ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~
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第二十話
前書き
三章突入です。
グラン歴752年、ミュアハ12歳~なりたて13歳ってあたりになると思われます。
ターラの北トラキア連合の領事館に着いた俺は職員達に怪しまれながらも、いくつかの身分を明かす品を提示し、そのあとずいぶん待たされた。
領事との用件があった為に滞在していたアルスターのコノモール伯爵を偶然見つけてことなきを得たが、そうで無ければどうなっていたのやら……
身分を明かす品を返却してもらい、レイミアの書いてくれた書類を伯爵に見てもらった。
「それにしても、見違えるほど逞しくなられましたな。ですが面影はある。」
「アルスターの皆さまをはじめ、北トラキア連合の皆さんがトラキア王国に食糧を送ってくださいましたからね。贅沢を申さなければ食べ物がなんとかなったおかげでしょう。ありがとうございます」
「いやいや、我らが不甲斐なかったばかりに殿下には御苦労おかけしました。しかし、ご案じ召さるな、今度はこちらから奴らに制裁を加えましょう。殿下の身柄が戻った上は……」
「お、お待ちください、伯爵。制裁と仰るからには軍をトラキア王国に進めると?」
「左様でございます。当初の目的ではその軍容を以って殿下の身柄を取り戻し、身代金とも言うべき毎年の食糧援助を打ち切るためにと、殿下のお父上が働きかけております。」
「伯爵は…アルスターの方々は軍を動かすことに賛成なのでしょうか?」
「ふぅむ。殿下はトラキアの者達と友誼でも結ばれましたかな? このような文書を持たせてくれたご領主が居るあたり、殿下は特別な関係を築かれたと思われる。ゆえに、殿下はご反対と?」
「はい、仰る通りです。トラキアに住まう多くの方々は本当にわたしに良くしてくれたのです。それは……」
俺は長時間に渡る熱弁をふるい、理と情の両面を以ってコノモール伯爵に訴えた。
「…なるほど。ですがアルスター全体の意思は私の一存では動かしようがありません。ひいては四国会議に於いては尚更であります」
「…伯爵のお立場もわきまえず、身勝手な申し出を行ったことお詫び申し上げます」
「いや、殿下、早合点なさいますな。わたしは次回の会議に殿下の出席とご発言の機会が得られるようにと計らうつもりです。 …個人としての立場で申し上げますぞ。私とて徒に兵を以って他国を害うなど望むところではありません。先程の殿下のご主張が会議で諮られること、願っております」
その後俺はコノモール伯爵の滞在する宿舎に招かれ、久しぶりにグランベル文化圏の生活を味わった。
昨日だけでは取り切れなかった旅の汚れと疲れを取ることが出来たが、レイミアの居ない寝台は冷たく、そして広過ぎた…。
ターラ滞在中に既に連絡を行ってあったこともあり、ターラからアルスターへ向かう途中で、レンスターからの迎えが寄越されて合流することができた。
迎えの一団は兄上が率いており、4年か5年ぶりになるだろう兄弟の対面を果たすことができた。
俺とて少しは背が伸びたしコノモール伯爵には逞しくなったと言われたが、兄上の凛々しく堂々としたその姿には、"かないっこないなぁ"という素直な諦めの境地です。
「よく無事で戻ってきてくれた。父上もいたくお喜びだったぞ。 それに大きくなったなぁ。 もう頭を撫でたりは出来ないな」
ガシッと俺を抱きとめて背中を叩いてくれた、そんな嬉しそうな兄上はその後手招きして一人の人物を呼んだ。
なるほど、あの人か。
「わたしはエスリン、あなたのお姉さんになったのよ。よろしくね」
淫乱ぴんk…もといエスリンはにこっと春の日差しのような温かな微笑と共に両手で俺の手を握って挨拶してくれた。
かわいいのでどきどきしちゃうな、俺の顔は赤くなってはないだろうか。
「…兄上、ご結婚おめでとうございます! そしてエスリン姉上、わたくしはミュアハと申します。
兄上をどうか今後ともお支えくださいませ。これから、どうかよろしくお願いします」
「うん、よろしくね。キュアンの言う通りとってもいい子みたいで嬉しいな」
「いえいえ、異郷にて暮らしていたが為、姉上のこと今日まで存じ上げなかったこと、ご成婚の祝いの品の一つも用意出来てなかったこと、お許しください」
「ふふふ。 ミュアハくんが戻って来てくれたのが一番のお祝いなのよ。キュアンもお義父さまもそれはもう喜んで」
「これからレンスターに戻るまでの道中、みやげ話をたくさん聞かせて欲しいな」
穏やかな微笑を浮かべた兄上はそう言い、俺と同道していたコノモール伯爵の一団と挨拶をした。
俺も伯爵に礼を述べ、彼らの一団と別れてレンスターへの帰路についた。
……レンスターに帰りついた。
3年かそこらしか離れていないというのに懐かしくて胸が熱くなった。
俺の為なのだろうか?王宮までの街路に人々の列があり、皆嬉しそうな表情を浮かべていた。
人々に手を振ると人々の声が聞こえてきた。
キュアンさまーご成婚おめでとうございますー、おめでとうございますー、ますー、ますー……
あw
そうなのねw
なんて思っていたら
ミュアハ第二王子のご帰還、おめでとうございますー!というのも、まばらに聞こえてきた。
合同のパレードみたいになってるんだなぁ。
こういう時は愛想よく手を振っておこう、でもこういうのは初めてだなぁ。
生きて帰ってこれたのもレンナートさんのおかげだな……
ゆっくりとした行進が終わり王宮へとたどり着くと、なつかしい見知った顔がいくつも見えた。
兄上とエスリンが父上に挨拶し終わるのを待ち、俺も父上に帰還の挨拶を行おう
「長らく王都を留守にし、申し訳ありませんでした。 多くの方のお助けによりミュアハただいま戻ること叶いました」
「よくぞ戻った。旅の埃を払い、まずはゆっくり体を労うがよい。」
俺を抱きとめてくれた父上の頭にはいくつか白いものが目立ち、目じりの皺が増えていた。
その後、ベウレク卿を探し、レンナートさんのことを詫びた。
「あやつも殿下のお役に立てたなら本望でしょう、お気になさいますな」
「しかし……わたしがもっとしっかりしていれば…」
「殿下、後ろをご覧ください。化け物がおりますぞ」
……振り向くとそこには松葉杖を突き、左目に眼帯をしたレンナートさんの姿があった。
「おかえりなさい!殿下!」にいっとレンナートさんは笑みを見せた。
号泣しはじめた俺を見つけたセルフィナさんがやってきて俺の手を両手でぎゅっとしてくれた。
俺は、帰ってきたんだ。
後書き
キュアン19歳、エスリン17歳といったところでしょうか
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