Muv-Luv Alternative~一人のリンクス~
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帝国陸軍3
前書き
この帝国の話はかなりぐだってますね…オリジナルはきついです
「まさか…あれ程のものとはな」
場所は格納庫から移り、帝国内部のとある一室。
あの後月詠に気に入られたのかは分からないが、唯依中尉を引き連れ、月詠につれられるがままに付いて来た。
最初はこの後何か言われるんではないか、と思っていたが、シミュレーターから出てきた月詠はえらく清々しい表情をしており、俺の予想を良い意味で裏切ってくれた。その後も余り表情には出さなかったが、遠巻きにXM3の事を褒めてくれ、何時帝国の方に回ってくるのかなどの話にもなった。
つまり月詠はXM3の事を随分と評価してくれたと言う事だ。俺にとってはこの上ない結果を残せた。帝国の衛士達にもXM3の存在を知らせる事が出来、更にはその指揮官でもある月詠にもその性能を知らせる事が出来た。
これで横浜基地の皆も納得してくれるだろう。あの数日間の徹夜は相当きつかっただろうからな…。横浜基地に帰ったら直ぐにでも皆に知らせるとしよう。
「自分で言うのもなんですが、素晴らしい性能でしょう?このXM3を世界に普及させる事が出来れば間違いなく衛士の生存率は上がります」
「うむ。確かにその通りだろう。して、シルバ少佐は何故帝国の方に?」
「先も言いましたがXM3の性能を皆に知らせると同時に、XFJ計画に関する話をしにきました」
「XFJ計画?…ああ。あの不知火の性能を上げる為の計画か。詳しくは知らないが、其方の中尉殿がその担当か?」
「は、はい!恐れながら日本側の開発主任を任されております!」
「ほう。その年にして開発主任とは中々に才能があるのだな」
随分と年寄りくさい事を言う月詠だが、月詠本人も間違いなくまだ若いだろうに。それに自分とて指揮官と言う大役を任されていると言うのに…。
「いえ…そんな事は…」
しかし、このタイミングで唯依中尉の話に行くのは不味い。先程の事もあるので、唯依中尉はその手の話に関して少し敏感になっている可能性がある。話を逸らすか。
「今は唯依中尉の事は置いておきましょう。それで俺達を此処に呼んだ理由を聞かせてもらいたいのですが?」
「ん?いや、あのOSを持ってきた人間がどのような人間が知りたくてな。こうして落ち着いて話せる場を用意させてもらった。迷惑だったか?」
「いえ、そんな事はありません」
「そう言って貰えると助かる。それで一つ気になるのだが、先程言ったXFJ計画について話に来たのだろう?どんな事を?」
果たしてXFJ計画の移動について話して良いものか…。
少し会話を途切れさせ、目の前の月詠に話して良いものかを考える。XFJ計画自体は別に秘匿で行われているものではない。そして横浜基地から俺が来る事じたい月詠は知っていると言っていた。つまり上の人間は今回の話を既に知っていると思われる。
…なら特に話しても問題はないか?既にXM3を衛士に知らしめた俺が考えるのもなんだが…少しばかりは警戒心を残しておいても損はしないだろう。
「此度自分が持ってきたものはXM3だけですが、横浜基地は他にもフレームや骨格と言ったパーツの改良にも成功しています。それで今回はその改良に成功したパーツを用いて、進行が止まっていたXFJ計画を進めようと思ったのです」
「なる程…あのOSだけでなくフレームなども開発に成功したのか。中々興味が沸いてきた。今度其方に伺ってもいいだろうか?」
「構いませんが…其方の仕事は大丈夫なんですか?」
「確かに私は指揮官と言う立場だが其処まで縛られている訳ではない。それに指揮官ならば部下の事を考えて戦術機の視察を行うのも仕事だろう?」
「…上手いこと良いますね。ですが此方に来るのならその時は歓迎させてもらいます」
「有り難い。私も楽しみにしておくよ」
月詠が言った言葉が果たして社交辞令なのか、本心から言った言葉なのか、いまいち判断が難しかったが、取り合えず綺麗に収まった。
歓迎すると言う言葉は嘘ではない。指揮官にもなる人間が横浜基地に来ると言う事はそれだけ繋がりも増えると言う事。今回帝都に来たのは大成功だな。目的であるXFJ計画も何事もなく横浜基地に移動する事が出来そうであり、更に月詠とも知り合えた。これ以上の結果は望めない。
「話は変わるがあのシミュレーターの時に見せた機動。どうやったらあのような機動が取れる?」
と、そういった感じでこの後は暫くXM3に関する話が進み、そのまま数時間の時が流れた。
――――――――――
「長い間止めてすまなかった。久しぶりに良い物を見せてもらったよ」
「そう言ってもらえると此方も喜ばしい限りです。それでは」
既に時刻は夕刻に迫ってきており、帝都内から見える外の様子も段々と暗くなり始めている。
本当ならば今日中に横浜基地の方へ戻るつもりだったのだがな…予想外の事で時間を喰ってしまった。
「唯依中尉。すまなかった。XM3の操縦を教えられなかったな」
「い、いえ!私は気にしてませんので謝らなくても!」
「そうか…ありがとう。しかし今日はどうするか…この時間となると横浜基地から迎えは来れないだろうしな」
時刻は夕刻。横浜から帝都に来るにあたり掛かる時間は数時間。つまり此方に到着する頃には完全に日が落ちてしまっている。そうなってしまうと流石に危険が出てくるので容易に呼ぶことも出来ない。
「すいません…私がXM3を見たいといったばかりにこうなってしまって」
「唯依中尉が気にする事じゃない。それに元々XM3は此方の衛士に知らせるつもりだったからな。時間配分を考えなかった俺のミスだ」
俺の言葉を最後に会話が一度途切れる。唯依中尉もこれ以上の会話は不毛だと判断したのか、いまいあい納得のいかない表情をしていたが、それでもこれ以上口を開くことはなかった。
そのまま無言の空気が俺達の間を取り巻く。
行く当てもなく帝都の中を歩き回っているが、ふと唯依中尉の方を見ると何か俺の方を見て言いたそうな表情をしている事に気づく。
「どうした?何か言いたい事があるなら言ってくれ」
「え…それならお言葉に甘えて。今夜シルバ少佐が良ければ私の部屋を使いませんか?私は今日の夜やる事がありますので、今夜だけなら部屋が空いています」
「本当か?…だがいいのか?悪い気がするが」
「いえ!そんな事はありません。私の事はお気になさらず使ってください」
「そうか…なら使わせてもらう。すまないな。なら時間も遅くなってきたから案内してくれるか?」
「はい分かりました。此方です」
まさか唯依中尉の部屋を貸してもらえるとは思っていなかったが、これで今日はどうにかなりそうだ。唯依中尉に頼んで明日の午前中にでも迎えをよこすよう横浜基地の方に連絡を取ってもらおう。
…既に時間がない。
白銀の口から出たBETAの日本上陸の日まであと少し。その日までにどうにか戦術機に乗れるようになり、XM3も完成した。
香月は白銀の言葉を信じてくれたようだが、やはりBETAが日本に上陸するという決定的な証拠がない以上、帝都などの軍はそう簡単に動かせない。今回唯一動けるのは横浜基地で事情をしっている俺含め、香月の直接の部下達であるヴァルキリー隊のみ。
ストレイドを使う事が出来れば一番いいのだが…まだコジマ粒子も発見されておらず、ストレイド単機によるコジマ粒子汚染のレベルが分からない以上、あまり使いたくないのも事実だ。
一番の欲を言うならば不知火の強化型を全て取り揃えた状態で今回のBETA上陸を迎い撃ちたかったが、それは今更いっても仕方のないことだろう。寧ろこの数日間で横浜基地における戦力の増加はかなりのものの筈。これ以上の結果は望めまい。
「此方になります」
唯依中尉の声によってハッと我に返る。どうやら深く自分の思考に入り込んでしまったようだ。
「ありがとう。助かるよ」
「いえ、それでは私はXFJ計画の移動に関する手続きを手伝わないといけないので…これで失礼します」
「そうか…頑張ってくれ」
「はい。明日の明朝にまた来ますので。失礼します」
そう最後に残し、来た道を引き返して行く唯依中尉の背中が見えなくなるまで見届け、見えなくなった所で部屋の中に入った。
と言っても部屋の中には一見何もなく、少しの生活感がある部屋だ。
特にこれ以上やる事もないので、上に来ていた軍服を脱ぎ、椅子の上に放っておく。そのまま黒のシャツ一枚になった俺はベッドの上に身を投げる。短い時間だったが随分と濃密な時間を過ごした気がする。
XFJ計画の移動に月詠との出会い。そう言うと少ない気がしないでもないが、その二つの事項がこれから先の事を大きく変える事だと俺は思っている。少なくとも白銀は自分の記憶にこんな事は全くなかったと言っていた。この二つがこれから先をどう変えて行くかわからないが、少なくとも白銀の知っている未来が変わっているはずだ。
…しかし、それが恐怖にも成り得る。今は白銀のループ知識がある事によって有利に事を進めているが、未来が変わり、白銀の知っている未来じゃなくなった瞬間、俺達は先の事が全く分からなくなる。それが当然だといえば当然なのだが、やはり未来を知っているのと知っていないのじゃ大きな違いになる。
まぁ…今こんな事を考えても仕方がない。未来の事が分かる今のうちに打てる手は打っておくだけの話だ。
そう自分の中で簡単に纏め、俺はそのまま瞼を閉じた。
後書き
今回も短め。
帝都は編集の間に日が挟まってしまったので、相当ぐだっています。
誤字脱字などもかなり多いと思いますので、あった場合は報告してくれると助かります。
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