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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第二十五話~再会~

 
前書き
先日気付いたのですが、総合評価が1000を超えていました。
これも作品を読んでくださっている皆さんのおかげです。ありがとうございますm(_ _)m

今回はあのキャラが登場です。
 

 

機動六課・隊長室


 なのは達が出動から帰還し夜も深まった頃、ここ隊長室ではやてに詰め寄る2人の人物がいた。

フェイト「はやて!どういうこと?!」

なのは「納得のいく説明してくれるよね?」

 なのはとフェイトの2人は冷静ではいられないと言外に主張するように声を出す。

はやて「こっちも今はなんとか上には報告せんまま、仲間内の話で押し留めとるんや。そ
れにあの子らの主張も間違ってないんや。」

 詰め寄られているはやて自身も納得していない表情でそう口にする。この3人が話しているのはライのことについてである。

フェイト「でも、ライを拘束なんて!」

 フェイトが言った通り、ライは拘束され今は営倉に入れられているのだ。
事の起こりはなのは達が帰還し、ヘリからおりた時である。そこに待機していた機動六課の局員数名が降りてきたライを拘束したのである。
 ライが出動の前に感じた空気はライを不審に思う局員が向ける警戒心から来たものであった。
なぜならライは敵が使用するナイトメアフレームを知っているがその情報は出現してからしか提供しない。さらに自分達の知らない技術を持っている。そして極めつけはその卓越した戦闘力である。
 これまでのライの認識としては魔法の経験は浅いが陸戦魔法士としては優れた能力を持っている程度のものであった。それだけであったのならライを不審に思っていた局員もそこまで警戒しなかった。しかし模擬戦でライがなのはに圧倒したことにより局員の不安はピークに達した。
 それまではたとえどれだけ強くとも隊長の誰かがいれば、ライがもし敵対しても大丈夫と考えていた。しかしそれを真っ向から否定するようにライはなのはをリミッター付きとはいえ倒してしまった。だからライは恐れられたのだ。
 その結果、時空管理局局員の権限でライを危険人物とみなし拘束したのだ。

なのは「ライ君は確かに保護観察になっているけど、これまでの功績もあるのに拘束するの?」

はやて「その結果だけなら誰も文句は言いひんよ。でも……」

なのは「?」

 なのははそこで何故はやてが口ごもるのか分からなかった。だがある程度事情を知っているフェイトは察した。『隠しとることが多すぎる』そう言おうとしたのだろうと。

蒼月「少しよろしいですか?」

 そこに蒼月の声が響いた。発信源はなのはの上着のポケットから。なのははポケットから拘束したときにライから預かった蒼月とパラディンを取り出した。

なのは「どうしたの?」

蒼月「マスターは先ほどの出動をして戦闘が終了した際に『全て話そうと思う』といっていました。」

フェイト・はやて「「!」」

なのは「全て?それって……」

蒼月「デバイスの私が言えるのはここまでです。」

なのは「フェイトちゃん?はやてちゃん?」

はやて「………あんな、なのはちゃん。実は……」

 そしてはやてはなのはに自分達の知るライについて話し始めたのであった。



機動六課・営倉


 ここ機動六課の営巣施設は決して大きくはない。なぜなら機動六課の活動目的はロストロギアの捜索、回収が主だからだ。なので営巣の部屋数も多くなく4部屋しかない。
 その数少ない部屋の1つにライの姿はあった。
 今ライは備え付けのベッドに腰掛け目を閉じ、両手を合わせ足に肘をつき、手を額に軽く当てまるで何かに祈るようなポーズをしていた。
 その両手にはこちらの世界に来た時に持っていた桜の折り紙を握っていた。これはこちらの世界に来てからライが時々していることであった。

ライ(全てを明かさなかったから信用を失ったのか……ルルーシュと同じだな。)

 思い出すのはルルーシュが黒の騎士団に裏切られたときの事。今の自分の状況を考えてライはそのことを思い出していた。
 しかしそれも続かない。

ライ「ぐっ!!」

思考の海に浸かろうとした瞬間、頭痛が走ったのだ。その痛みはこの世界に来て二度目の経験。一度目はこの世界に来てすぐ感じたものである。だが今回はその時と違いすぐにその痛みは収まる。

???(おや?なかなか面白い状況のようだな。)

痛みが引くと同時に頭に声が響く。それは念話とは違うもの。そしてその声はライにとって聞きなれた声であった。

ライ(……C.C.…久しぶり……なのか?)

C.C.(なんだ、もっと驚くかと思ったのにな。つまらん。)

 その声の主はかつての共犯者。そしてある意味ライを導いた存在。不老不死の魔女C.C.であった。

ライ(あの頭痛はあの時Cの世界で感じたものと一緒だった。だから繋げたんだろう?Cの世界を通じて僕の意識と。)

C.C.(説明の手間が省けたよ。……で?)

ライ(………何だ?)

C.C.(異世界にたどり着いたのだろう。何があったんだ?)

ライ(それは……)

C.C.(見たところそこは檻のようだが……とうとう結婚詐欺でもして捕まったか?)

ライ(……)

 自分の冗談に乗ってこないライを不審に思いC.C.は真面目な口調で尋ねた。

C.C.(何があった?)

ライ(C.C.……頼みがある。)

C.C.(言ってみろ。)

ライ(僕が元の世界で何をしたのかをある人たちに見せたい。……できるか?)

 ライはCの世界で他人の持つ過去を見ることができるのを思い出し尋ねた。

C.C.(………できる、できないで言えばできる。だがいいのか?)

 C.C.の声のトーンが少し下がる。それはライの抱えたものがどれだけのものか知っているからこそ彼を心配するような声。

ライ(構わない。)

C.C.(……見せたい相手を集めてから強く念じろ。後はこちらがやってやる。)

ライ(ありがとう。)

 そこでC.C.の声は途切れた。本当はもっと聞きたいことがあった。確かめたいことがあった。だがそれはこちらの世界で生きる自分の覚悟を覆すものだ。その為ライはあえて聞かなかったのだ。
C.C.もそれを察していたのかそのことについては触れてはこなかった。そのことにライは内心で感謝した。
 ライが一息つくと同時に営巣の出入り口が開かれる扉の音が響いた。そちらの方に視線を向けると、そこに立っていたのははやてとフェイト。さらにフェイトの手には蒼月とパラディンが握られていた。
 はやてとフェイトは真剣な表情でライの入っている檻の前に立つと話始めた。

はやて「……蒼月が教えてくれた。全部話してくれるって。」

ライ「……」

フェイト「私たちもライのことは知りたい。だから……」

ライ「僕のことを知りたい人を集めてもらえるか?」

はやて「それはもうなのはちゃんがしとる。だから後はライを連れて行くだけや。」

ライ「分かった。」

 そしてライは営巣から出る。信頼し合いたい人たちが待つ場所へ。



機動六課・食堂


 いつもは賑やかなここ食堂には重い空気が漂っていた。ここには機動六課の局員のほとんどが揃っていた。だが何十人もいるわけではない。元々人が少ないため大体三十人に満たない程度の人数である。
 その中にはフォワードのスタッフはもちろん、ロングアーチスタッフやシャマルやザフィーラなどのその他のスタッフ。その中にはライを拘束した局員もいる。
 空気が重い原因は意見の対立からきていた。ライを仲間と思っていたメンバーはライの拘束に不満を持ち、拘束したメンバーはライの危険性を分かってもらえないことに不満を覚えていた。
 口論から対立にまで発展しそうになった時に食堂にはやて、フェイト、ライの3人が入ってきた。
 一同はライに視線を集める。それを感じながらもライは全く怯まずに集まったメンバーの前に立つ。

ライ「……まず最初に今まで何も言わなかったことを謝罪します。」

 そう言うと頭を下げるライ。そのことにそこに集まっていた皆はライの行動に驚いたのか唖然としている。
 頭を上げたライは言葉を続ける。

ライ「聞きたいことは沢山あると思う。だから聞きたいことを言ってください。」

 そう言うと最初に皆が頭に浮かべたのは「お前は何者なのか?」というものである。だがいきなりそれを聞けるほど無遠慮ではなかったのかエリオが手を上げて遠慮がちに尋ねた。

エリオ「あの……模擬戦の時に使ったなのはさんの砲撃を裂いた魔法は何ですか?それにライさんは飛行魔法もカートリッジシステムも使えないんじゃなかったんですか?」

ライ「模擬戦で使った魔法は圧縮魔法。ただ魔力を収束するだけじゃなくて、収束した魔力をさらに小型高密度にして弾丸として生成したものだよ。」

キャロ「そんなことができるんですか?」

ライ「理論だけなら既に存在していたものだから。ただ使用するのにデバイスがその圧力に耐えられないから実用化されなかった。だから、問題になっていた圧縮時のデバイスの負荷についての問題をフレームを強化することで解決して実用可能にした。」

 元々ヴァリスは弾薬の反発を制御できる機構が組み込まれている。それを応用することでライはフレームにかかる負荷を制御できないかと考えたのだ。結果的にそれは功を奏し圧縮魔法の使用を可能にした。
 続いて飛行魔法とカートリッジシステムの説明も行う。それを聞いてライの演算能力の緻密さを知って何人かが息を飲んでいた。

シグナム「飛行する際にカートリッジを消費していたのは何故だ?デバイスが演算についてこられるならわざわざカートリッジを消費する必要はないはずだ。」

ライ「僕の魔力量は確かに平均よりも高いですが隊長達と比べると明らかに少ないです。」

シグナム「?」

ライ「飛行魔法の際に背中に展開していた翼。あれはエナジーウイングといいます。だけどあれはあるものを参考に開発をしていたのだけどわかります?」

そこで一同は首を傾げる。だが心当たりのあるなのははつぶやくように答える。

なのは「レイジングハートのACS?」

 なのはの言葉にライは頷き、それ以外のメンバーはハッとしたような表情になる。

ライ「もちろん、ところどころ差異はあります。だけど基本部分はそれを参考にしました。だけどあれは使用者の保有魔力が高いことが前提条件としてあります。もし僕がその魔力を自身の物のみで行った場合、即魔力切れを起こします。」

シグナム「そのためのカートリッジか。」

ライ「はい。ちなみ通常機動なら一発で約五分間。戦闘機動なら約二分が限界です。」

シグナム「なら次の質問だ。高町の魔法がすり抜けたのは何故だ?」

 それはシグナムも模擬戦の映像を見て知っていた。だが何度見てもなぜ弾丸がすり抜けたのか分からずにいた。ライは答えようとするがライより先に答える声があった。

蒼月「マスターは細かい機動で避けていただけです。」

シグナム「なんだと?」

 蒼月のその発言に納得がいかなかったのかシグナムは怪訝な顔をする。それは同じだったのか似たような表情をする人間は多かった。

蒼月「事実です。最小の動きだけで回避し元の位置に戻る。それを繰り返していただけです。もちろんそれはパラディンの翼があってこそできるものですが。」

パラディン「飛行時の入力のログは残っています。それによると秒間で十数回の入力をしています。」

 蒼月とパラディンの説明に一同は開いた口が塞がらないといった表情を浮かべていた。
 呆然としている一同を見ていたライは一度咳払いをする。それで正気に戻った一同は再びライに視線を向ける。

ライ「模擬戦の質問はこれで終わりかな。次は―――」

 次の質問を促そうと言葉を続けようとしたがライはそこで気付く。そこにいるライ以外の全員がライに何者なのかと視線で尋ねているのだ。

ライ「……次は僕の過去について話そうと思う。」

 その言葉を待っていたかのように一同は反応する。

ライ「まず、僕が第97管理外世界出身の学生と言われているけどそれは嘘だ。実際は第97管理外世界と似ている平行世界から来た。」

 ライの言葉に驚く人は多かった。ただの学生ではないことは予測していたがまさか平行世界から来ているとは思わなかったのだ。

ライ「僕がナイトメアの情報に詳しかったり、デバイスの開発に使っていた技術は全て向こうの世界で実用化されていたからだ。」

 その説明で一番納得できたのはシャリオである。見たことのない技術なのは当たり前だ。元々こちらの世界には存在しないのだから。

ライ「そして僕が向こうの世界で何をしてきたのかこれから“見せる”」

 その言葉に何人かは首を傾げる。ライは「話す」ではなく、「見せる」と言ったのだ。それは何か視覚情報を与えるということ。しかしライは今映像媒体もデバイスも持っていない。(蒼月とパラディンは現在もフェイトが持っている。)

ライ「これから見せるのは元の世界の魔法に準ずるものと思ってくれ。」

 それだけ言うとライは目を閉じてはっきりと感じるわけではないがその存在に語りかけた。

ライ(C.C.、頼む。)

C.C.(……本当にいいんだな?)

ライ(ああ、でないと僕はここから進めない。)

C.C.(……分かった。)

 C.C.が了承の言葉をライに送ってから数秒後、食堂にいる一同は“何か”が体に当たるのを感じた。“それ”が体に当たるのを感じた瞬間皆の意識はミッドチルダとは異なる世界の歴史を垣間見ることとなる。


 
 

 
後書き
というわけで次回から過去話です。内容はできるだけ濃く、簡潔にやっていくつもりです。なるべく長引かせないようにしようと思っています。

リクエストにあったジェレミア卿が登場すると思ったみなさんごめんなさい。
登場予定がもともとあったC.C.を出しました。

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