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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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邪神

 
前書き
なんやかんやで今日はエイプリルフール。考え付く嘘を呟こう。 

 
 地響きを確認するとリーファをほこらの中に引き戻して状況を説明しようとするがリーファが引き戻されるのを拒否して出ようとする。

「離して!あたしが敵をプルするから、キミたちはその隙に離脱を……」

「違う、様子が変だ。近いだけでその場をほとんど動いてないし、音が複数に聞こえる」

「えっ……?」

「ああ、数は二だな」

 キリトは数を把握していうと、リーファは腕を振りほどこうとした。

「二匹なら尚のことだわ!キミたちのどっちかにタゲられてからじゃ手遅れなんだよ!死んだらまたスイルベーンからやり直しなんだよ!?」

「いえ、違います。リーファさん!」

 ユイが細い声で叫んだ。

「接近中の邪神級モンスター二匹は……互いを攻撃しているようです!」

「えっ?」

 リーファが目をぱちくりとさせた。そして、地響きを鳴らす二体のモンスターがいると思われる場所を見ると言う。

「で、でも……Mob同士が戦闘って、どういう……」

「わからん。でも、とにかく様子を見に行こう。コート返してもらうぜ」

 そう言ってリーファの肩にかかっていたコートを取って自分で着る。そしてキリトもリーファに言う。

「行こうぜ。どうせこんなほこらじゃシェルター代わりにもならないし」

「そ、そうだね……」

 そしてゲツガ達は薄暗い雪原を駆ける。数歩進んだだけで音源たる邪神が視界に入った。

「おいおい、遠くからみても十分大きかったが、目の前で見ると威圧感パネェな」

 ゲツガはそう言いながらもどんどん近づいていく。近づいてようやく邪神の姿を視認する。片方はギリギリ人間の形を保っている巨人みたいなモンスターだった。しかし、縦に三つ連なった巨大な顔の横から四本の腕を生やしたフォルムは少し気持ち悪いと思える。そして腕には巨大な剣を持っているもう一体は像の頭にクラゲみたいな身体をつけたどこかキメラを連想させる姿をしている。だがあえて象クラゲと呼ぼう。

 そのは象クラゲの邪神は巨人の邪神の攻撃を止めようと二十本ぐらいついたの鉤爪のついた肢を一つ動かして攻撃するが暴風のような巨人の剣撃を止めることができていない。

「ど、どうなってるの……」

「わからない」

「同じく、ていうかMob同士の戦いなんて初めて見た……」

 激しいMob同士の戦闘を見てそれぞれはそう口にする。その間に巨人の振り回す剣が象クラゲの鉤爪のついた肢を根元から切り落とした。その肢がすぐ近くに落ち、地面を揺らした。

「お、おい、ここにいたらやばそうじゃないか……?」

 キリトが呟くが、ゲツガもリーファも動かない。邪神同士の戦闘から目が離せないのだ。象クラゲが戦闘を離脱しようと試みるが、巨人の邪神はそれをさせまいと飛び掛ってさらに攻撃を浴びせた。ひゅるるると甲高い声を上げた象クラゲはうずくまってしまい、動かなくなる。そして攻撃を浴びる。攻撃の回数を重ねるごとに象クラゲの声は弱くなっていく。そして、それを耐えかねたリーファが言った。

「……助けよう、ゲツガ君、キリト君」

「いいけど、無理はするなよ」

 そうゲツガは言う。びっくりとしたキリトは邪神を交互に見てから短く訊ねる。

「ど、どっちを」

「もちろん苛められてるほうよ」

 リーファは即答する。そしてキリトはリーファに当然至極の質問を口にした。

「ど、どうやって」

「えーと……」

 リーファが言葉を詰まらせる。ゲツガはあの形状をみて少しに気なることがあるのでキリト達に言った。

「あの形状……何か意味あるんじゃねえか?あれ、クラゲだろ?水の中に入んなきゃ駄目なんじゃねえの?」

 そう言うとキリトも何かに気付いたらしくユイに囁きかける。

「ユイ、近くに水面はあるか!?川でも湖でもいい!」

 ユイは目を閉じ、すぐに頷いた。

「あります、パパ。!北に二百メートル移動した場所に、氷結した湖が存在します!」

「よし……ゲツガ、後は任せるぞ。俺とリーファは先に行っとくから来いよ」

「ああ、任せろ」

 そう言ってゲツガは飛び出そうとするとリーファが袖を掴んでいた。

「どうした?」

「大丈夫……なの?」

「ああ、大丈夫だ。信じとけ」

 そう言ってゲツガは隠れていた場所から飛び出して邪神の近くによると弓を出して矢を番える。そして巨人の邪神に向けて放つ。巨人の目に当てると巨人は雄叫びを上げ、ゲツガを残りの五つの目で睨んでくる。

「ぐるぉおおおおおお!!!」

そして、象クラゲから降りるとゲツガに襲いかかろうとする。ゲツガは剣を避けると再び雄叫びを上げて攻撃をしてくる。ゲツガは一気に跳んで顔面を蹴ると翅の力も使って一気に二十メートルぐらい離れる。怒りが頂点に達したのか巨人はゲツガを追う。ゲツガも跳んで逃げると氷結した湖まで着く。

「成功したぜ!」

「ナイスだ!」

「で、あの巨人はどうするの!?」

 ゲツガは到着するとリーファたちに成功したことを伝える。そして後ろを見ると巨人がものすごい勢いでこっちに来ていた。そして氷結の湖のちょうど中心辺りまで来るとバキバキと氷の砕ける音が響き、地面が沈下、いや、足元の氷が割れて巨人をその下にある湖に落ち、大きな水柱を噴き上げさせた。

「よしっ!成功!」

「そ、そのまま沈んでぇぇぇ……」

 ゲツガは成功したことにガッツポーズをする。リーファは巨人が沈む巨人がもう上がってこないでと祈る。しかし、そこまで容易に解決はされず、巨人は頭一個をだしてこちらへと近づいてくる。リーファはゲツガとキリトの袖を掴んで言った。

「君達、速く逃げ……」

リーファがそう言い終える前に大きな水音が遮った。

「来たか……」

 ゲツガはそう呟いた。水音を立てた正体は先ほど巨人にやられていた象クラゲであった。象クラゲは水に入ると二十本もの肢を一斉に伸ばし巨人の身体に巻きつけた。巨人は水の中ではあまり自由に動けず引き剥がすことができない。

「そ、そうか……。あの邪神は元々、水棲タイプの邪神なのか!」

「そういうわけ。だから、俺らはこいつに自分の有利な状況を作るために手伝っただけだ」

 象クラゲの邪神は水を得た魚のごとく巨人の邪神を水の中に沈めて攻撃を繰り返す。そして今度は胴体が青白く発光すると、光は形を細くしてスパークになり、二十数本の肢から巨人を襲う。

「あっ……」

「よしっ!」

「勝ったな」

 三人はそう言うと同時に巨人のHPが急激に減る。そして巨人の断末魔なのだろうか、水面が赤く瞬き、幾つかの水柱が立つ。そして、ぼるぼるという雄叫びが聞こえなくなると同時に水面にすさまじい規模のポリゴン爆散エフェクトが巻き起こった。

「邪神もでかかったけどポリゴン片もでかいな……」

 そう呟いて水面を見るとぷかぷか浮かぶ象クラゲの胴体が勝利してうれしいのか雄叫びと同時に動いている。そしてその後、こちらに向かって近づいてくる。

「……で、これから、どうするんの」

 キリトが近づいてくる象クラゲを見ながら呟く。

「俺が知るはずないだろ。リーファ、どうする?逃げるの?戦うの?」

「考えてなかった……」

 そう言ってリーファは引きつった表情で言った。もう既にゲツガ達の目の前にいた。そして、象クラゲは鼻をゲツガ達の方に伸ばしてくる。ゲツガは戦闘できるように弓に矢を持っておく。矢を番えようとするとキリトの肩にいるユイが言った。

「大丈夫です、パパ、お兄ちゃん、リーファさん。この子、怒ってません」

「はっ?」

 声を出したと同時に象クラゲの鼻に掴まれた三人は勢い良く地面から持ち上げられる。

「ひええええっ」

 キリトは情けない声をあげる。鼻から離されると背中に落とされた。背中に着地すると落ちないようにバランスを取ろうとするが背中に毛が生えていて安定していた。そして象巨人はゲツガたちを乗せた後は何もなかったように歩き始めた。ゲツガ達は顔を見合わせる。そしてキリトが呟いた。

「何かわからないけど……クエストの開始点ってことか……?」

「わからん」

「うーん……クエストだと、始まった時点で視界の左上あたりにスタートログが流れるはずなのよね……」

 リーファは視界の端っこ辺りを手でひらひらとさせる。

「それが出ないから、明確な始点と終点のある依頼型クエストじゃなくて、イベント的なものだと思うんだけど……だとすると、ちょっと厄介だな……」

「そりゃ何で?」

 キリトが聞くとリーファが答える。

「クエストなら、終わった時点で必ず何らかの報酬があるわけよ。でもイベントってのはプレイヤー参加型のドラマみたいなものだから、絶対ハッピーエンドとは限らないの」

「そういうってことは……リーファはなんか嫌なクエストでもあったのか?」

「んー、まあね。前にホラー系のイベントで行動洗選択間違って、魔女の釜に煮られて死んだんだもん」

「それは、なんとまあ……」

「すごいイベントだな……」

 ゲツガとキリトは顔を引きつらせた。

「まあ、こうなったらもう乗りかかった船、じゃなくてクラゲだな。どうせこの高さから飛び降りたら大ダメージ……ゲツガは食らわないか……」

「おいキリト、それはどういう意味だ?」

「そういう意味だよ」

「まあ、これくらいなら食らわないかもしれないな」

 そう言ったあと、リーファの方を見て頭を下げる。

「な、何。どうしたのゲツガ君?」

「さっきはゴメン、リーファ。リーファの気持ちを軽んじるようなこと言って。俺、この世界のことを軽く見すぎてたかもしれないな。所詮、ゲームだからってこの世界と現実だろうと変わらないこと、俺らは知ってたのに」

「ううん……あたしこそ、ごめんね。あの……あのね、ものすごく頑張ってあたしとシルフ族を助けてくれた君たちがALOを所詮ゲームなんて思ったことはあたしが一番わかってるから……」

 そう言われてゲツガは顔を上げる。リーファは少し考え事をしてるような表情をしていた。

「ゲツガ君は……」

「何?」

「ううん、やっぱりなんでもない。じゃあ、これで仲直りだね。あたしなら、何時になっても学校は自由登校だもん」

 そう言ってリーファは手を出してきたので握り返した。

「そっか、じゃあこれからもよろしく」

 離して景色を見ているとあることに気付きリーファに視線を戻す。リーファも何か言いたそうな顔をしていた。キリトは二人が少しおかしいと思ったのか聞いてきた。

「どうしたんだ、二人とも?」

 キリトがそういったのでリーファが答える。

「この邪神ね、私達が向かってた方向とはまったく間逆に進んでいるの。ホラ見て」

 そう言ってリーファは中心の天蓋に指を指した。そして、その先に指しているウネウネをみてキリトが質問する。

「……なあ、何なんだ、あのうねうねしたやつ」

「ああ、あれ。あたしもスクリーンショットでしか見たことないけどね……。あれは世界樹の根っこなの」

「へぇー、そうなん……って、え?」

キリトが声を上げるとリーファは解説する。

「アルヴヘイムの地面を貫いた根っこが、ヨツンヘイムの天井から垂れ下がってるわけ。つまりこの邪神は、ヨツンヘイムの外周じゃなくて真ん中に向かってるのよ」

「ふうむ……。世界樹は俺たちの最終目的地だけど……ここからあの根っこ登って地上に出るルートとかないのか?」

「馬鹿か、お前は。空も飛べないのにどうやって、あの根っこまで行くんだよ」

「そりゃあ、お前がいつもどうり壁を跳ねて」

「無理だ。こんなだだっ広い場所ではそこまで使えん。リーファはなんか知ってる?」

「あたしは聞いたことないよ。第一、私も初めて来たんだから知るはずないでしょ」

 そう言うとため息をついた。そしてキリトは切り替えるようににかっと笑って言った。

「ま、今はこのゾウムシだかダイオウグソクムシだかに任せるしかないさ。竜宮城に歓迎されるのか、それとも今日の朝飯にされるかわからないけど」

「ちょ、ちょっと待ってよ。なに、そのダイオウ何とかって。それを言うならゾウかクラゲでしょ」

「どっちでもいいだろ!そんなんだったら名前つけろよ!」

「ああ。それがいいな」

「いいね。じゃあつけよう。可愛いやつ」

 ゲツガがそう言うとキリトとリーファはそう言って名前を考えた。そしてしばらく沈黙した状態で一番最初に言ったのはキリトだった。

「じゃあ、トンキー」

 ゲツガは苦笑してキリトに言った。

「それってちょっと止めとかないか?」

「……あたしもそう思う。あんまり縁起のいい名前じゃないと思うし」

「そ、そうかもな。ぱっと頭に浮かんだんだけど……」

「まあ、俺が言うことじゃないか」

「たしかにね。じゃあ、それにしよう!」

 そう言ってリーファはゾウクラゲの邪神の背中を叩いて言った。

「おーい邪神君、君は今からトンキーだからねー」

 しかし、返事が帰ってこない。それをOKと取ったのかユイもトンキーに声を掛けた。

「トンキーさん、はじめまして!よろしくおねがいします!」

 すると偶然だろうか、頭の横についている耳ともエラとも取れるものがわさわさと動いた。 
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