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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―修学旅行 後編―

 
前書き
途中で切れば良かった……そう後悔するほど長いです。 

 
「痛てて……」

 鏡の中に頭から突っ込んだせいか、どうやら気を失っていたようだった。
辺りに一緒に突っ込んだはずの氷丸の姿は見えず、また、俺がどこにいるかも解らない。


 大徳寺先生の錬金術の本に吸い込まれて閉じ込められた時といい、俺は何かに吸い込まれることに縁でもあるのだろうか……出来ればそんな縁は今すぐ切りたいところだが。

 とりあえず立ち上がって辺りを改めて見直してみるが、人っ子一人も姿は見えず、場所も少なくてもラー・イエローの旅館ではない、というぐらいしか見て取れない。
……強いて言えば、一度本で読んだことのあるバーチャル空間に極似していることが挙げられる。

 デュエル・アカデミアに入ってからは、活かす機会がデュエルディスクの調整ぐらいしか無いのだが、こう見えて俺は元々機械には強い。
それに、現実世界とは思えないこの空気から考えるに、1日早く約束の場所に来てしまったということだろうか……いや、今まで寝てしまっていたせいで正確な時刻は解らず、PDAも圏外を示しているのだが。

 さてどうしたものか、と頭を捻っていた時、突如として俺の背後から光が差し込んでくる。
そのままその光は拡散し始め、収束すると同時に白いスーツ姿の少年がそこにはいた。

「……エド!?」

 今このバーチャル空間に来たのは、あのプロデュエリストであるエド・フェニックス……確かにこの修学旅行には来ていたようだったが、思いも寄らぬ人物の登場に、俺は驚きを露わにする。

「遊矢……なぜお前がここにいる?」

 現れたエドの方も状況を理解できていないようで、俺ほどには驚かなかったものの、イレギュラーである俺を睨みつけていた。

 更に横方向にエドの時と同じように光が出現し、収束した後にまたもや見知った顔が現れた。

「遊矢に……エド!?」

「無事が遊矢!」

 新たに現れた二人は、今や少し珍しくなった赤い制服を着た十代と、我が親友でありライバルである三沢であった。

「無事と言えば無事だが……今起きたせいで、何が起きているかは解らない」

「なるほどな……気づいているとは思うが、ここは海馬ランドのバーチャル空間だ。俺は吹雪さんに連絡を受けて、十代を連れてここに来たんだ……エドがここにいる理由は解らないが」

 三沢がざっと説明してくれたおかげで、大体の状況を理解出来た……今は、吹雪さんと氷丸のデュエルからはあまり時間はたっておらず、吹雪さんから連絡を受けた三沢が、十代を連れて迅速に海馬ランドに来てくれた、というわけだ。

「《リボルバー・ドラゴン》で起こされた時は何かと思ったぜ……なあエド、お前はどうしているんだ?」

「お前たちには関係ない」

 流石は十代、俺たちが聞きづらいことを平気で聞いてくれる……が、相手が悪かったようだ。

「俺と十代がバーチャル空間に入る前に、先にここに入っている者が三人いたようだったが、遊矢にエド、そして恐らくは……」

 三沢が言わんとしていることは大体解ったが、三沢がそのセリフを口に出す前に、三沢と十代の姿が霞のように消えた。

「三沢! 十代!」

「案ずるな……姿が見えないだけだ」

 聞いたことのある声に反応すると、この科学が支配するバーチャル空間に、不釣り合いな巫女装束を着た女――斉王美寿知が鏡の中から現れていた。

「予定が1日ばかり早まったが……まあよい。黒崎遊矢。エド・フェニックス。そなたらの誰が兄を助ける素質を持つ者なのか……デュエルしてもらうぞ!」

 兄を助ける素質……? 彼女にとって兄とは俺たちが言う『斉王』のことであろうが、それを助ける素質が何故俺たちにある? そもそも助けるとは何だ?

「何だか解らないことばかりだが……お前には聞きたいことばかりある。俺が勝ったら話してもらうぞ!」

 斉王美寿知の方へ、一歩踏みだしてデュエルディスクを展開する。
そしてその隣に、三沢や十代と違って消えなかったエドが並び立つ。

「それなら僕にある……それと、一人で二人とデュエルする気か?」

 エドのもっともな質問に美寿知は怪しい笑みで応え、美寿知の横にまたも鏡が出現したかと思えば、本体の美寿知を反対にしただけのもう一人の美寿知が鏡から現れる。
流石はバーチャル空間、もう何が起ころうと驚くまい……分身出来るのならば、恐らくは三沢と十代の方にも同じように行っていることであろう。

 三沢と十代の二人ならば心配はいらないと考え、俺はデュエルの準備を完了させる。

「せいぜい足を引っ張るなよ、遊矢」

「……そっくりそのまま返してやる」

 ……三沢と十代のタッグより、遥かに心配なのはこちらの方なのだが。

『デュエル!』

遊矢&エドLP8000

美寿知&美寿知(鏡)LP8000

「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺の先攻、ドロー!」

 珍しく一番の先攻だということを俺のデュエルディスクが表示し、カードをドローする。

「俺は《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」

ガントレット・ウォリアー
ATK400
DEF1600

 巨大なガントレットを備えた機械戦士が、その守備力を活かして守備の態勢をとった。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 左にデュエルディスクを付けた、鏡ではない元々の美寿知がカードを引く。

「私は《苦渋の選択》を発動! デッキから五枚のカードを選択し、相手が選んだ一枚を手札に加え、そのカード以外を墓地に送る……さあ、選ぶが良い」

 美寿知が発動したカードの影響により、俺の目の前に五枚のカードが映し出される……墓地肥やしと手札交換を同時にこなせる、ある意味相手プレイヤーにとって苦渋の選択である。

映し出されたカードは《銀の式神―左京》、《銀の式神-右京》、《魔鏡の式神-那由多》、《魔鏡の式神-阿僧祗》、《闇の神-ダーク・ゴッド》……このことから、少なくとも本物の美寿知は【式神】デッキだと解る。

 展開力に優れた《式神》とそのサポートカードを備えたカテゴリー……一番最後の《闇の神-ダーク・ゴッド》というのは知らなかったが、映し出されたカードの映像によると最上級モンスターであり、切り札クラスのカードであることは想像に難くない。

「俺は《闇の神-ダーク・ゴッド》を選択する」

主に墓地で効果が発動する《式神》たちを墓地に送りたくはないが、切り札クラスの最上級モンスターを墓地に落としてやる方が愚策。
そう結論づけた俺は、《式神》たちを墓地に落としてやる方を選んだ。

「そして、私は《銀の式神-右京》を召喚!」

銀の式神-右京
ATK800
DEF600

「右京が召喚・特殊召喚に成功した時、墓地の《銀の式神-左京》を特殊召喚出来る。守備表示で特殊召喚!」

銀の式神-左京
ATK600
DEF800

 これこそが《式神》シリーズの厄介な効果であり、最大の長所でもある、召喚・特殊召喚時に対応する墓地の式神を特殊召喚出来る効果。
その分ステータスは低めではあるが、その展開力は《機械戦士》でも足元にも及ばない。

「更に《銀の十字路-ミラールート》を発動! 自分フィールド場の攻撃力1000以下のモンスター一体は、ダイレクトアタックが出来る! 《銀の式神-右京》でダイレクトアタック!」

 魔法カードの効果によって現れた銀色の鏡張りの道を通り抜け、銀の式神-右京が小刀で俺を刺してきた。

「この程度……!」

遊矢&エドLP8000→7200

 たかがライフの十分の一を削られた程度だ、まだまだ問題ではない。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー!」

 今回は敵ではなくタッグパートナーであるエドのターンに移り、油断など微塵も無さそうにカードを引いた。

「《デステニー・ドロー》を発動し、セメタリーに一枚捨て二枚ドロー……そして、僕は《ガントレット・ウォリアー》をリリースし、《D-HERO ダブルガイ》をアドバンス召喚!」

D-HERO ダブルガイ
ATK1000
DEF1000

 俺のガントレット・ウォリアーがリリースされ、代わりに英国紳士風の男がフィールドに召喚された。

「バトル! ダブルガイで《銀の式神-右京》に攻撃! デス・オーバーラップ!」

 その獰猛な本性を隠しながら、英国紳士風のD-HEROが、まずは攻撃表示の式神の下へ向かう。

「リバースカード、《千筋の糸》を発動! その攻撃を無効にし、フィールド場の全てのモンスターの攻撃力を0にする!」

 銀の式神-右京と左京、そして攻撃していったダブルガイにも糸が巻き付いていき、全てのモンスターの攻撃力は糸に吸い込まれて0となってしまう。

「くっ……バトルフェイズを終了し、フィールド魔法《幽獄の時計塔》を発動!」

 美寿知のリバースカード、《千筋の糸》の影響でダブルガイの効果を発揮することはなく、メインフェイズ2に囚人を閉じ込めている巨大な時計塔が、バーチャル空間に取って代わった。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 最後に美寿知(鏡)のターンであり、鏡から出てきただけあって、その姿だけでなく動きも左右が反対になっているだけであった。

「お前のスタンバイフェイズ、《幽獄の時計塔》は新たな時を刻む!」

 俺たちが戦っているフィールドの時計塔の時間が回る……再び12時を指すまであと三ターン、か。

「私は攻撃表示の《銀の式神-右京》をリリースし、《魔鏡の式神-阿僧祗》を攻撃表示で召喚!」

魔鏡の式神-阿僧祗
ATK1500
DEF2500

 守備力の方が高い、《銀の式神-左京》の上位モンスターである《魔鏡の式神-阿僧祗》……上級モンスターとしてはかなり低めのステータスだが、リクルーターに対応するその絶妙なステータスに、対応する式神を特殊召喚する効果は健在だ。

「《魔鏡の式神-阿僧祗》が召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から《魔鏡の式神-那由多》を特殊召喚する!」

《魔鏡の式神-那由多》
ATK2600
DEF1400

 下位モンスターである《銀の式神-右京》の特殊召喚効果と同様に、またもや鏡の中からその成長した式神の姿を現した。

「バトル! 《魔鏡の式神-阿僧祗》で、ダブルガイを攻撃!」

 攻撃力の低い方の式神の攻撃であろうと、今のダブルガイは千筋の糸に絡まり攻撃力は0、しかも攻撃表示である。

「《D-シールド》を発動し、そのエフェクトによりダブルガイは守備表示になり、更に破壊されない!」

 ダブルガイが突如出現した巨大な盾で攻撃を防ぎ、《魔鏡の式神-阿僧祗》による攻撃も、《D-シールド》での戦闘破壊耐性を得て事なきを得る。

「ならば、永続魔法《月輪鏡》を発動し、カードを二枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 美寿知の発動した永続魔法《月輪鏡》という名も聞き覚えが無かったが、発動した時、二人の美寿知の背後に巨大な鏡が浮かんだ。

「俺は《ニトロ・シンクロン》を召喚!」

ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF100

 考えても解らないことを考えても仕方がない、とりあえずメーターを頭に付けた、消火器のようなシンクロンを召喚する。

「速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動し、ニトロ・シンクロンのレベルを1にする……そして、レベル6の《D-HERO ダブルガイ》と、レベル1の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 俺もガントレット・ウォリアーをリリースされたのだ、エドのダブルガイをシンクロ素材にしても全く問題あるまい。合計レベルは、速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動したことによって7。

「集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ!シンクロ召喚!燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800

 消火器と英国紳士風の男がチューニングによってどういう化学変化を起こしたのか、似ても似つかぬ緑色をした悪魔のような機械戦士がシンクロ召喚された。

「ニトロ・シンクロンがニトロ・ウォリアーのシンクロ素材になったため、一枚ドロー……更に速攻魔法《手札断殺》を発動! 二枚捨てて二枚ドロー!」

 今引いた魔法カードをこれ幸いとそのままデュエルディスクにセットし、手札交換をしつつニトロ・ウォリアーの効果へと繋ぐ……更に、お約束通りのカードもある。

「墓地に送った《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! デッキから守備表示で現れろ、マイフェイバリット!」

『トアアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 マイフェイバリットカードがデッキから飛び出し、守備の態勢をとる……よし、後はそのまま殴る。

「バトル! ニトロ・ウォリアーで《魔鏡の式神-阿僧祗》に攻撃! ダイナマイト・ナックル! ……更に、ニトロ・ウォリアーは魔法カードを使ったターン、攻撃力が1000ポイントアップする!」

 炎を迸らせながら、攻撃の命令を受け取ったニトロ・ウォリアーが《魔鏡の式神-阿僧祗》にラッシュを叩き込む。
どうせ対応する式神を召喚するだけで簡単に蘇るのだ、俺は上級の式神の攻撃力が低い方を狙った。

美寿知&美寿知(鏡)LP8000→5700

「くうう……だが、《月輪鏡》の効果発動! 破壊された時、このカードにカウンターを溜める」

 破壊された魔鏡の式神-右京の魂のようなものが、美寿知の背後にある巨大な鏡に吸い込まれていく。

「……まだだ! ニトロ・ウォリアーの効果発動! 戦闘破壊した時、相手の表側守備表示の表示形式を変更してそのままバトルを行う! ダイナマイト・インパクト!」

「甘い! 《銀幕の方違え》を発動! 私のモンスターがモンスターの効果の対象に選択された時、その効果モンスターを除外する!」

 ニトロ・ウォリアーがダイナマイト・インパクトを発動した時、ニトロ・ウォリアーが鏡の中へ吸い込まれてそのまま除外されてしまう……くそ、油断した。

「……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 本体の美寿知のターンに移り、フィールド魔法《幽獄の時計塔》のカウントが更に進む。

「私は《魔鏡の式神-左京》を召喚! 効果により、右京を特殊召喚!」

 一体のモンスターから、操っているプレイヤーと同じように鏡で分身して、鏡違いの式神が二体フィールドに現れる。

 これで奴のフィールドには式神が五体にリバースカードが一枚で、対するこちらは、守備表示のマイフェイバリットカード《スピード・ウォリアー》と、俺のデッキには何の意味もなさないフィールド魔法《幽獄の時計塔》にエドのリバースカードが一枚で俺のリバースカードが二枚……しかも、どれもあの式神たちの総攻撃を防げるカードではない。

「バトル! 魔鏡の式神-左京で、スピード・ウォリアーに攻撃!」

 一番攻撃力が低い式神の攻撃ではあったが、守備モンスターではない下級モンスターのスピード・ウォリアーには荷が重く、剣の斬撃により斬り伏せられてしまう。

「更に魔鏡の式神-右京で、そなたらにダイレクトアタック!」

 手札の《速攻のかかし》の効果を発動! と言いたいところなのだが、俺の手札に残念ながら速攻のかかしはなく……いや、このエドのリバースカード……

「エドのリバースカード、オープン! 《エターナル・ドレッド》! 幽獄の時計塔のカウンターを二つ進める!」

 幽獄の時計塔の頂上の時計の針が高速で動きだし、時計は再び12時を指してその鐘を鳴らした。

「それが何の意味がある! ダイレクトアタックのダメージを受けてもらうぞ!」

 しかして美寿知の言葉は叶わず、魔鏡の式神-右京の攻撃が俺たちにダメージを与えることはなかった。

「《幽獄の時計塔》のエフェクト。時計が再び12時を指した時、僕たちは戦闘ダメージを受けない」

 俺の横にいたエドが、自身のカードである《幽獄の時計塔》の効果を説明する……前の十代とのタッグデュエルの時にやられたのを思いだして助かった。
デッキからD-HEROの切り札となり得るモンスターを呼ぶ、後半部分の効果が印象的すぎて、前半部分の効果をつい忘れていたのは反省だ。

「……カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

「僕のターン、ドロー」

 《幽獄の時計塔》のおかげで戦闘ダメージは防げるとはいえ、そのままで勝てるわけがなく、もし俺のターンに破壊されてしまうことがあれば最悪の事態だ。

「《天使の施し》を発動し、三枚ドローし二枚捨てる……そして、《サイクロン》のエフェクト発動! 僕のフィールドの《幽獄の時計塔》を破壊する!」

「なっ!?」

 エドが発動したサイクロンの指定したカードは、美寿知のフィールドに伏せられている二枚のリバースカードではなく、不気味にカウンターを貯めていく《月輪鏡》でもない自分のフィールド魔法《幽獄の時計塔》。
最初見たときは面食らったものだが、タッグパートナーにした今ではそれが頼もしい。

「再び12時を指した《幽獄の時計塔》が破壊された時、デッキから《D-HERO ドレッドガイ》を特殊召喚する! カモン、ドレッドガイ!」

D-HERO ドレッドガイ
ATK?
DEF?

 幽獄の時計塔が壊れていき、崩落と共に時計塔に閉じ込められていた鉄仮面の囚人は目を覚まし、その力を発揮する……!

「ドレッドガイのエフェクト発動! セメタリーから二体のD-HEROを特殊召喚する! ドレッド・ウォール!」

 ドレッドガイがその巨大な腕で大地を叩くと、その背後に漆黒の影が現れていく……それも、二体。

「カモン、《D-HERO ダイヤモンドガイ》! 《D-HERO ダッシュガイ》!」

D-HERO ダッシュガイ
ATK2100
DEF1000

D-HERO ダイヤモンドガイ
ATK1400
DEF1600

 ドレッドガイの効果で墓地から特殊召喚された、二体の主力であるD-HERO……最初のターンの《デステニー・ドロー》と先程の《天使の施し》の時のどちらのタイミングかは知らないが、エドはこの状況をイメージしていたのだろう。

「更に《D-HERO ダンクガイ》を召喚し、バトル!」

D-HERO ダンクガイ
ATK1200
DEF1700

 最後のダメ押しにダンクガイも召喚され、ここに美寿知の式神VSD-HEROの構図となった対峙が始まった。

「ドレッドガイの攻撃力は、エフェクトによりD-HEROの合計値である4700となる! ……《魔鏡の式神-那由多》に攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

「リバースカード、《聖なる結界-ミラー・バインド》を発動! 私のフィールドに左京と右京がいる時、攻撃モンスターを破壊し、更にそのモンスターより攻撃力が低いモンスターを破壊する!」

 エドのD-HEROの大量展開からの猛攻に焦ったのか、美寿知はプレイングミスを犯す……美寿知は知り得ないことではあるので仕方ないのだが。

 左京と右京が二体で巨大な鏡を映しだし、そのままドレッドガイに撃ち出す……《聖なる結界-ミラー・バインド》の効果から察するに、その巨大な鏡でドレッドガイの攻撃を反射しようてというのだろうが、ドレッドガイの強靭な腕は何事もなかったかのようにそのまま鏡を壊した。

「ドレッドガイがのエフェクト発動! 特殊召喚されたターン、僕のフィールドのD-HEROはあらゆる破壊を無効にする!」 

 そのまま鏡の裏に隠れていた魔鏡の式神-那由多を見つけ、何の苦もなくなぎ倒した。

美寿知&美寿知(鏡)LP5700→3600

「まだ続くぞ……ダッシュガイで《魔鏡の式神-左京》を、ダイヤモンドガイで《魔鏡の式神-右京》を、ダンクガイで守備表示の《魔鏡の式神-左京》を、それぞれ攻撃する!」

「くあああっ!」

美寿知&美寿知(鏡)LP3600→1500

 エドのD-HEROたちにはドレッドガイの効果による破壊耐性があり、美寿知のリバースカードであった《聖なる結界-ミラー・バインド》は意味をなさなかった今、美寿知にはD-HEROたちの猛攻を防ぐ術は何もなく。
結果的には、モンスターは何も残らず美寿知のモンスターは全滅した。

「くっ……だが《月輪鏡》には破壊されたモンスターの数、つまり4つカウンターが乗る」

 またもや怪しい鏡に式神の魂が吸い込まれていく……明らかに良い雰囲気ではないので、あれも気に留めておかねばなるまい。

「バトルフェイズを終了し、ダイヤモンドガイのエフェクト、ハードネス・アイを発動! デッキトップを確認する……通常魔法《デステニー・ドロー》だ、よってセメタリーに送る。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 ドローする苦々しげな美寿知の表情から、今は俺のタッグパートナーとして横にいるエド・フェニックスの強さを再確認する……プロというのは、伊達じゃないということを。

「私は《銀の式神-左京》を守備表示で召喚する。効果により《銀の式神-右京》を守備表示で特殊召喚し、更にその効果で《銀の式神-左京》を守備表示で特殊召喚し、その効果で《銀の式神-右京》を守備表示で特殊召喚!」

 この前のターンでエドはD-HEROたちの大量展開をやってみせたが、元々大量展開ならば【式神】の十八番……もうデュエルも中盤ということも手伝い、充分以上に墓地も肥えている。

「《銀の反閇-ミラー・コール》を発動! 左京と右京がいる時、墓地からトラップカードを手札に加える。私が加えるのは《聖なる結界-ミラー・バインド》!」

 いとも簡単に、このデュエルモンスターズで難しいとされているトラップカードの再利用を二体の式神がやってのける。
それもサルベージされたのは、右京と左京がいる時に攻撃モンスターを破壊する、厄介なトラップカード《聖なる結界-ミラー・バインド》だ。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 さて美寿知のフィールドに伏せられている三枚のカードの内、先程伏せた二枚のカード、一枚は恐らくは《聖なる結界-ミラー・バインド》であるだろうが、俺の手札には魔法・罠破壊のカードはなく、先のターンを凌いだドレッドガイもその効果を失っている。

「ダイヤモンドガイの効果により、墓地の《デステニー・ドロー》を発動し二枚ドロー!」

 ……正直、今のドローで魔法・罠破壊カードが欲しかったところではあるが、そんなに上手くいくものではない……どっちにしろ、攻撃はするが。

「《レスキュー・ウォリアー》を召喚し、バトル!」

レスキュー・ウォリアー
ATK1600
DEF1700

 とりあえず、先程引いた消防士のような機械戦士を召喚し、バトルに入る。

「ダイヤモンドガイで《銀の式神-右京》に攻撃! ダイヤモンド・ブロー!」

「《聖なる結界-ミラー・バインド》を発動! 攻撃してきたダイヤモンドガイを、そして破壊したモンスターの攻撃力以下のダンクガイを破壊する!」

 左京と右京がいなければ発動出来ない為か、早くも《聖なる結界-ミラー・バインド》を発動され、ダイヤモンドガイとダンクガイが破壊される。

「ならばエドのリバースカード、《デステニー・ミラージュ》を発動! D-HEROが破壊された時、破壊されたD-HEROを特殊召喚する!」

 破壊されたそのままの状態で舞い戻る、ダイヤモンドガイにダンクガイ……これで少しは、心置きなく攻撃出来るというものだ。

「ダンクガイで《銀の式神-右京》に攻撃! パワー・ダンク!」

 美寿知のフィールドの式神たちは全て守備表示であるため、当然ダメージは通らないが、リバースカードが反応しなかったことから、あっても単体除去のトラップカードだと予想する。

「更に、ダイヤモンドガイで《銀の式神-右京》に攻撃! ダイヤモンド・ブロー!」

「リバースカード、《ミラー・トラップ》を発動! このターン使ったトラップをセットし直し、再び発動出来る!」

 銀の式神-右京に向かって攻撃を仕掛けようとしていたダイヤモンドガイの前に、大きめの鏡が立ちはだかり……その中から、更に鏡が現れた。
《ミラー・トラップ》の効果に照らし合わせれば、あの鏡は《聖なる結界-ミラー・バインド》……!

「《デステニー・ミラージュ》だけでは甘かったな! 《聖なる結界-ミラー・バインド》を発動!」

 鏡がダイヤモンドガイとダンクガイを巻き込み、デステニー・ミラージュの効果で復活する前のように、再び二体とも破壊されることとなった。

「くっ……レスキュー・ウォリアーで《銀の式神-右京》を攻撃する!」

 レスキュー・ウォリアーが背負ったポンプから水を放射し、銀の式神-右京を破壊する。
……リバースカードは残り一枚、もうモンスター破壊系はない可能性が高い。

「ダッシュガイとドレッドガイで、二体の《銀の式神-左京》を攻撃!」

 D-HEROたちが《銀の式神-左京》を蹴散らすが、守備表示の式神に阻まれたせいで肝心の美寿知には届かない。

「更に破壊されたモンスターの数、《月輪鏡》にカウンターが四つ溜まる」

 今まではただ、式神の魂が鏡に吸い込まれていっただけだったが、今回の魂を吸い込んだ時に《月輪鏡》の反応が変わり、巨大な鏡が自ら発光し始める。


「ダッシュガイは守備表示になる……カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー……《強欲な壷》を発動し、二枚ドロー!」

 万能なドローソースとなるカードである強欲な壷が現れては破壊され、美寿知が二枚ドローする。
……あの美寿知は、最初に《苦渋の選択》を使用した方の美寿知であり、怪しい光を放ち続ける《月輪鏡》と、そのまだ見ぬ切り札らしきカードに自然と身構えてしまう。

「私は魔法カード《死者蘇生》を発動! 《銀の式神-左京》を特殊召喚する! そして、その効果によって《銀の式神-右京》を召喚!」

 再び現れる美寿知の主力モンスターであるが、何故かその数は二体で止まる……今ならば、四体まで式神を展開出来るはずなのに。

「更に、私は《銀の式神-右京》と《銀の式神-左京》をリリースすることで、《闇の神-ダーク・ゴッド》をアドバンス召喚するっ!」

闇の神-ダーク・ゴッド
ATK3000
DEF1000

 式神二体を喰らいながら現れたのは、今までの美寿知の『鏡』をイメージした【式神】とは全く違ったイメージの、黒い色をした一つ目の巨人だった。

「そして永続魔法《月輪鏡》の効果を発動! カウンターが十個以上乗ったこのカードを墓地に送ることにより、デッキからフィールド魔法《無限の降魔鏡》を発動する!」

 式神たちの魂を溜めきった月輪鏡がパリンと大きな音をたてながら割れ、代わりに新たに発動されたフィールド魔法《無限の降魔鏡》の効果が発動したのか、俺たちがいる周りになんだか形容しがたい雰囲気が漂い始めた。

「《無限の降魔鏡》の効果は、私のフィールドに《闇の神-ダーク・ゴッド》がいる時、空いているモンスターゾーン全てに同じステータス・効果を持った《ダーク・ゴッド・トークン》を可能な限り特殊召喚する!」

 式神の特殊召喚をしない理由に合点がいったのと同時に、今のこの状況について考え直す。
今、闇の神-ダーク・ゴッドと同じ姿形をした《ダーク・ゴッド・トークン》が四体特殊召喚され、それぞれの攻撃力は3000……攻撃力3000がフィールドに、五体……! しかも一体一体が《闇の神-ダーク・ゴッド》と同じ、何らかの効果を持ったことを、美寿知は示唆している。

「バトル! ダーク・ゴッド・トークンで、ダッシュガイを攻撃! ダーク・ゴッドが相手モンスターを破壊した時、700ポイントのダメージを与える!」

遊矢&エドLP7200→6500

 ダッシュガイは自身の効果で守備表示となっているため、俺たちに戦闘ダメージは通らない……だが今までは、エドのフィールド魔法《幽獄の時計塔》の効果もあって大ダメージは防いできたが、これはまずい……!

「更にダーク・ゴッド・トークンで、攻撃力が0になったドレッドガイに攻撃! 更に破壊した時の700ダメージも受けてもらおう!」

「ぐあああっ!」

遊矢&エドLP6500→2800

 ドレッドガイは他にD-HEROがいないため、今の攻撃力は0……ダイレクトアタックと同じぐらいの、かなりの大ダメージを負ってしまう。

「これで最後だ! ダーク・ゴッド・トークンでレスキュー・ウォリアーに攻撃!」

「レスキュー・ウォリアーは、自身への戦闘ダメージを0にする!」

 レスキュー・ウォリアーがやられ際に、自身のポンプから水を発射すると、円上に広がり俺たちを守る盾となったが、効果ダメージまでは防げず俺たちにダーク・ゴッド・トークンの爪が襲いかかる。

遊矢&エドLP2800→2100

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 ……ダイレクトアタックをしてこない? まだ本体も含めて二体いるのにも関わらず、不自然なタイミングのターンエンドに、闇の神-ダーク・ゴッドには何らかのデメリット効果があると予想される。

「僕のターン、ドロー! セメタリーのダッシュガイの効果発動! 僕は今ドローした、《D-HERO ディアボリックガイ》を特殊召喚する!」

D-HERO ディアボリックガイ
ATK800
DEF800

 墓地にある時、ドローしたモンスターを特殊召喚するというダッシュガイの効果を使って特殊召喚されたのは、レベルはダッシュガイと同じだが、ステータスは下級以下というD-HERO……エドは何を狙っているのだろうか。

「《戦士の生還》を発動し、セメタリーからダッシュガイを手札に! そしてディアボリックガイをリリースし、《D-HERO ダッシュガイ》をアドバンス召喚!」

 先のターン、ダーク・ゴッド・トークンに破壊されたダッシュガイが、再びフィールドに召喚される。
闇の神-ダーク・ゴッドの攻撃力は3000のため、ダッシュガイの効果を使えれば、確かに破壊することは出来るかもしれないが……

「更に、セメタリーのディアボリックガイのエフェクト発動! このカードを除外することで、デッキから新たな《D-HERO ディアボリックガイ》を特殊召喚する! カモン、ディアボリックガイ!」

 なるほど、ディアボリックガイのあのレベル不相応なステータスの秘密は、この優秀な効果があるからだろう……更に、これでダッシュガイの効果も活用出来るようになる。

「ダッシュガイのエフェクトでディアボリックガイをセメタリーに送り、ダッシュガイの攻撃力を1000ポイントアップさせ、バトル! ダッシュガイで闇の神-ダーク・ゴッドに攻撃! ライトニング・ストライク!」

 相も変わらずあのダークヒーロー然とした姿が、どこがライトニングなのかは解らないが、とにかくダッシュガイの攻撃がダーク・ゴッドを貫く……はずだった。

「残念だが、闇の神-ダーク・ゴッドには戦闘破壊耐性がある」

「くっ……だが、戦闘ダメージは受けてもらう」

 その戦闘ダメージもたかが100ポイント、美寿知のライフはもう残り少ないとはいえ、エドの攻撃は失敗に終わったと言って良いだろう。

美寿知&美寿知(鏡)LP1500→1400

「ダッシュガイはエフェクトにより守備表示となる。カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 ダッシュガイは自身の効果によって守備表示であり、美寿知のダーク・ゴッドたちは俺たちにダイレクトアタックは出来ない……このターンは、700ダメージだけで済むだろうか。

「バトル! ダーク・ゴッド・トークンで、ダッシュガイに攻撃!」

 容易くダッシュガイは破壊され、その強靭な腕が俺たちにも襲いかかってライフを削り、美寿知と俺たちのライフが並ぶ。

遊矢&エドLP2100→1400

「更に《禁じられた聖杯》を発動! 《闇の神-ダーク・ゴット》の効果を無効にし、そなたらにダイレクトアタックだ!」

「エフェクトの打ち消し程度読んでいる。リバースカード《D-フォーチュン》を発動! 墓地のダイヤモンドガイを除外し、バトルフェイズを終了させる!」

 《禁じられた聖杯》によって効果が打ち消されたダーク・ゴッド・トークンが、ダッシュガイを破壊した腕をそのまま俺たちに向けてくるが、エドの墓地から飛びだしたダイヤモンドガイに阻まれた。

「カードを一枚伏せ、ターンを終了する!」

 これで美寿知のフィールドには《闇の神-ダーク・ゴッド》にトークンが四体、フィールド魔法《無限の降魔鏡》にリバースカードが二枚。
対するこちらは、俺とエドのリバースカードが二枚ずつ、モンスターはいない。

「遊矢。お膳立てはしてやった……お前が決めろ」

「ああ。俺のターン、ドロー!」

 意気揚々と引いたカードは、チューナーモンスターであり《ロード・シンクロン》……ダッシュガイの効果を使わせてもらう!

「墓地のダッシュガイの効果発動! チューナーモンスター《ロード・シンクロン》を特殊召喚!」

ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800

 金色のロードローラーを模したチューナーモンスターを特殊召喚し、シンクロ召喚に繋げるために更にモンスターを召喚する。

「《チューニング・サポーター》を召喚し、《機械複製術》を発動! 増殖せよ、チューニング・サポーター!」

チューニング・サポーター
ATK300
DEF100

 召喚して即座に増殖させられる、中華鍋を逆に被ったような機械族モンスター……このモンスターの登場により、俺が狙っていたモンスターのシンクロ召喚が可能となった!

「レベル1のチューニング・サポーター二体に、レベル2となったチューニング・サポーターと、レベル4のロード・シンクロンをチューニング!」

 合計レベルは8……まあ、ロード・シンクロンが本来のレベル4のままでシンクロ召喚に使える時点で、なにをシンクロ召喚するかは決まっているようなものだが。

「集いし希望が新たな地平へいざなう。光さす道となれ!シンクロ召喚!駆け抜けろ、《ロード・ウォリアー》!」

ロード・ウォリアー
ATK3000
DEF1500

 フィールドに降り立った金色の機械戦士……その効果とステータス、そして名前が示すように、名実ともに機械戦士たちの王とも言える存在のモンスターだ。

 しかも、シンクロ素材となったチューニング・サポーター三体の効果によって、三枚のカードをドローする。

「シンクロ召喚をしようが、攻撃力3000では《闇の神-ダーク・ゴッド》には適わぬ!」

「ロード・ウォリアーだけで突破しようなんて思っちゃいないさ。ロード・ウォリアーの効果を使用し、デッキから《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」

『トアアアアッ!』

 ロード・ウォリアーが背中に差してあった剣のようなものからを振りかざして光をだすと、その光の道からマイフェイバリットカードが現れる。

「更に《シンクロ・チェンジ》を発動! シンクロモンスターを除外し、同レベルのシンクロモンスターを、効果を無効にしエクストラデッキから特殊召喚する! ロード・ウォリアーを除外し、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を特殊召喚!」

 ロード・ウォリアーが時空の穴のような物に吸い込まれていき、代わりに現れる黄色の龍――ライフ・ストリーム・ドラゴン。

 効果が無効にされているうえに、シンクロ召喚でなく特殊召喚のためにライフ・ストリーム・ドラゴンの効果は発動しない……だが、今回はそれで充分だ。

「……わざわざ攻撃力を下げたようにしか見えぬが?」

「いいや上がるさ。《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! フィールドの《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と、墓地の《スピード・ウォリアー》の力を一つに! 融合召喚! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

波動竜騎士 ドラゴエクィテス
ATK3200
DEF2000

 デュエルキング親子の店《亀のゲーム屋》で貰うこととなった竜騎士が槍を振りかざして俺とエドの前に降り立つ。

「さらにリバースカード《リミット・リバース》を発動し、《ニトロ・シンクロン》を特殊召喚! そしてレベル2のスピード・ウォリアーとレベル2のニトロ・シンクロンでチューニング!」

 二度目の出番となる《ニトロ・シンクロン》だったが、一度目と変わらず元気にメーターを回し、振り切れて光の輪になりシンクロ召喚の準備が完了した。

「集いし願いが、勝利を掴む腕となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」

アームズ・エイド
ATK1800
DEF1600

 火力の底上げを狙うために、シンクロ召喚された機械戦士の補助兵装《アームズ・エイド》。

「アームズ・エイドの効果発動! ドラゴエクィテスに装備させる!」

 ドラゴエクィテスが自身の得物である槍を大地に突き刺し、腕にアームズ・エイドが装備された後にまた槍を持つ。

「攻撃力4200……!? だが、まだ……」

「ああまだだな。装備魔法《D・D・R》を発動! 手札を一枚捨て、除外されていた《ロード・ウォリアー》を特殊召喚!」

 吸い込まれていった時空の穴からロード・ウォリアーが帰還し、これで全ての準備は完了した。

「バトル! 波動竜騎士 ドラゴエクィテスで、闇の神-ダーク・ゴッドに攻撃! パワーギア・ジャベリン!」

 アームズ・エイドの力も借りて、ドラゴエクィテスが天高くからダーク・ゴッドに向け槍を投げる……だが、その前に鏡の居城が立ちはだかった。

「リバースカード《銀幕の鏡壁》! 相手モンスターの攻撃力を半分にする! 返り討ちにせよ闇の神-ダーク・ゴッド!」

 ドラゴエクィテスは鏡に映っていた自身を射抜いてしまい、攻撃力は半分に下がる。

「ならば速攻魔法《サイクロン》! ……ただし、破壊するのは俺の《D・D・R》!」

「なっ!?」

 てっきり自身の《銀幕の鏡壁》が破壊されると思ったのだろう、美寿知は驚愕に包まれた顔で俺を見て、俺のフィールドのロード・ウォリアーは《D・D・R》が破壊されたことで同様に破壊される。

「何を考えているのだ……!?」

「こう考えているのさ。リバースカード《ディフェンド・ウォリアー》を発動! 『ウォリアー』と名の付いたカードが破壊された時、破壊されたモンスターの攻撃力分、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる! 俺は闇の神-ダーク・ゴッドの攻撃力を、破壊されたロード・ウォリアーの攻撃力分ダウンさせる!」

 破壊されたロード・ウォリアーの攻撃力は3000で、闇の神-ダーク・ゴッドの攻撃力は3000……位は多いが、小学校でも出来る簡単な計算だ。
《銀幕の鏡壁》があってドラゴエクィテスの攻撃力が半減しようとも、美寿知のライフは削りきれる。

「まだ負けぬ! チェーンして《デストラクト・ポーション》を発動し、ダーク・ゴッド・トークンを破壊して3000のライフを回復する!」

 ドラゴエクィテスの攻撃美寿知に合わせて、伏せてあった《デストラクト・ポーション》によりライフを回復されてしまったためにトドメには至らない。

美寿知&美寿知(鏡)LP4400→2300

「ふふ……残念だったな」

「いや、終わりさ。このターンで」

 言ったのは俺ではなくエドだが、確かにエドが繋げてくれたカードによって、このターンで決着がつくだろう。

「エドのリバースカード《異次元からの帰還》を発動! ライフを半分にし、除外されているモンスターを特殊召喚する! 来い、《ニトロ・ウォリアー》! 《D-HERO ダイヤモンドガイ》! 《D-HERO ディアボリックガイ》! そして、《スピード・ウォリアー》!」

 最大で五体ものモンスターを展開する、切り札となり得る爆発力を持ったカードである《異次元からの帰還》により、除外されていたモンスターが特殊召喚される。
《銀幕の鏡壁》は健在のため、攻撃力は半分になってしまうが……美寿知にトドメを刺すだけであれば、充分である。

「ダイヤモンドガイで闇の神-ダーク・ゴッドに攻撃! ダイヤモンド・ブロー!」

「く……」

美寿知&美寿知(鏡)LP2300→1600

 もはや美寿知のフィールドにリバースカードはないため、この攻撃を防ぐ方法はない。
《クリボー》などがあれば話は別だが、それならば《デストラクト・ポーション》より優先して使うだろうと思うので、それもないだろう。

「さらにニトロ・ウォリアーで攻撃! ダイナマイト・ナックル!」

「くあっ……!」

美寿知&美寿知(鏡)LP1600→200

 それに加えて、闇の神-ダーク・ゴッドには戦闘破壊耐性があるために、攻撃力が0の時に攻撃されようが、戦闘によっては破壊されない。

「トドメだ! スピード・ウォリアーでダイレクトアタック! ソニック・エッジ!」

「あああああああっ!」

美寿知&美寿知(鏡)LP200→0

 マイフェイバリットカード、スピード・ウォリアーの一撃でデュエルは終結し、鏡で分けられていた美寿知は一つの肉体に戻った。

「勝ったんだ……約束通り答えてもらうぞ、美寿知!」

 勝利の余韻味わうのもほどほどに、デュエルをした目的である斉王のことを聞くために、俺は一歩美寿知の元へ踏みだした。

「もちろんわかっておる……しかし、兄を救う資質を持った者が四人もおるとは幸先がよい」

 だからその兄を救う資質というのは何なんだ、と聞こうとしたその時、このバーチャル空間全土にノイズが走った。

「美寿知……なんだこれは!?」

 俺の横にいたエドもノイズに包まれている……いや、エドだけではなく俺と美寿知もだ。

「これは……外部から強制的にログアウトされようとしている!」

 ログアウト……つまり、このバーチャル空間から現実世界に帰れるということか。
だが、他の場所の三沢に十代の安否を確認せねば……

 だがその前に、エドや十代、三沢がログインしてきた時と同じく閃光がほとばしり、俺たちの意識はバーチャル空間から離れていった。
 
 

 
後書き
特殊召喚したモンスターの数は何体になるだろう……お前ら全員大量展開しすぎだ。

それに、前書きでも書きましたが一話が長すぎましたね。
前後編にしても良かったのですが、まあ、一周年ということでそれぐらいはお見逃し頂ければと存じます。

※一周年については『つぶやき』参照

では、これからもよろしくお願いします。

感想・アドバイス待っています。 
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