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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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緊急事態

 
前書き
ゲツガはサラマンダーの副将的な奴と戦わせることにする。 

 
「うう、いててて……」

 リーファに思い切り叩かれたほっぺをさすりながらキリトはとぼとぼと歩く。

「あれはお前が悪い」

「そうです!!さっきのはパパが悪いです!!」

「ほんとだわよ。失礼しちゃうわ」

 三人にそういわれてキリトはしかられた子供のような顔で抗弁した。

「うわっ……味方が一人もいない……だからさあ、殺伐とした戦闘のあとの空気を和ませようというウェットに満ちたジョークじゃないか……」

「次やったらぶった斬るからね」

「はい……」

「キリト、やる時は時と場合と相手を考えような」

 そう言って、鉱山都市ルグルーの中に入る。BGMの代わりにNPC楽団の陽気な音楽と鍛冶をしているのかいくつもの金属がぶつかり合う音が四人を出迎えた。そこは、今まで見たことのない妖精たちや武器がいくつも並んでいる。

「へぇー、ここがルグルーかぁー」

「なかなか、いい場所だな」

「そうですね」

「確かに」

 上からリーファ、ゲツガ、ユイ、キリトがそれぞれの感想を述べた。そして、リーファは初めてきた場所だからか、手近な店に入る。その後について行くときにあることを思い出したゲツガはリーファに言った。

「そう言えば」

「ん?」

「サラマンダーズに襲われる前になんかメッセージとどいてなかったか?あれはいいのか?」

「……あ」

 リーファはそういわれて思い出したのか口をあんぐり開けたまま振り返った。

「忘れてた」

 慌ててウィンドウをウィンドウを開き、確認していた。

「なによ、寝ちゃったのかな」

「一応あっちで連絡とって見たら?」

 キリトがそう言うとリーファはウムムと考えてから言った。

「じゃあ、ちょっと落ちて確認してくるから、キリト君とゲツガ君は待ってて。あたしの体をよろしくね。ユイちゃん」

 キリトの肩に乗っているユイに向かって言った。

「はい?」

「君のお兄ちゃんはなんら問題ないんだけど、パパがね……だからいたずらしないように監視しててね」

「りょーかいです!」

「あ、あのなあ!!」

「お前があんなことするからだろ」

 キリトが心外そうに首を振るとゲツガとリーファは笑う。リーファは手近なベンチに腰をかけてログアウトボタンを押すと待機姿勢になった。

「キリト、俺はちょっと矢の買い足しとかしないとならないからお前も何かいるんだったら買ってくるけど」

「おお、じゃあ適当に何か食い物買ってきてくれ。この世界のものをもっと食ってみたいからな」

「わかった、ユイも何かいるか?」

「私はいいです」

「OK。じゃ、ちょっと行ってくるからリーファが帰ってきたときよろしく」

 そう言ってゲツガは店が立ち並ぶ大通りに姿を消した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 大通りにある店で素早く矢などの消耗品を買い揃え、キリトに適当なものを買ったあとにキリトの場所に戻るとまだリーファは戻ってきてないらしく待機状態のままだった。

「ホラ、キリト。そこら辺の屋台から買ってきたやつ。なんとかトカゲの姿焼きだって」

「ウへー、マズソー。でもチャレンジャーな俺はそれをあえてもらうぜ」

 そう言ってゲツガの手にあったそれを取る。自分で買っといてなんだがそれを食うなんて正直気が引ける。そしてゲツガもベンチに腰掛けようとした時にリーファが目を開けて勢いよく立ち上がった。

「うわっびっくりした!!」

 キリトはトカゲの姿焼きを落としそうになるが握り締めて何とか落とさずにすんだ。

「お帰り、リーファ」

「おかえりなさいー」

「どうだったんだ?何か大事なようだったのか?」

 ゲツガ達は口々にそう言うと、リーファは急いでるのか早口で言った。

「大事なようだった……ゲツガ君、キリト君、ごめんなさい」

「え、ええ?」

 いきなり頭を下げられ、キリトは戸惑う。ゲツガも何があったのかで反応できないでいる。

「あたし、急いで行かなきゃいけない用事ができちゃった。説明してる時間もなさそうだなの。たぶん、ここに帰ってこられないかもしれない」

「……」

 ゲツガはリーファの目をまっすぐと見つめた。その目は本当に焦ってるように見えたためゲツガは頷く。横にいたキリトも同時に頷いた。

「そうか。じゃあ移動しながら話を聞こう」

「え……?」

 キリトがそう言うとリーファは少しわけがわからないと言った風な声を上げる。

「どっちにしてもここから足を使って出ないといけないだろう?」

「それに急いで行かなきゃいけない用事なんだろ?こんなとこで時間潰してないで早く行こうぜ」

 キリトとゲツガはそう言った。

「……わかった。じゃあ、走りながら話すね」

 リーファたちはアルン側の門を目指して駆け出す。ゲツガはそこまで足が速くないため、民家をや店の壁を使って跳ねて移動する。そして大きな門を抜けるとゲツガは走ってキリト達のところまで何とか追いつくとリーファが事情を説明する。

「なるほど」

 キリトとゲツガはそれを聞いて少し考えるかのように視線を前方に戻す。

「幾つか質問するけど、答えてくれるか?」

 ゲツガはリーファにそう聞く。頷いて了承が出たのでキリトから質問を始める。

「シルフとケットシーの領主を襲うことで、サラマンダーにどんなメリットがあるんだ?」

「えーと、まず、同盟を邪魔できるよね。シルフ側から漏れた情報で領主を討たれたらケットシー側は黙ってないでしょ。ヘタしたらシルフとケットシーで戦争になるかもしれないし……。サラマンダーは今最大勢力だけど、シルフとケットシーが連合すれば、たぶんパワーバランスが逆転するから、それをなんとしても阻止したいんだと思うよ」

「そのほかには?」

 ゲツガはリーファに聞く。

「他には領主を討つとすごいボーナスがもらえるの。打たれた側の領主は領主館に蓄積されている貯蓄を無条件で入手、他にも十日間もの間領内の街を占領状態にして税金を自由にかけることができるの。これはものすごい金額だよ。サラマンダーが最大勢力になったのは、前にシルフの最初の領主を罠にかけて殺したからなんだ。普通領主は中立域に出ないからね。ALO史上、領主が討たれたのは後にも先にもこの一回だけ」

「そうなのか……」

「サラマンダーは知の将って言うのは本当だったんだな」

 ゲツガは前調べた時にサラマンダーの領主はモーティマーという知能が高い領主と書いてあったことは本当だったんだなーと思いながらリーファの話を聞く。

「だからね、ゲツガ君、キリト君」

 リーファはゲツガとキリトのほうをちらりと見やると申し訳なさそうに言葉を続けた。

「これは私たち、シルフ族の問題だから……これ以上君らが付き合ってくれる理由はないよ……。この洞窟を抜ければアルンまでもう少しだし、多分会談会場に行ったら生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しで、何時間も無駄になるだろうしね。ううん、もっと言えば……」

 リーファは少し口を閉じてから言った。

「世界樹の上に行きたい、って言う君たちの目的には、サラマンダーに協力するのが最善かもしれない。サラマンダーがこの作戦に成功すれば、十分な資金を得て、万全の体制で世界樹攻略に挑もうと思う。君達くらいの強さなら傭兵として雇ってもらえるかもしれないし。今ここであたしを斬っても文句は言わない」

 そういったリーファにゲツガはダメージをくらわない程度にチョップをかました。その時にみんな停止した。

「イテッ!」

「ふざけるのもいい加減にしろよ、リーファ。シルフだけの問題だから俺たちは先に行け?サラマンダーと協力したほうがいい?そんなふざけた言うのも大概にしておけよ。それにケットシーの領主もいるんなら俺も無関係じゃない」

「ゲツガ君……」

「そうだ、リーファ。ゲツガの言う通りだ。それにどちらに協力するかなんて俺たちの勝ってだろ」

 そしてゲツガはキリトと顔を見合わせてニヤッと笑う。

「二人とも、ありがとう」

 リーファは少し目に涙をためて言った。

「だけど、これもタイムロスになっちまったな。キリト、かなり飛ばすぞ。ユイはナビをよろしく頼む」

「OK!」

「りょーかいです!!」

「じゃあ、リーファ失礼!」

 そう言ってゲツガはリーファを俗に言うお姫様抱っこで持ち上げた。

「ふぇ!?ちょ……きゃーー!!」

持ち上げた後素早くゲツガは洞窟内で跳躍して跳ねまくる。そしてキリトもその後についてくるように走ってくる。

「ゲツガ!今度俺にもその方法を伝授してくれよ!俺もどんなもんかしてみたい!!」

「無理だね!これは俺か別の筋力に極振りしてる奴かある程度高い奴じゃないとできない!!」

「ちょ、ちょっと二人とも会話してないで前見て、前ぇー!!」

 リーファが叫ぶんで前を見るとたくさんのモンスターが出現していて道を塞ぐように立っていた。

「どうする、キリト!このまま抜けるか!?」

「うーん……ぶっ飛ばしていく!!」

 そう言ってキリトはそう言って背中の剣を抜くとモンスターの大群に向けて一気に振るった。その攻撃を食らったモンスターは吹っ飛んでポリゴンになるか壁にぶつかってそのままか。

「わあああああ!!」

 リーファは怖いのかゲツガに抱きつく。そのうちの一匹がゲツガのところに飛んできたので蹴り飛ばしてキリトに文句を言う。

「キリト!危ないだろ!こっちは走りじゃないんだから少しでも狂うと落ちるんだからな!!」

「すまんすまん!!」

 そう言ってキリトは視線を前に戻すと叫んだ。

「ゲツガ!出口が見えたぞ!」

「ようやく出口か、案外早かったな!」

 そう言った瞬間、ゲツガ達の視界は一瞬真っ白になる。直に慣れてくるとゲツガたちは空中にいた。素早く翅を出して飛行する。ゲツガは抱きついてるリーファに言った。

「リーファ……もう大丈夫だからそろそろ飛行してくれないか?」

「え……あ、うん」

 頬を赤くしながら離れたリーファはゲツガの手につかまって飛行体勢に入った。そして飛行し始めると手を離し前方に視界を戻した。目の前には空まで届くほどの大きさの木が目に入った。

「あれが世界樹か……」

「ああ、もうすぐだな」

 キリトとゲツガは目の前の木にいるはずの彼女達を思い出すが今は優先すべき事態があるためリーファに言った。

「リーファ領主会談の場所ってのはどの辺りなんだ?」

「ええと、今抜けてきた山脈は輪っかになって世界樹を囲んでいるんだけどそのうちの三箇所に大きな切れ目があるのサラマンダー領に向かう竜の谷、ウンディーネ領に向かう虹の谷、あとケットシー領につながる蝶の谷……。会談はその蝶の谷の、内陸側の出口で行われるらしいから……大体この方角」

 リーファは北西の方角に指差した。

「あっちにしばらく飛んだとこだと思う」

「了解。ユイ、残り時間は?」

「あと大体二十分!」

「会談を襲うつもりなら、サラマンダーはあっちからこっちへ移動するわけか……」

「だな。そのほうが確実にサラマンダー領から早くいける」

 ゲツガとキリトはサラマンダーの移動する場所を大体予想する。

「俺たちよりも先行してるのか微妙だな」

「いや。多分先行している。六時間も経つんだ。もう、会談のすぐそこまで近づいてると思う」

「それなら急ぐしかないな。ユイ、サーチ圏内に大人数の反応があったら知らせてくれ」

「はい!」

 ゲツガ達は互いに頷きを交わすと翅を大きく鳴らして加速に入った。



 
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