真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第0話
前書き
久し振りの復活作品です。かなり久し振りなので、カンが鈍っているかも知れませんが、暇潰しになれば幸いです。
悠斗side
俺の名前は不動悠斗。元の世界では神様に殺されてしまい、お詫びに転生?させてもらったのだが、何故か転生?先がマブラヴオルタネイティヴの世界だった。俺自身が生き残る為にBETA相手に一生懸命戦って勝利して、世界を平和にした。あの世界を救った後、俺はヴァルハラ(神々が集う場所)に召還され、死ななくなり、毎日訓練する日々をおくっている今日はヴァルハラに来てから2000年が経った。俺はとある師匠と共に修行を行っていたんだが、師匠と対峙した瞬間いきなり風景が変わったんだ。超スピードとかスター・プ○○ナとそんなレベルのものじゃなかったね。もっと恐ろしいレベルの感じたよ!そして今目の前に、女性に怒られて土下座している神様がいるんだが、なんとも哀愁漂う姿なんだよな。女性が俺の方を見た。すると女性は俺に話かけてきた。
「あら?お客様ですか?私、ゼウス(神様)の妻のヘラと申します。今、旦那のゼウスの不倫についてお説教をしている最中ですので、暫くお待ちいただけませんか?」
「ま、待ってくれヘラ!ワシは悠斗に用事が有るのじゃ!悠斗助けてくれんかの~」
「あ、スイマセンが土下座させたままで構わないので、用件だけ言ってもらえませんか?」
「分かりましたわ。あなた、早く用件を言って差し上げなさい!」
妻のヘラさんに背中を叩かれる神様。俺に助けを求めるが俺は助けない事にした。
(そもそも不倫をした神様の自業自得だろ?巻き込まれたら洒落にならないしな)
「クッ!悠斗の薄情者め!不倫は文化だ!と、言ってる人もいるだろうが!」
(神様。貴方は何処の裸足で靴を履く芸能人ですか?奥さんのヘラさんの顔か笑ってますけど、明らかに目が笑ってないんですけど!?かなり怒ってるんじゃないのか?)
俺は内心でツコッミを入れていると、ヘラさんが神様の肩を掴んだ。
「ア・ナ・タ?懲りて無いようですね。ちょっと久しぶりに血を見て見ますか?」
「ヘ、ヘラ!?ま、待ってくれ!!ワシが悪かった!!勘弁してください!」
再び土下座する神様。貴方本当に最高神ですか? そんな疑問が頭に過った。
「あの~話が進まないんですが、いい加減用件を話してもらえませんか?」
「おお!忘れておった!ヘラ。ワシ、立ってもいいですか?」
「ふう。仕方ありませんね。悠斗君に迷惑をかけるのは良くないですからね」
奥さんの許可をもらった神様が立ち上がり、威厳のありそうなポーズをとる。まあ、今さら威厳もクソも無いような気がするのだがな。
「悠斗よ。お主に頼みたい事があるのじゃ「いいよ」はや!まだ内容言ってないからの!?」
「別に神様がわざわざ呼び寄せてまで頼む事なんだろ?なら、断る必要なんてないだろう?」
寧ろ、此処で断る方が後々面倒な事になりそうだしな。
「流石ワシの見込んだ男じゃ!!それで行ってもらう世界なんじゃが、武人達がおる世界なのじゃ」
「武人?三国志とか、戦国時代とかか?」
三国志なら呂布とか関羽だろうし、戦国時代なら武田信玄とか上杉謙信とかだろうか?まあ、他にも有名な武人は沢山いるしな。メジャーな所だけでもかなりの数になるしな。
「いや、違うのじゃ。訳あって言えぬが、かなりの武人がおるのじゃよ」
「まあ、構わないが。なんでそんな世界にわざわざ行かなくてはならないんだ?」
「なんじゃ、その~。説明出来んが行ってもらわんと困るのじゃよ」
神様が珍しく言いずらそうにする。長く伸びた髭を弄りながら天を見る。余程面倒な世界なんだろう。
「分かった。何も聞きませんよ。だけど、向こうの世界に行ったらアフターケアをしてくれるんですか?」
「安心してくれ。戸籍等必要なのはワシが作っておくから安心してくれ。能力も制限はかからんようにしておくから弱体化はせんようにしておくの」
どうやら弱体化はしないで済むらしい。戸籍なんかもあれば安心できるしな。
「私から1つ能力を与えましょう。悠斗君。悪いけどしゃがんでくれないかしら?」
「はあ?分かりました」
神様の奥さんのヘラさんが俺の前に立つ。俺は方膝をついてヘラさんより下になるようにする。するとヘラさんが俺の額に手を翳した。光が頭を包みこみ、少しして消えた。
「これは『絶対強者』と言う能力です。この能力は悠斗君の能力を格段に上昇させるものです。まあ、訓練すればするほど強くなるに更に上乗せがかかると思ってください。他にもいろいろ効果があるんですが、時間が迫っている様ですから」
「は、はぁ?ありがとうございますヘラさん」
ヘラさんから新たな能力を貰った。ヘラさん神様の隣に戻る。神様が一歩前に出てきた。
「すまぬな悠斗。ワシがこんな事を本来頼める義理はないのじゃが、違う世界を頼んじゃぞ。それとじゃ、悠斗。お主が今まで使ってきた流派の技の使用を禁止する」
「何故だ?」
「悠斗よ。既にお主はあの流派を使わなくても充分強い。故に次に行く世界では、自身で編み出した我流技を使うのじゃ。良いな?」
「まあ、そう言われたら仕方ないか。最も、我流技を実戦で試すには丁度良いか」
俺は強く頷く。神様が微笑んだ。
「じゃあ、悠斗。次の世界を頼んだぞ」
「分かった!見ててくれ!必ず他の世界も護ってみせるからな!」
「じゃあ、気を付けてな」
「おう!神様も浮気はすんなよ!」
そう言うと、体が浮遊感に包まれたかと思ったら、俺は足元に空いた穴に落ちて行くのだった。神様が落ちる瞬間ニヤリと笑っていやがった!
(いつか殴る!)
そう誓いを立てて意識を失うのだった。
悠斗sideout
神様side
悠斗を違い世界に送ってからワシは妻のヘラと話をしていた。無論内容は悠斗の事じゃ。
「そう言えばヘラよ。悠斗に授けた能力の、絶対強者の付随効果はなんなのじゃ?」
「全ての能力の向上ですよ。悠斗君が知らない能力も強化されてますわね。他には動物等から好かれる様になるなど様々な恩恵がありますわよ」
「あれ?それじゃと、恋愛原始核まで強化されてしまうのじゃが・・・」
「それに関しては大丈夫ですわよ。もともとレベルがMAXですから、上がりようがないですからね。鈍感スキルは無くなりましたけどね」
そう言いながら微笑むヘラ。ワシは悠斗が鈍感じゃ無くなる事に驚いた。
「凄いの~。流石女神じゃな!おっと!ワシもボーとしとれんのじゃ!悠斗のアフターケアをしなければならんの」
「早くしてあげなさい。悠斗君が可哀想ですからね。それが終わったらお説教の続きと行きましょうね。ア・ナ・タ?」
「は、はい!分かりました!」
ワシは妻の怒りのオーラに震えながら悠斗のアフターケアをするのだった。
神様sideout
悠斗side
「知らない天井だ」
俺は神様に違う世界に送られる途中で意識を失った。自分の状況を確認してみると、広い畳の部屋に敷かれた布団で眠っていた様だ。ドタドタと足音が聞こえてくる。どうやら此方に向かって歩いてきている様だ。
(まずは家人に会って礼を言わなくちゃな。それに此処が何処なのか聞きたいしな)
コンコンコンと3回障子戸がノックされる。
「どうぞ」
「失礼します。おお!意識が戻りましたか!」
障子戸を開けて中に入ってきたのは、執事服を着たツンツン頭のバンダナを巻いた青年だった。
(なんだか、聞いたことのある声だな。何処かで聞いた事がある気がするんだが・・・思いだせん)
「お加減はよろしいですか?」
「あ、ああ。何方か存じ上げないが、介抱していただきありがとうごさいます」
中に入ってきた青年に頭を下げる。彼は俺の寝ている布団の前に正座で座った。
「いや。私が助けた訳ではないのです。私の主の揚羽様が、敷地の近くで倒れていた貴方を見つけて、家に運んだのです」
「そうでしたか。重ね重ねありがとうございます。自己紹介がまだでしたね。俺は不動悠斗と言います」
「どうも。俺は武田小十郎。九鬼揚羽様に仕える執事だ。小十郎と呼んでくれ!少し待っていてくれないか?揚羽様に起きた事を伝えてくる」
「分かった。俺も悠斗と呼んでくれ」
小十郎は部屋から出ていった。俺は布団から出て、体の調子を確かめる。
(服装は黒の無地のTシャツに青いジーンズか。ドッグタグは着けてるし、腕時計も着いてるか)
自分の身なりを確認する。可笑しな格好はしていない様だ。布団を畳んで体を軽く動かす。
拳を2発放つと、ヒュンヒュンと風切り音がした。
(ケガとかは無いようだな。力も弱くなってないな)
神様が言っていた通り弱体化はしていなかった。それどころか、ヘラさんの能力のおかげてすこぶる調子が良い。
(しかし、九鬼か。確か、君が主で執事が僕で、ってゲームで出てきた名字だったかな?雑誌で読んだ位しか知らないんだよな)
そんな事を考えていると、凄い勢いで廊下を歩く足音がする。部屋の近くまで来ている様だ。
「ふははははははは!九鬼揚羽推参!」
「は?」
部屋で待っていると、突然障子戸が全開に開かれて、おでこにペケマークのキズがある銀髪でヘアバンドで前髪を上げた少女が入ってきた。服装は学生服の様だ。恐らく高校生位だろう。手には風林火山と書かれた軍配を持っている。
「おお!小十郎から聞いたぞ。意識が戻った様だな!」
「揚羽様!遅れて申し訳ありません!」
「遅いわ!馬鹿者が!」
やや遅れて小十郎が中に入ってきた。手にはお茶を出すための急須等の道具を持っている。
「腰を落として、右の拳で打ち上げる!」
「揚羽様あああああああああ!!アッパーでごさいます!!!」
銀髪の少女が小十郎の顎を右アッパーで殴り宙に浮かせる。
「更に横に飛ばす!!」
「2ヒットコンボでごさいます、揚羽様あああああああああ!!」
そのまま、流れる様な動作で小十郎に追撃の回し蹴りを放つ。小十郎の脇腹を捉える。そのまま、小十郎は部屋から叩き出された。しかし、手にはきちんと急須等を持ったままだ。
(小十郎大丈夫なのか?)
いきなりバイオレンスな光景を見せられてしまった。殴る蹴るをした少女は軍配で自身を扇いでいた。しかも、俺をまるで品定めをするかの様な視線で見ていたのだ。
「ほぉ~。我と小十郎のやり取りを初見で見て、反応が無かったのは初めてだな」
「そうですか?見たところ手加減はしていない様ですが、小十郎なら大丈夫な気がしたので。ああ、それと初めまして。介抱していただいてありがとうございます。俺の名は不動悠斗と申します」
「おお!そう言えば挨拶がまだだったな。我は九鬼揚羽である!!貴様を見つけたのは偶然だが、元気そうでなによりだ」
俺はとりあえず感謝の言葉と自己紹介を済ませる。九鬼さんに吹っ飛ばされた小十郎が急須等を持って、戻って来た。
「揚羽様。見事な2ヒットコンボでございました。この小十郎も、揚羽様に追い付く為にも精進致します!」
「うむ。精進するのだ小十郎。小十郎、喉が渇いた。お茶を用意せよ」
「は!唯今!」
小十郎は持っていた、急須等を使ってお茶を用意する。いつの間にか畳の上に座布団が敷かれていた。九鬼さんは既に座っている。俺も九鬼さんの正面に座る。
「揚羽様。お茶をどうぞ。悠斗殿もお茶をどうぞ」
「うむ。頂くとしよう」
「小十郎ありがとう」
俺は出されたお茶を頂く。湯飲み茶碗からは湯気がモクモクと立っている。俺はお茶を口にする。
(う~ん。少々熱いな。もう少し温度が低くてもいい気がするな。お茶事態はなかなか美味しいんだけどな)
俺が内心で小十郎の煎れてくれたお茶の評価をしていると、九鬼さんが湯飲み茶碗を置いた。
「この馬鹿者が!!お茶の温度が熱すぎるわ!!」
「グハァ!申し訳ありません、揚羽様あああああああああ!!」
九鬼さんは何等躊躇いもなく小十郎を殴り飛ばした。ドップラー効果で小十郎の断末魔が響いていく。
(バイオレンスだな。神様、ホントにこの世界は武人ばかりなのか?ぶっちゃけ、ギャグコメディじゃないのか?)
「小十郎の奴、大丈夫なのか?」
「ふん。あやつと我とのやり取りなど日常茶飯事よ。それより悠斗はどうしてあんな所で倒れていたのだ?」
九鬼さんが俺と向かい合う。彼女は立っているので、俺が見上げる格好だが。
「(え~と、どう説明すればいいんだろうな?まあ、事実を話すか?あ、神様から記憶のフォローがきたな)はい。俺が倒れていたのは理由は分かりません。俺も良く覚えていないのです」
「そうか。まあ、我が見つけたから良かったが、見つけられなかったら今頃雨でずぶ濡れになっている所だったぞ」
「そうでしたか。重ね重ねありがとうございます」
俺は頭を下げる。九鬼さんに見つからなかったら酷い目にあっていたんだろう。本当に感謝しか出来ない。
「ふはははは!案ずるな。我は礼を言われる為に助けたのではないのだからな!所で話は変わるが悠斗は、武道を嗜んでいるのか?」
「(この世界だと、俺はMIT(マサチューセッツ
工科大学)を8歳で飛び級して卒業してる事になってるのか。凄すぎだろ!)まあ、そこそこの腕前ですがなにか?」
「そうか。ならば、我と勝負するのだ!」
「は?」
こうして俺は九鬼さんに決闘を申し込まれた。
状況を理解出来ていない俺を尻目に九鬼さんは部屋を出ていった。俺は慌てて彼女の後を追うのだった。
悠斗sideout
揚羽side
我は今自宅近くで助けた悠斗を引き連れて、庭に向かっている。悠斗は一見すると一般人に見えるのだが、我の勘が強者だと告げておるのだ。
(悠斗自身はそこそこの腕と言っているが、我の勘では我に近い存在だと告げでいる。久し振りに強者と戦えるかもしれんな。川神百代と死闘をしてから暫くたつからの。どれ程の腕か楽しみだ!少なくとも我を楽しませてくれよ)
我は内心で悠斗の腕前を吟味しながら、戦えるだけの広さがある庭に向かうのだった。
揚羽sideout
悠斗side
九鬼さんに連れられて来た場所はかなりの広さの庭にだった。少なくとも俺と九鬼さんが戦うには丁度よい広さがあった。俺は何故か九鬼さんの家の庭で、九鬼さん(揚羽)と向かい合って対峙している。何故か、ギャラリーと審判がいるのだが。
「ほう。姉上と戦う者が居るとはな。あずみ。あの男をどう見る?」←銀髪×マークの男
「はい!英雄さまぁぁっっ!!どう頑張っても揚羽様には敵わないと思われます。どう視ても武術に関して揚羽様より下の動きです」←裏表があるメイド
「ほぇ~。まさか、姉上が戦うとは。単なる虐めではないかの?」←羽根の扇子を持った九鬼さんの妹?
「紋白様。恐らく揚羽様は試験か何かをされるのかと思われます」←メガネを掛けた白髪のダンディーな執事
「・・・・・・」←庭の見える部屋の簾の向こうにいるため顔や姿が分からないが雰囲気的に一番偉い人(九鬼帝)
「揚羽様!頑張ってください!!悠斗殿、無理しないでください!」←小十郎
「ふ~ん。まあ、揚羽様の余裕勝ちね」←通称血まみれの異名をもつメイド
「ええ。まずあの男が勝てる可能性はない」←感情の変化が乏しいメイド
ギャラリーが様々な意見を言っている。俺はどうしてこうなったのか、理解出来ていない。
(あれ?なんで戦う事になったんだろう?あれか!小十郎とのやり取りを見てて、反応が無かったのが原因か?それとも、武道の腕前がそこそこと言ったからか?)
そんな事を考えていると、金髪でダンディーな雰囲気の人が俺と九鬼さんの間に来た。
「九鬼紋白専属のヒューム・ヘルシングだ。此度の決闘の審判を担当する。 ルールは簡単だ。相手をKOするか、審判の私が戦闘続行不能と判断して止めに入るかだ。なを、時間は無制限だ。両者用意は良いな?」
「ヒューム師匠。我は良いぞ」
「まだダメです」
なんとなく、空気を読まずに反抗してみる。
「男がグズグズ言うな。始め!」
ヒュームさんは、俺の意見を無視して合図をだす。それと同時に体操着に着替えた九鬼さんが、俺に突進してくる。九鬼さんは俺の間合いに入ると、即座に蹴りを放つ。
(とりあえず、これでKOされた風に装ってみるか)
俺は周囲のギャラリーに気付かれない様に後ろにジャンプして、衝撃を相殺して蹴りを受ける。俺はそのまま3メートル程吹き飛ばされて、地面に仰向けに倒れる。
「やはり、姉上の勝ちか。まあ、当たり前か」←銀髪×マークの男
「そうでごさいます。英雄さまぁぁっっ!!(あれは、脳が揺らされたな。恐らく意識が有っても立てないな)」←裏表のあるメイド
「まあ、当たり前の結果じゃの」←羽根の扇子を持った九鬼さんの妹
「どうでしょうか?(今のは、見間違いか?後ろに跳んだ様に見えたが?気のせいか?)」←メガネを掛けた白髪のダンディーな執事
「・・・・・・」←簾の向こうにいるため顔や姿が分からない九鬼帝
「流石でございます、揚羽様!!」←小十郎
「まあ、当然の結果ね」 ←通称血まみれの異名をもつメイド
「いや、けど、まさか?(今、ダメージを相殺したような?気のせいかしら?)」←感情の変化が乏しいメイド
「ふむ?そこそこと言った割りではなかったの。我の見込み違いだったかな?ヒューム師匠。我の勝ち故、早く悠斗に医者を呼んでください」
九鬼さんは自身が勝利したと確信している様だ。ただ、審判のヒュームさんが勝利宣言をしていない。
(あれ?もしかして、見抜いたかな?)
「ヒューム師匠!早く宣言をしてください!小十郎!医療班を呼ぶのだ!」
「その必要はない。小僧。何時までやられた振りをしているつもりだ?さっさと立て!立つつもりがないなら、俺が叩き起こすぞ!!」
怒気を孕んだ声で俺に立てと言うヒュームさん。どうやら彼は俺がダメージを受けていない事を、見抜いたらしい。
俺は素早く立ち上がる。
「まさか、あれを見抜くなんてね」
「ギリギリだがな。俺も注視していなかったら、見逃していただろうな。それだけ見事な見切りだった」
「馬鹿な!我の必殺のタイミングで放った蹴りで、ダメージを受けていないだと!」
審判のヒュームさんは俺の見きりに、感心していた。ギャラリーや九鬼さんは、俺がダメージを受けていない事に驚いていた。俺は両腕を上げて構える。九鬼さんも構えた。
「先ずはお返しだ」
俺は右足で地面を軽く蹴り、一気に間合いを詰める。九鬼さんの間合いに入り右フック、左ストレートパンチを放つ。様は、ワンツーパンチだ。
ヒュンヒュンと風切り音がする。九鬼さんはそれを両腕でガードする。
(やべ!?絶対強者のスキルのせいで、加減が若干あってない!!今のパンチの威力は重すぎる!)
(く!なんとかガード出来たが、パンチが殆ど見えなかった!長期戦になれば我が不利になる!ならば、一気に奥義で叩き潰す!)
九鬼さんが蹴りを放ってくる。俺はそれを避けてやや離れる。俺が一歩踏み込めば九鬼さんの間合いに入る距離だ。
九鬼さんの目を見ると決意が滲み出ていた。
(あの目は次で決めるつもりだな。なら、俺も奥義を放つのみだ!)
互いに視線をぶつけ合う。次の瞬間九鬼さんが動いた。
「ならば!!九鬼家最終奥義!!古龍昇天破!!」
「我流奥義!!獅子殲滅波!!」
両者の奥義が炸裂する。九鬼さんの放ったアッパーは俺に命中せず上空に竜巻を発生させていた。逆に回避して距離を取って俺の拳に収縮された闘気を発射する。獅子の顔をした闘気が、九鬼さんに命中して爆発した。煙が立ち込めて辺りを覆う。暫くすると、煙が晴れ地面に倒れている九鬼さんの姿があった。
「勝者不動悠斗!」
ヒュームさんが俺の勝利宣言をする。俺は急いで九鬼さんに駆け寄り、抱き抱える。
「九鬼さん、しっかりしろ!?(かなり手加減して放ったから大丈夫のはずなんだが!?当たり所が悪かったのか?絶対強者のスキルのせいで、加減がずれたのか!?)」
「揚羽様!?しっかりしてください!!」
小十郎も慌てて俺の側にやって来た。すると、九鬼さんが目を開けた。
「うん?悠斗に小十郎か。もしや、我は負けたのか?」
「はい。残念ながら、揚羽様の敗けでございます」
「小十郎。そうか、分かった。そうか我は負けたのか!ふははははは!」
「あ、揚羽様!?」
俺の腕の中でいきなり笑い出す九鬼さん。もしかして、獅子殲滅波の当たり所が悪かったのだろうか?俺の腕から出て、九鬼さんは笑いながら立ち上がった。俺と小十郎も立ち上がる。
「悠斗!我はお前が気に入った!悠斗を我の伴侶にするぞ!」
「「「「「「「な、なんだって!!?」」」」」」」
いきなりそう宣言する九鬼さん。小十郎に至っては顎が外れるかと思うほど、口が開いている。まあ、俺自身もかなり驚いているがな。
「揚羽よ。本気なのか?」
「ヒューム師匠。我は真剣(マジ)だ。常々我の夫は我より強い男と決めていたからな。そこに悠斗が現れたのだからな!それに良い男だしな」
わははははと笑う九鬼さん。現状について行けない俺は唖然とするしかなかった。呆然と立ち尽くす俺の側に、九鬼さんがやって来る。
「悠斗よ、どうしたのだ?我の伴侶が嫌だと申すのか?」
「いや、まず俺と九鬼さんは知り合ってから1日も経ってないんですよ!?本気なんですか?」
「我は本気よ!知り合た時間など関係ない!我が悠斗を好きになったのだ!それ以外に理由などいるか?」
ビシッと腕を組んで言い放つ九鬼さん。俺が女なら惚れてしまいそうな位の男気だ。
(いやいや、いろいろ重要な事があるでしょ!本人の気持ちとかさ!?)
俺が返答に悩んでいると、先ほど審判をしてくれたヒュームさんが此方に来た。近くで見るとますますダンディーな方だ。
「揚羽よ。伴侶にする云々はとりあえず置いておいて、こやつを九鬼執事部隊に入隊させて専属執事にする事で良いか?」
「ああ。構わぬ。悠斗よ!貴様は我の専属執事にする事になった!!小十郎共々精進するのだ!」
「は?へ?どういう事ですか?」
「悠斗殿!!この小十郎、共に揚羽様にお仕え出来る事を嬉しく思います!!」
「そう言う事だ。不動悠斗。貴様は九鬼執事部隊に入隊したのだ」
「あれ?俺の意思は反映されないんですか?」
「諦めろ。九鬼帝様が許可を出したのだ。もう、後戻りは出来んのだ」
「ハハハ。分かりました。これからよろしくお願いします」
俺は半ば強引に九鬼執事部隊に就職する事になった。こうして俺は衣食住を手に入れるのであった。
悠斗sideout
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