ヘタリア大帝国
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TURN57 頭を撃つその九
「だから打てる手は打ったのよ」
「ダグラス司令は外さざるを得ませんでしたが」
彼女達の権益の為だ、キャヌホークの言う通りだった。
「いいわね、敗れた場合は」
「その場合もすぐに講和しましょう」
「しかしテキサスもシカゴも守りを固めているんだ」
ルースはこのことを盾にした。
「それなら何としても勝つまでは」
「だからそれが出来ないのよ」
ハンナはまたルースに言った。
「あれは国民、そして日本へのデモンストレーションよ」
「まだ戦えるという」
「それ故にそうしているのよ」
「それはわかっているがね」
「とにかく打てる手は打っているわ」
また言うハンナだった。
「ガメリカの為にね」
「では講和も」
「そういうことよ。敗れたくはないけれど」
それでもだった。現実は。
「いざそうなれば」
「USJの後でも手を打ちたいのだがね」
ルースはあくまでそう考えていた。その彼にだった。
二人との話の後でカナダから来たという男が前に現れた。彼はというと。
「マンハッタン君かね」
「はい、カナダのノイマン研究所にいました」
見れば赤茶色の短い髪に眼鏡に白衣の青年だ。如何にも科学者といった外見がかえって印象的である。
その彼がこうルースに名乗ってきたのだ。
「ですがそこが閉鎖されまして」
「話は聞いているよ。表向きは農業関係だったそうだが」
「はい、実はです」
「そうだね。人造人間を開発していたね」
「軍事用に」
「ドロシー長官も思い切ったものを考えるものだ」
今は行方不明の彼女についても話される。
「早く戻って来て欲しいが」
「残念ですが今は」
「席は空けている。待っている」
ルースにとっては頼りになる閣僚の一人だ、だからこう言うのだ。
「だが君がここに来たのは」
「人造人間のデータは全て破棄されました」
「ではもう開発することはできないな」
「はい、しかし」
「しかし?」
「私の頭にある微かな記憶を使って」
そうしてだと。マンハッタンはルースに話す。
「面白いものを開発できますが」
「どんなものだね?」
「一人が幾つもの艦隊を自由自在に操れるシステムです」
「ほう、一人の人間が」
「どうでしょうか。これはかなりの兵器になると思いますが」
「面白い話だね」
ルースは真剣な面持ちになっていた。
そのうえでこうマンハッタンに対して言った。
「それではね」
「詳しくお話して頂けますか?」
「幸い兵器、艦艇は多くある」
ガメリカ軍はそれには困っていない。ルースにしても都合のいいことにだ。
「旧式も入れればそれこそかなりの数だ」
「その通りですね」
「戦える」
ルースは真剣な面持ちでマンハッタンに話す。
「充分にだ」
「そうですね。それでは」
「早速その計画を進めよう」
ルースにしてみれば渡りに舟だった。それ故に。
マンハッタンにその兵器を開発する計画を行わせた、彼は何としても敗戦したくはなかったのだ。己の為、そして自国の為にもだ。
彼はあらゆる手を考えていた、そうしていたのだ。
だがマンハッタンはその彼にこう言ったのである。
「ですが」
「ですが?何だね」
「はい、この兵器はすぐにもで開発できますが」
「なら問題はないね」
「かなり荒い兵器になると思うがいいでしょうか」
「ああ、構わないよ」
こう言うのだった。
「特にね」
「そうですか」
「開発を頼むよ」
ルースは特に考えることなく告げた。
「正直USJで負けても最後には勝ちたいんだよ」
「何としてもですね」
「そう、その為の切り札になるのなら是非開発してくれ」
ルースはこうマンハッタンに話す。そしてマンハッタンも科学者として己の開発が進められ実用化されるのなら願ったり適ったりだった。
それでこうルースに答えたのである。
「お任せ下さい」
「勝利の為には何でもしないとならない時もあるのだよ」
ルースにも意地があった。そしてその意地に基き彼とマンハッタンだけでその計画を密かに決定したのだった。
TURN57 完
2012・10・6
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