数が尋常ではない。 悠斗が迎撃してくれているが、倒した刺客の数は既に100人はいるだろう。
「九鬼揚羽!お命ちょうだ・・ギャバ!」
また、建物の死角から刺客が飛び出してきた。悠斗は一撃で刺客を無力化する。放った右拳は全く見えなかった。
歩きながら、倒された刺客をチラリと見ると胸部に拳が当たった部分が完全にヘコんでいた。
(どんな力で殴っているのだ!?今日の悠斗は普段より力を入れて戦っているのか!?)
下手したら刺客は死んでるかも知れない。ステイシーが携帯電話は刺客の回収を頼む様に電話している。
だが、正面に次の刺客の軍団がやって来た。
「ターゲットを確認。九鬼揚羽。貴様を殺害する。各小隊構え!」
顔を隠し、完全武装した兵士達20人ほとが立ち塞がった。しかも、全員が銃を構えている。
「く!揚羽様!お下がりください!」
「揚羽様。下がっていてください!」
「李!行くよ!小十郎!揚羽様の護りに着きなさい!」
「慌てるな!悠斗に任せれば良い。見ておれ!」
悠斗が敵に向かって悠然と歩いている。
敵は銃を構えてトリガーに指を掛けている状態だ。下手に挑発すれば悠斗の命が危ない!
「それ以上此方に来るな!構わん!射て!」
兵士達が銃を一斉に発射しようとするが、銃弾が発射される事はなかった。カランとした音と共に銃がバラバラになって壊れていった。
「な!馬鹿な!なにが?!グギャ!」
「ゴベ!」
「バタ?」
「フライ!」
「アイ!」
「キャン!」
「フライ!」
20人いた刺客達が皆、一様に頭から地面に倒れる。全員が股間を押さえて口から泡を吹いて気絶している。思わず俺も自分の股間を押さえてしまう。あれは相当痛いし苦しい。
「悠斗。よくやった。さあ、川神院はもう近いぞ。皆、我に着いて参れ」
「は!揚羽様」
「はい!揚羽様」
「分かりました揚羽様」
「分かりました!揚羽様!!」
悠斗を先頭に俺達は歩みを進める。暫くして川神院に到着した。門の前では沢山の修行僧達が警備にあたっていた。
川神院の総代川神鉄心殿が出迎えに来てくれた。
「今回の死合を受けてくれた事を感謝する」
「良い。鉄心殿。我は心残りを作らぬ為に死合を受けたのだ。気にしないでほしい」
「そうであったか。今回の死合については、川神院が全戦力を動員して会場を警護する。乱入者や邪魔者は一切中に入れぬ故、安心して死合に挑んでほしい」
「分かりました。ただ、戦力はいくら有っても困らぬ故、我の侍従達も警備に使ってもらいたい」
川神鉄心殿が俺達を見る。悠斗は既に反対側を見ていて、揚羽様に害する敵がいないか警戒を行っていた。一見背中を見せているが、まるで隙がなかった。ステイシーや李も警戒を怠ってはいない。川神鉄心殿は目を細めて俺を見る。
(く!俺も他の3人位に強ければ良いのだが、まだまだ足手まといにしかならないのか!?)
内心で焦る俺を尻目に、川神鉄心殿は髭を撫でる。
「ふむ。分かりました。では、背中を見せている男性「不動悠斗だ」、悠斗には正面門の警備の手伝いをお願いするかの。他の3人は修行僧達の指示に従って警備をお願いする」
「分かりました!」
「分かりました」
「頑張ります!!!」
どうやら俺は川神鉄心殿の目にかなったようだ。 俄然やる気が出てきた。
「では、九鬼揚羽よ。ワシについてきてくれぬかの」
「分かった。だが、少し待ってほしい」
「うん?なんじゃ?」
「悠斗」
「はい。揚羽様。なんでしょうか?」
悠斗が振り向き揚羽様と向かい合う。
「我は戦いに行って参る。悠斗も、我の死合を邪魔する者を川神院に近付けさせるなよ」
「はい。かしこまりました。しかと、敵を殲滅して川神院には誰一人通しません」
「うむ。頼むぞ。無論、ステイシー、李静初、小十郎も頼むぞ」
「はい。かしこまりました」
「分かりました。敵は殲滅します」
「お任せください。揚羽様あああああ!!」
全員が返事をする。俺の返事が夜の川神市に響く。煩いと揚羽様に殴られた。
「悠斗よ。我は必ず勝ってくるからな」
「はい。揚羽様。信じてお待ちしております」
「悠斗よ。我に気合いを入れてくれ」
「分かりました。揚羽様」
揚羽様と悠斗が抱き締めあってキスをする。辺りに粘着質な水音が響く。互いに舌を絡ませあった、フレンチキスをしている様だ。
(く!流石に見ている此方が恥ずかしいではないか!)
ステイシーは頬を紅くして苦笑いしている。李は表情に変化は見られないが、二人のキスを真剣に見つめている。
川神鉄心殿は「若いの~」と言って髭を撫でている。やがて二人は離れた。
「悠斗のおかげでやる気は充分になったわ!では、悠斗よ!我は行って参る!」
「行ってらっしゃいませ、揚羽様」
「勝ってきてください揚羽様」
「御武運を」
「揚羽様あああああ!!頑張ってくださいませぇぇぇぇぇぇ!!!」
「では、ワシについてきてくれ」
「うむ。分かりました」
川神鉄心殿に連れられて揚羽様は川神院の中に入られて行った。俺達はその背中を見送り、修行僧達の指示に従って各所に配備されるのであった。
小十郎sideout
語りside
夜の川神院で二人の女性が対峙している。
一人の老人が二人の間に立って髭を撫でている。 老人の名は川神鉄心。
武道に関わる者ならば、1度は必ず聞いたことがある武人だ。
彼はかつて最強の人間として名を馳せていた人物だ。今は、年齢を考慮してその称号を弟子の橘平蔵に譲り、第一線からは退いて引退を宣言して若者の育成に力を注いでいる翁だ。
現役を退いたとは言え、今でも彼が練り出した技と瞬間の爆発力、そして不回避の速攻による一撃は他の追従を許してはいない程だ。
その川神院の総代である川神鉄心が、今回の死合いの立会人を勤めている。これはすなわち、公平正大な条件下の中でたとえなにが起ころうと本人達が納得がいくまで戦いが終わることが無いことを示しているのだ。
両者がこれから行う死合を邪魔しようとする者は、川神鉄心を始め川神院の師範代、川神院の外を守っている修行僧並びに九鬼家侍従隊の者達に排除されるからだ。
両者の為の舞台は整った。川神鉄心が対戦者の名前を読み上げる。
「西方、川神百代!」
「ああ!」
長い黒髪を風に靡かせて、一人の少女が前に出る。鉄心の声が周囲に響く。ドォン、と太鼓の音がそれに続いて響く。
「東方、九鬼揚羽!」
「うむ!」
更に対戦者の名前を読み上げる。太鼓の音が辺りにこだまする。
竜虎が対峙する。
両者は互いの目を見つめている。
川神百代は九鬼揚羽の目を見て考える。
(普段はキリッとしているが、優しく親しみやすい人物だったが、今はキリッとしているが熱く闘志を燃やしている。しかも、生半可な闘志ではない。これは本気で楽しめるな)
九鬼揚羽も同様に川神百代の目を見て考える。
(川神の。戦う時以外では鷹楊としておるが、親しみやすくノリの良い友人であったな。だが、戦となれば別人だな。瞳の中には熱く燃えている様な色になっておるな。
悠斗が1度見せてくれた、戦闘が好きな者の目だ。無論、悠斗は戦う事は好きだがむやみやたらな暴力は人を傷付けると言っていたな。川神の目はそんな危ういさが感じ取れる。これが、強すぎる者のサガか)
互いに口を開かぬまま見つめ会う。やがて、川神百代が口を開いた。
「揚羽さん。これが最後の死合になるのは本当か?」
「そうだ。川神の・・・我は、我は財閥を継ぐ職務で多忙になるゆえにな。それに、花嫁修行と結婚式の準備等もあるゆえにな」
九鬼揚羽は戦闘体制を取る。手加減などするつもりはない。最初から全力でぶつかるつもりなのだ。必勝の構えをする。負ける事などありえないと言った感じだ。
「花嫁修行?揚羽さんは、学生を卒業と同時に結婚するのか?」
「いや、暫くは財閥を継ぐ為の職務で忙しいゆえに、結婚はしない。大体、伴侶になる男が修行の旅に出るのでな」
「え?揚羽さんは恋人がいたのか!?初耳だ!」
「そうであろう。我も言ってはおらんかったからな。さて、武人としてはお前の相手をできるのは、これが最後になるだろう」
「!そうか。そうだよな・・・結婚式には呼んでくださいよ」
「ああ。無論だ。我の好敵手(ライバル)である、お前を呼ばぬ理由はないからな」
これから戦うのにも関わらず、普通の少女達が交わす様な雰囲気で会話をする二人。だが、それもつかの間だった。
「ならば派手に散ってもらう!」
川神百代も戦闘体制を取る。同時に互いに感じ取った。
((この戦い、互いの全力の一撃を持って、一瞬で終わる!))
両者が感じ取れたのはまさに、互いの技量がそれだけ高い事の現れだった。
「ふははははは!その殺気、心地良いわ!我が伴侶の殺気に及ばぬがな!」
「私もだよ揚羽さん!揚羽さんの伴侶がどれだけ強いかは知らないが!今の私には揚羽さんの殺気は心地が良いよ!」
互いの維持とプライドが激突する。お互い、これから命のやり取りをすると言うのに心底楽しそうな表情をしている。
お互いがお互いを高い壁と認識して、それを越えるつもりなのだ。
川神鉄心の合図が響く。
「いざ尋常に!始めいぃぃ!!!!」
「いくぞ!!!」
「おう!!!!」
竜虎がぶつかり会う。
後の、武道四天王最強と呼ばれる川神百代と、九鬼財閥の女王と呼ばれる九鬼揚羽の激闘が始まるのであった。
語りsideout
悠斗side
川神院での死合から一夜明け、七浜にある九鬼ビルの自室の扉を開け廊下に出る。 部屋に置いていた荷物は必要最低限な物以外は無かったので、バッグ1つに全て収まった。無論、バッグに入らない物は無い。このバッグは神様からアフターサービスで貰ったバッグだ。このバッグの中には無限に物が入るから非常に便利だ。しかも、必要無いときは俺が神様から貰った能力の無限に物や武器を取り出したり絞まったり出来る能力のおかげでかたずけていられるから邪魔にならない。
廊下を歩きながら感慨に耽る。
(早いものだな。揚羽様に拾われてから、もう1年が経つのか。揚羽様に拾われていなければ、今の俺はいなかっただろうな)
揚羽様に拾われていなかった事を想像するが、嫌な想像しかできなかった。雑念を振り払い、今までお世話になった人達に挨拶周りをする。
一通りの人に挨拶を終えた俺は、九鬼ビルの正面出口がある1階ロビーに着いた。
(いろいろ、楽しい日々だったな。此処で過ごした日々は忘れられないな。 暫くお別れだ。また、必ず帰ってくるからな)
1人誓いを立ててロビーから出口の自動ドアを出る。するとそこには、黒いリムジンと、英雄様、紋白様、あずみさん、ヒュームさん、ステイシー、李、小十郎、が待っていた。俺の姿を見ると英雄様とあずみさんが一歩前に出てきた。
「皆様お揃いですか」
「悠斗よ。行くのだな」
「はい。英雄様。帝様のご命令ですので」
「そうであったな。悠斗よ。我は必ず悠斗が我が九鬼家に相応しい男になって、帰ってくると信じておる!」
「英雄様の期待を裏切らない様に、派手に活躍してきてください」
「あずみの申した通り、派手に活躍して名を馳せてこい。なに、悠斗ならば必ずや世界に名を広められるだろう」
「激励ありがとうございます。英雄様。必ずや、名を馳せてまいります」
英雄様とあずみさんに頭を下げる。二人が下がり紋白様とヒュームさんが俺と向かい合う。
「悠斗よ。妾は悠斗と共に過ごした日々は楽しかったぞ」
「俺も楽しかったですよ。紋白様」
俺は紋白様の頭を優しく撫でる。紋白様は嬉しそうな表情をしている。
「こうやって、悠斗に頭を撫でてもらえるのも暫くは無いのじゃな。悠斗。父様の出す試練は厳しいだろうが、からなず達成して帰ってくるのだぞ!!良いな!?必ずじゃぞ!!」
「はい。分かっております。紋白様。必ず戻ってまいります」
紋白様は、やや涙ぐんでいる。俺はそんな紋白様の頭を優しく撫でつつ、ヒュームさんを見る。
ヒュームさんが懐からなにかを取り出した。
「悠斗。飛行機のチケットと命令書だ。無くすなよ?」
「分かってます。ヒュームさん。お世話になりました。必ず試練を達成して戻ってきます」
「ふ。当たり前だ。俺を凌駕する力があるお前が、試練を達成出来ない筈がないからか。せいぜい、怪我のないよいにな」
「はい」
ヒュームさんが右手を差し出す。俺も右手を差し出して、互いに握手を交わす。ヒュームさんに連れられて紋白様も下がる。李とステイシーが正面に来た。
「悠斗。頑張ってね。あんたなら、必ず試練をクリア出来るだろうからさ!」
「気を付けて。悠斗がいなくなると寂しくなるけど、次に帰って来た時には訓練の負けた分をリベンジさせてもらうわ」
「ありがとうステイシー。李。戻って来たら何時でもリベンジを受けてやるよ」
二人はそれだけ言って下がる。最後は小十郎と向かい合う。
「悠斗。遂に行くのだな」
「そうだ、小十郎。今までありがとうな。九鬼家で最初に世話になったのは小十郎だったからな」
「そうだったな。揚羽様に拾われてきたのだからな。それが始まりだったよな。悠斗。お前がいない間は俺が揚羽様を専属として支えているから、悠斗は試練に対して頑張って来てくれ!悠斗がいない間は俺も死ぬ気で頑張るからさ」
「ああ。小十郎。揚羽様を頼むぞ。俺よりも付き合いの長い小十郎だからこそ、出来る事もあるだろうからさ。それに、小十郎も俺が入った当初よりも格段と強くなったしな。任せられる」
入った当初は999番だった小十郎も、俺と共に修行しなが仕事をしていたら、いつの間にか100番台の上まで来ていた。出会った当初の様な、落ち着きの無さは成りを潜めた。熱血漢なのは代わりないが、場の空気を読める様になったりしたのだからかなり成長した証だろう。
「ああ。任された。悠斗。元気でな」
「おう。小十郎も元気でな」
互いの拳を突き出して軽く当てる。小十郎がリムジンの後部座席のドアを開けてくれる。
俺は振り向いて、今までお世話になった人達を見渡す。
「今までお世話になりました。皆さんと過ごした日々は楽しかったです。
また、必ず帰って来ます。それまでの間、皆さんもお元気で」
「うむ。悠斗。達者でな」
「悠斗!必ず帰って来るのだぞ!」
「せいぜい、頑張るんだよ」
「ふ。なに、心配してないからな。早く帰ってこい。悠斗がいないと、若手が育たぬからな」
「気を付けるんだよ。生水飲んで腹下すなよ」
「行ってらっしゃい」
様々な声援を受けて俺は車に乗り込む。小十郎がドアを閉める。
運転手が車を発進させる。俺は窓から手を振る。見送りに来てくれた皆が手を振ってくれた。
やがて皆が小さくなり、彼方か見えなくなったのを確認して窓を閉めて、椅子に深く腰かける。
「ふむ。感動的な別れかただったな。我も少し涙が出そうになったぞ」
「え?」
俺と運転手の二人しかいない筈の車の中から、女性の声が聞こえた。
俺は隣の座席を見る。
すると、そこには体のあちこちに包帯を巻いた俺の主の、九鬼揚羽様が軍配を持って口元を隠して座っていた。
「あ、揚羽様!大丈夫なのですが!?かなりの大怪我の筈では!?」
「なに。見た目ほど大した怪我ではない。包帯が巻いてある場所は殆どが擦過傷だ。今回の死合は骨を持って行かれなかったからな。普通に活動しても問題ない程だ」
「そうでしたか。しかし、なぜ車の中で待っていたのですか?」
普通に考えたら英雄様達の様に、見送りに来てくれればいいだけの話だ。 揚羽様は俺の側に寄ってきて、俺の膝の上に向かい合って座る。
「悠斗と二人きりで過ごす最後の時間を取りたかったからだ。それに悠斗と暫く会えなくなるからな。最後におもいっきり甘えたいしな」
「揚羽様」
揚羽様の顔がゆっくりと近付いて来る。俺はそっと揚羽様を抱き締める。揚羽様は俺の二の腕に手を乗せる。互いの唇が重なり合う。
「ん・んん・ち・・ちゅ・・ちゅる・・・ふ・・ふわ・・ちゅる・・悠斗ぉぉぉ!」
車の中に水音が響く。運転手には聞こえない様になっている為、互いを激しく求め合う。
俺と揚羽様は空港に着くまでの間、車内で互いを激しく求めあうのであった。
悠斗sideout
揚羽side
我は悠斗を空港まで見送り車で自宅に帰る途中だ。
悠斗は今頃飛行機に乗り空の旅を楽しんでいるだろう。
我は先程まで空港で行っていた、悠斗とのやり取りを思い出す。
悠斗が最初に向かったのはドイツであった。飛行機のチケットの行き先がそうなっていたのだがら、まず間違いない。恐らく、父上がなにか考えがあっての事なのだろう。
(恐らく、近々NATO(北大西洋条約機構)軍や国連軍が、中東や南米で起きている紛争や民主化を求めるデモを弾圧する国々に、武力介入すると聞いていたからな。その、武力介入に悠斗を参加させるつもりであるのだろう)
紛争や内戦は簡単に無くなるものではない。だが、悠斗が参加するのたがら短期間で戦闘事態は終了する可能性が高いだろう。我は窓から外の景色を見る。東京湾が太陽の光を反射して綺麗に輝いていた。
(我も今日で学生が終わりだな。明日からは財閥の一員としての新しい日々が始まるのだ。何時までも悠斗に頼ってばかりではいられぬ。我も精進しなくてわな)
夢殿、圭子、アナスタシア、我の友人達も別々の道を歩み始めている。
夢殿は大学に進学したな。圭子は中華料理屋の実家の手伝いをすると言っていたな。アナスタシアは浪人してそれを楽しんでいる。我には理解が出来ぬ範囲だがな。
(皆が新しい明日を。新しい道を歩み始めている。人生は闘いであるが我のモットーよ。皆に負けぬように新たな闘いに挑むとしよう。もはや、武道に心残りはない。結果はどうあれ我は全力を尽くしたのだからな!)
自宅に戻り次第、父上に会いに行かねばならぬ。 我の新しい闘いが始まるのだ。我は右手を突き出す。
「我は九鬼揚羽!人生は闘いであるを体現する者なりぞ!我が伴侶に相応しい女になるために、我は新たな闘いを始めるぞ!ふはははははははは!!」
我は車の中でそう宣言する。悠斗が帰って来た時、我が悠斗の側にいるに相応しい女になっているようにするために。
その後、自宅に着いた我は父上の元に向かい、財閥で働く部署や様々な事を話し合う事になるのであった。
揚羽sideout
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