真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第5話
悠斗side
俺は今、七浜の高級住宅地の中を駆け抜けている。先頭は我が主九鬼揚羽様だ。小十郎も遅れまいと真剣に走っている。
「ふははははは!!小十郎!悠斗!我に遅れるでないぞ!」
「はい!揚羽様!!この、小十郎!風のごとく何処までもお供します!」
「御意」
「うむ!ならば、更に速度を上げるぞ!付いて参れ!」
揚羽様が走る速度を上げる。揚羽様の背中が段々と離れて行く。
「うおおおお!揚羽様ああああああ!!」
小十郎が叫びながら揚羽様を追いかける。俺は内心、やれやれと言った感じで二人を追いかける。 1分程で揚羽様に追い付き、後ろを走る。
すると、前方に大きな門構えをした西洋建築の家が見えてきた。門の側で、使用人の執事服を着た男性?が箒で道を掃いている。
(う~ん。顔は女性の様に見えるが男だな。紛らわしいと言うべきか、女顔なら仕方ないか。あまり、鍛えていないようだしな)
ざっと800メートル先にいる人を観察する。
どんどんそちらに向かって走っていく。そして、門の正面で揚羽様が止まる。小十郎は慌ててブレーキをかける。激突は免れた様だ。俺は、上空に一度高く跳躍して勢いを殺してから、揚羽様の後ろに着地する。
「ふははははは!九鬼揚羽推参!おはよう!今日も良き日ぞ!」
「あ!おはようございます!揚羽様。夢お嬢様からお話は伺っておりますから、中にどうぞ」
「うむ!小十郎!悠斗!参るぞ!」
「「は!」」
門の付近を掃除していた、使用人が門を開けて中に案内する。揚羽様に続いて中に入ると、良く手入れされた前庭が広がっていた。区画事に分けれれた花壇には、色とりどりの花華が咲き乱れていた。
(へー。手入れがきちんとしてるな。良い、庭師の方がいるんだろうな)
そんな事を考えながら、歩みを進めると大きな屋敷の玄関に着いた。使用人が扉を開ける。
「中にどうぞ。リビングにご案内させていただきます」
「うむ。わざわざ済まぬ」
「失礼します!」
「失礼します」
靴を脱いで、使用人さんに案内されて家の中を歩く。リビングに入ると、中にはロングヘアーの目がキッとした女性、金髪ツインテールの女性、赤髪のポニーテールのメイドさん、茶髪のロングヘアーのメイドさん、夢お嬢様、南斗星さん、髭がダンディーな執事、若い青年執事など、この家の方々が集まっていた。
「森羅殿、美有殿、夢、おはようございます!今日はお世話になります!」
「うむ。おはよう。朝から元気で何よりだ」
「ええ。おはよう。ゆっくりしていきさない。所で、貴女の後ろにいる男性は誰かしら?初めて見るのだけど?」
「揚羽ちゃんおはよう!」
リビングでお茶を飲んでる方々と揚羽様が挨拶を交わす。揚羽様が近くにあった席に座る。
「そう言えば、夢以外の方は初めてお会いするのであったな。紹介しよう!こやつは、不動悠斗!我の伴侶だ!」
「「「「な、なんだって!!」」」」
「ほぉ~。まさか、揚羽に婚約者がいたなんてな。初耳だったぞ」
「あら、残念。出来れば彼に半ズボンを履いて貰おうかと思ったのだけれど」
「あ、そう言えば、昨日もそう言ってたね」
「そうだね、夢。お肉をくれるから好い人だよ」
ダンディーな執事さん以外の方は驚いている。
若干変な単語が聞こえたのは間違いだと信じたい。俺は揚羽様の側に立つ。
「先程揚羽様より紹介していただいた、不動悠斗と申します。お見知りおきください。あと、あくまでも伴侶の件は候補の一人にしか過ぎません故」
「む?悠斗よ。恥ずかしがる事はないぞ!堂々と我の伴侶と宣言して構わぬぞ?」
「揚羽様。まだ、私は九鬼帝様から、認められておられません故にそう言った事を申すわけには・・」
いや、揚羽様は好きか嫌いか聞かれたら好きですよ?ただ、あんまりにも身分違いな気がするんだがな。しかも、英雄様や紋白様は揚羽様の伴侶と俺を認定しているようだしな。
(てか、俺には恋人がいるんだけどな。3人程。まあ、あっちはあっちで頑張ってるだろうしな)
そんな事を考えていると、上座の席に座っている黒髪ロングヘアーの女性がカップをテーブルに置いた。
「ふむ。まあ、いろいろあるのだろう。九鬼家は我が久遠寺家と違い、世界的に影響力の有る家だからな。そう言えば、自己紹介がまだだったな。私は久遠寺森羅。七浜フィルハーモニー交響楽団で指揮者をしている。久遠寺家の家長でもある。よろしく悠斗」
「よろしくお願いいたします。森羅様」
俺は久遠寺森羅様に、頭を下げる。ただ挨拶を交わしているだけなのに、彼女のカリスマ性が俺に伝わってくる。
「そうね私も自己紹介しなくてわね。私は久遠寺未有。久遠寺家の次女よ。何か悩み事があったら相談なさい。必ず有益なアドバイスをしてあげるから。報酬は、貴方の半ズボン姿を写真に納めるだけで結構よ。こうみえても、大学を飛び級で卒業しているから」
「はい。もし、何かあった時は相談させていただきます!よろしくお願いいたします」
久遠寺未有様に、頭を下げる。身長こそ低いが、一番まともな感じのする方だ。半ズボン以外は。
「えーと、夢は昨日したからいいよね?」
「はい。夢お嬢様。よろしくお願いいたします」
揚羽様のご友人であられる久遠寺夢様に、頭を下げる。揚羽様のご友人故に、きっと凄い方なのだろう。
「では、次に使用人を紹介しよう。大佐から初めてくれ」
「分かりました森羅様。私の名は田尻耕。普段は夢お嬢様からつけていただいた、スペシャルなニックネームである大佐と呼ばれている。よろしくな不動」
「よろしくお願いします田尻殿」
田尻殿に頭を下げる。一見すると普通の執事に見えるが、立っている姿に隙が無く、かなりの実力者だと分かる。出来れば1度、手合わせをしてもらいたい方だ。
「では、次はベニス。お前が挨拶なさい」
「はい。私は朱子(ベニス)。大佐の次に久遠寺家で長く働いているメイドよ。料理を担当しているわ。よろしくね。皆はベニて呼んでるから、そう呼んでちょうだい」
「よろしくお願いします。ベニ。俺は悠斗と呼んでください」
朱子(ベニス)と挨拶をする。真っ赤なポニーテールが印象的な女性だ。何となくだが、名前から予想すると海外出身の人なのかも知れない。
「ああ。ちなみに言っておくが、ベニはイタリア出身だ。日本人じゃないからな」
「姉さん。いくらなんでも、名前のイントネーションから分かる気がするわよ」
森羅様が俺が疑問に思った事を説明してくれた。美有様は呆れながら紅茶を飲んでる。
更に自己紹介は続く。
「じゃあ、次は美鳩。あんたよ」
「クルッポー。私は上杉
美鳩。ミューちゃんの専属メイドをしております。錬ちゃんの姉です。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
何故か、鳩の鳴き声の真似をする美鳩さん。名前に鳩の文字が入っているから、意識しているのだろうか?
「じゃあ、次は宇宙一可愛い私の弟の錬ちゃんでえ~す」
「鳩姉。ありがとう。俺は上杉錬。美鳩姉の弟だ!今は森羅様の専属執事をしている!錬て呼んでくれ!」
「よろしくな錬。俺は悠斗と呼んでくれ。お前とは気が合いそうな気がする」
互いに握手を交わす。錬は田尻殿程ではないが、熱い魂を感じた。彼は鍛えれば、一角の武人になりそうだ。
握手を止めて1歩下がる錬。
彼の隣には、久遠寺家の中まで案内してくれた執事が立っていた。
「僕は清原千春と言います。夢お嬢様専属執事ですが、基本的にはお掃除をメインにしています。よろしくお願いします悠斗さん」
「ああ。よろしくお願いします。千春君」
彼とも握手を交わす。まるで女性のような綺麗な手だった。本当に男なんだよな?
「夢と南斗星に関しては、昨日の段階で挨拶が済んでいるのだろう?省いて構わないな?」
「はい。大丈夫です。わざわざ申し訳ありません森羅様」
「なに。初めて着た相手に、礼を尽くすのは当たり前だ。気にする必要はない。それより、何か聞きたい事はあるか?」
森羅様が訪ねて来る。俺は聞きたい事は無いが、手合わせをしてみたい。揚羽様をチラリと見る。
「ふむ。森羅殿。悠斗はどうやら田尻殿との手合わせを望んでいるのだが?」
「「「「「「「「な、なんだって!!(ですって!)」」」」」」」」
「ほぅ。まさか、いきなり大佐との手合わせを望むなんてな。言っておくが大佐はかなり強いぞ?」
「構いません。武人として、闘いたいと思いましたので」
「ふむ。不動よ。貴様はかなりの実力者の様だな。よかろう。私が直々に相手をしてやろう。森羅様。よろしいですか?」
「ああ。構わない。しっかり揉んで来てやってくれ」
「分かりました。ならば、不動!私に付いて来い。場所を変えるぞ。ついでに錬に千春も付いて来い。スペシャルな闘いを見せてやる」
「はい!俺は大佐を越えるために、確りと見させてもらうぜ!」
「あ!救急箱持ってかなきゃ!」
「揚羽様。行って参ります」
「うむ。しっかりと戦うのだぞ!小十郎!貴様も見ておけ!田尻殿と悠斗の手合わせだ。なかなか見れるものではないからな!」
「はい!揚羽様!この、小十郎。しかとこの眼に焼き付けて参ります!」
田尻殿がリビングを出て行く。俺、小十郎、錬、千春は田尻殿の後に続いてリビングから外に移動するのだった。
悠斗sideout
揚羽side
悠斗以下男性陣は外に出ていった。現在リビングに残っているのは、我を含めて皆女性だけだ。ベニスが我に淹れてくれた紅茶を飲む。ダージリンの甘い香りが鼻腔をくすぐる。ストレートティーで飲んでいるため、やや苦味があるがこれは高級なダージリンの葉を使っている証しでもある。
「珍しいわね。姉さんが観戦しに行かないなんて」
「なに。大佐が勝つのが目に見えているからな。なら、こっちでお茶を楽しむさ」
「それもそうね。けど、悠斗はなかなかの逸材ね。顔も良いし、半ズボンを履いたら完璧ね」
「はぁ。またか。ミューたんは相変わらず半ズボンだな。たまには、お姉ちゃん大好きと言ったらどうだ?」
「結構よ。少なくとも、姉さん大好きとは言わないわ。それに、半ズボンは最高の品よ!何故、それが分からないのかしら?」
(いや、少なくとも普通の人には分からぬと思うが。我は別に半ズボンに興味は無いゆえ)
リビングでは久遠寺姉妹の、仲睦まじい団欒な風景が広がっている。外からの声が時々聞こえるが、少なくとも我以外には聞こえていないだろう。
「そう言えば、揚羽ちゃんは相談が有るって昨日言ってたけど、此処で良かったのかな?なんなら、夢の部屋に行く?」
「うむ。いや、此処で良い。幸い、今は女性陣しか居らんからな」
「ほぅ。相談か。よし、楽しそうだから話してみるといい」
「姉さん、からかうのは止しなさい!相談が有るって事は、本人には極めて重要な悩み事だったりするのだから!」
美有殿が森羅殿を叱る。 叱られた森羅殿は不敵に笑う。なにやら、不穏な空気が流れてきた。
「ふん。まあ、良いさ。それで揚羽はどんな相談をしたいんだ?」
「じ、実は、悠斗の事なのだ」
「あら?大佐に手合わせを望んだ侍従の事?少なくとも見た所、何等問題が有るようにわ見えなかったけれど?」
「いや、悠斗に問題が有るのでは無いのです。そ、その、我は恋愛事に疎く悠斗にどうやったら、我が本気で好きで有る事を伝えられるかと」
自身の顔が熱くなる。恐らく、我の頬は紅く染まっているだろう。
(今も、悠斗を思うと身体が熱くなる!悠斗と我の出会いは運命に違いない!)
我が何時も思い出すのは、悠斗と初めて手合わせをした時の事だ。我を完膚なきまで敗北させ、気を失った時に介抱してくれた時の事だ。我が悠斗の二の腕に強く抱かれていたのだ。あの時触れた悠斗の身体は逞しかった。あの僅かな時間の中でてにいれた温もりは、今でも鮮明に思い出す事が出来る。
(あの時、あの瞬間から我は悠斗に恋をしたのだ。あの逞しく優しい悠斗の側にいたいと。側にいて欲しいと)
「あー。うん。いきなり、難しい問題が来たな」
「そうね。アダルティな私でも、難しいわね」
「あわわわ!?揚羽ちゃんが乙女の表情だよ!?」
「あはは?僕にはちょっとアドバイス出来ないな」
「あ、私も無理ね。恋愛なんかしたことないから」
「う~ん。私のやり方だと、錬ちゃんにしか出来ませんからね」
リビングに残った女性陣は皆、微妙な空気に包まれていた。
美有殿が口を開いた。
「そうね。先ずは、情報が必要ね。悠斗の好み等は分かるかしら?」
「確かにな。相手を知らなければ、どうしようもないからな」
「悠斗の好みですか?戦う事は好きなようだが」
少なくとも、手合わせ等は楽しんでいるのは分かる。トレーニング等は、率先して行っているのは聞いた事があるな。
「う~ん。それだけだと、ただのバトルマニアに聞こえちゃうよ揚羽ちゃん」
「そうね。少なくとも、好みの女性のタイプが分かれば、アドバイスしやすいのだけど」
我は考えてみる。確か、悠斗の幼なじみがいたはずだ。
(確か、椰子なごみと申した筈だ!写真を持って来ているではないか!)
我はポケットから1枚の写真を取り出して、テーブルの上に置いた。美有殿が、写真を手に取った。
「あら?この写真は何かしら?美人な女性が写ってるけど?」
「どれどれ?ほぅ。なかなか可愛い子じゃないか」
「シンお姉ちゃん、夢にも見せて」
姉妹仲良く写真を見る。微笑ましい光景である。
「美有殿。その写真の人物は悠斗の幼なじみの写真です。何か、参考になればと思って持ってきたのです」
「成る程。ちなみに、悠斗は彼女の事が好きなの?」
「いえ。本人は大事な存在だと、言っておりました。しかし、我からすると幼なじみの方は悠斗が好きだと思ったので」
「成る程ね。女の勘て奴ね。彼女と貴女を比べるなら、髪の毛の長さが際立ってるわね」
言われて見れば、悠斗は髪が長い女性と写真に写っている姿が多い。
(もしや!悠斗は髪が長い女性が好みのなのか!?ならば、我も伸ばしてみるか?)
家ではよく、紋白の頭を撫でていたりする事が多かった。見慣れてしまったため、当たり前だと思っていたが、そのような事実が隠されていたとは思わなかった。
「後はそうね、胸の大きさかしらね」
「ミューの言う通りだな。私も大きいと思っているが、それ以上だな」
我の胸を触ってみる。確かに椰子よりも小さいのが分かる。
(修行の邪魔にしかならぬモノなのだが、悠斗は大きい方が好きなのだろうか?)
もし、悠斗が大きい方が好きだった場合は、我の胸では見向きもされないおそれがある。
「あう~。それだと、悠斗君がただのオッパイ星人に聞こえちゃうよ~」
「う~ん。男の子だから普通なんじゃないのかな?」
「まあ、南斗星の言う通りね。実は私達の身体を狙ってたりして」
朱子(ベニス)殿が身体を両手で抱き締める。
だが、今の発言を聞き流せる程我は大人ではなかった。悠斗は邪な考えで生きている様な輩では無いのだから。我は体から闘気を放つ。
「ベニス殿。我の伴侶を侮辱いたすつもりか?それは、我に対する挑戦と受け止めるが?」
「え!?い、いえ!そんなつもりで、言ったんじゃ無いんですよ!?」
「済まなかった揚羽。私の侍従が粗相をしてしまった。後できつく言っておくから許してやってくれ」
「森羅殿がそう言われるのであれば、今回は手打ちにします」
「そう言ってくれてありがとう。誰だって、好きな人を馬鹿にされれば怒りたくなるわ。危うく、ベニを家から失う所だったわ」
美有殿がそっと我の気持ちを代弁してくれる。我は再び紅茶を口にする。 心がホッとする。頭から血が降りてくる。
「申し訳ありませんでした。揚羽様」
「もうよい。森羅殿や美有殿が確りと言いつけると言われたのだ、我はそれを何時までも引きずるつもりは無い故にな」
ベニスが我に頭を下げる。森羅殿や美有殿、田尻殿が確りと教育されるはずだから問題はない。
それより、本題に話を戻すべきだ。
「話がそれてしまったわね。本題に戻すけど、悠斗に好きだと告げるにはどう言った手段を取るかよね。揚羽には、考えは無いのかしら?」
「我としては、悠斗の唇を奪えば良いと思うのですが」
「う~ん。それはちょっとリスクが大きいですね。相手に好意が無い場合には、拒絶されてしまうおそれがありますし。錬ちゃんなら、問題無いのですがね」
美鳩殿の意見は最もなのだ。だが、我に思い付く手段は全て実力行使のものしか浮かばないのだ。
「待てよ。私に妙案が浮かんできた」
「あら?姉さんに何か案があるの?なら、話してみてよ」
「それはな」
森羅殿が我等に浮かんだ妙案を提示してきた。我には思い付く事の無い案だった。
「良いわね。姉さんの案が一番良いわ。揚羽に不服が無ければだけど」
「元より、我は相談に来たのですから。否定する理由がありませぬ故。是非ともお願いしたい」
「じゃあ、後は細かい打ち合わせね」
それから我は、美有殿に細かなアドバイスや指摘を受けるのだった。
揚羽sideout
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