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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第56話

御坂美琴はある日、理事長に呼び出しを受けた。
理事長室に入って呼ばれた理由を聞く。

「実は今日から常盤台中学に一時編入する生徒が一人います。」

「一時編入ですか?」

「どうも上層部はレベルの低い能力者の能力を少しでも向上させたいのか、名門高校、名門中学に一時的に編入させてその学校の時間割り(カリキュラム)を受けてもらい、レベルの向上を目的とした新しい試みです。」

「はぁ・・・」

理事長の説明を受けたが正直それは無駄なのでは?、と美琴は率直に思った。
美琴は超能力者(レベル5)で他の生徒とは別の特殊な時間割り(カリキュラム)を受けている。
そうでなくても自分達の学校の授業レベルは大方把握しており、レベルの低い能力者がついていけるとはとてもじゃないが思えない。
美琴の考えている事が分かったのか理事長も苦笑いを浮かべている。

「あなたの考えている事は大体分かります。
 ですが、上が決めた事ですから一応は従わないといけません。」

「それで私は呼ばれた理由はなんですか?」

「今日、その一時編入してくる生徒がやってきます。
 門で待ち合わせとの連絡が入っているのであなたが迎えに行ってあげてください。」

どうして自分なのか、と疑問に思う美琴だが理事長は美琴を呼んだ訳を説明する。

「あなたは他の方よりもコミュニケーション能力が高いと聞いております。
 どこの派閥にも入っていないのに親しい友人も多いとか。
 それを聞いて私はあなたを選びました。」

どうやら自分以外を選ぶ気はないようなので仕方なく受ける事にする。
美琴は失礼します、と言って部屋を出て行こうとするが再び理事長に話しかけられる。

「そうそう、相手の方は高校生ですのでしっかりとした敬語で話してくださいね。」

それを聞いた美琴はうっ、と言葉を失ったが何とか頑張ります、と言って部屋を出て行った。
部屋を出て少し溜息を吐く。
面倒くさい事になったと思う美琴だが理事長たっての頼み事なら断りにくい。
此処に案内するように言われているのでさっさと向かって此処まで案内しよう、と美琴は待ち合わせの門に向かう。
門の前についたがそれらしき生徒はどこにもいなかった。
一応、常盤台の生徒、それに相手は高校生という事は年上だ。
理事長の言うとおりちゃんと敬語で話さないと不味いだろう。

(でも、敬語って苦手なのよね。)

そんな事を思っている時だった。

「もしかしてあんたが待ち合わせの生徒か?」

後ろから突然、声をかけられた。
この口ぶりからするに一時編入してくる生徒の可能性が高い。
何とか爽やかな笑顔を作り、丁寧な言葉で返す。

「はい、大変お待ちして・・・・・」

そのまま振り返り、その生徒の顔を見て美琴の表情が凍りついた。
声をかけてきた生徒には見覚えがあった、嫌というほどに。

「何であんたが此処に居んのよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

麻生恭介の姿を確認した瞬間、敬語で話すという事など頭から吹っ飛んでいた。










美琴の叫び声に周りの生徒は何事かと視線を向けてくる。

「おい、うるさいぞ。」

「うるさいとか今はどうでも良いのよ!!
 何であんたが此処に居んのよ!?」

「何でって言われても俺がこの常盤台中学に一時編入するからだ。」

「へ?」

麻生の言葉を美琴はすぐに呑み込む事が出来なかった。

「ごめん、もう一度言ってくれる。」

「だから、今日から俺はこの常盤台中学に一時編入するからだ。
 何なら証拠を見せようか?」

大きなバックから編入について説明が書かれたプリントの入った封筒を取り出す。
それを見た美琴は麻生が言っている事が冗談でも何でもなく真実なのだという事が分かった。

「どうして・・・どうしてよりにもよってあんたなのよ・・・・」

嫌という訳ではないが何故か素直に喜ぶ事が出来ない。
麻生はそんな美琴の心情など気にせず話しかける。

「それで俺は今からどうすればいいんだ?」

「はぁ~~~~・・・・これから理事長の所まで案内するからついて来て。」

明らかにテンションが下がっているが美琴は麻生を理事長室まで案内する。
美琴に先導される形で常盤台の敷地に入る。
周りには今から学校に通う生徒がちらほら見えた。
常盤台の制服以外の制服を着た生徒も歩いている。
しかし、そこにいる全員は女子生徒だ。
彼女らは男である麻生が此処にいる事に驚き、ヒソヒソと聞こえない声で話し合っている。
麻生は気にすることなく周りを観察しながら美琴について行くと、美琴は此処について説明を始める。
此処は「学者の園」と呼ばれ、常盤台中学を含む五つのお嬢様学校が作る共用地帯だ。
敷地内には学校施設に加え居住区や実験施設、それに喫茶店や洋服店といった生活に必要な店舗も揃っているが、デパートやショッピングセンターのような大型店舗は存在しない「必要なものを必要なだけ詰め込んだ街」と美琴は説明する。
確かに此処は街という説明は正しいと麻生は思う。
バス停について、そこから常盤台中学に向かう。
だが、麻生はバスに乗った瞬間に動きが止まる。
なぜならバスの中には女性しかないからだ。
常盤台の制服を着ている女子生徒もいれば違う制服を着た女子生徒もいる。
皆が麻生がバスに乗り込んでいる事に驚き、騒がしくなる。
それを見かねた美琴は騒ぎを治める為に事情を説明する。

「みんな落ち着いて。
 彼は他校から常盤台中学に一時編入してくる人よ。
 この件は学校に着いてから先生の口から直接聞く事になると思うから説明はしないけど、常盤台の理事長の許可を得て来ているから問題はない筈よ。」

いや、色々問題はあるだろう、と麻生は思った。
しかし、いくら理事長の許可を得たと美琴の口から教えて貰ったとはいえ未だに周りは麻生の事を警戒している。
どこの馬の骨とも分からない自分を警戒して当然か、と麻生は考え美琴に話しかける。

「おい、俺は歩いて向かう。」

「何言ってんのよ、此処からだとまだ距離があるわ。
 バスを使わないと時間がかかるでしょ。」

「俺が乗ったら周りの奴に迷惑がかかる。
 お前は先に行って遅れると理事長さんに伝えてくれ。」

そう言って麻生はバスを降りる。

「ちょっと!!」

麻生が降りようとするが美琴に腕を掴まれてしまい、下りるタイミングを失いそのままドアが閉まる。
ため息を吐いて麻生は周りからの視線を感じながら、バックから本を取り出して立ち読みをする。
この本は前に桔梗が麻生にプレゼントしたものだ。
麻生の部屋はほとんど物という物が無かったので桔梗が本でも置けば、と言って麻生にこの本を渡した。
ちなみのジャンルはミステリー小説。
美琴は麻生が本を読む事に内心驚いていたが、それよりも注意を引いたのは麻生の姿だった。
麻生の顔は一言で表すならイケメンという言葉がぴったりだった。
さらに手すりに腰を預け、本を読んでいる姿はとても似合っていてよりかっこよさがより際立っていた。
一瞬、麻生に見惚れた美琴はふと周りを見渡すとそのほとんどが麻生の姿に釘付けだった。
理由は美琴が麻生に見惚れているのと同じだろう。
さっきまで警戒していた生徒も同じだった。
麻生はそんな事に気づく訳がなく、一人黙々と本を読み進める。
バスが常盤台中学前につくと、麻生は誰よりも早くバスを降りる。
美琴も慌てて麻生に着いて行く。
校舎も同じような感じで常盤台の生徒は男である麻生を見るとじっと見つめてくる。
気にせずに美琴に着いて行き、理事長室前まで来る事が出来た。
ノックして麻生は部屋に入る。

「ようこそ、常盤台中学へ。」

眼鏡をかけた女性が椅子に座って麻生に微笑みながら言う。
歳は四〇~五〇くらいだろう。
麻生は一礼して言葉を返す。

「本日は私を一時編入を許可していただきありがとうございます。」

麻生のちゃんとした誠意と敬語を聞いた美琴は少し驚いている。

「いえいえ、あなたを此処に一時編入させるのは私達の学校にも無駄な事ではありません。
 所謂、ギブアンドテイクのような関係です。」

理事長は机から封筒と常盤台の制服を取り出して机の上に置く。

「これにはこの常盤台について書かれた資料が入っています。
 そして、これはあなたの制服です。
 基本的に休日だろうとこの制服を着てください。
 あなたは一時編入とはいえ常盤台の生徒になりますので。」

「分かりました。」

封筒と制服の入った袋を受け取ると理事長はにっこりと笑いながら言う。

「折角ですから早速この制服を着ていただけませんか?
 私も男性の常盤台の制服を見るのは初めてなので。
 隣の部屋で着替えても構いませんので、よろしいですか?」

「ええ、構いません。」

制服を持って隣の部屋に移動して制服に着替える麻生。
少しして常盤台の制服を着た麻生を見ると、理事長はまぁ、と言葉を洩らし、美琴は言葉が出なかった。
灰色のズボンを履き、半袖の白いシャツに袖無しのサマーセーター 、それに赤いネクタイをつけている。
ネクタイやズボンを除けば女子の制服とはほとんど変わらないのだが、常盤台の制服をちゃんと着こなしている麻生に美琴は言葉が出なかった。
そう似合っているのだ、それもかなり。
これを始めて見た人は常盤台が女子中学校である事を知らないのなら常盤台の生徒です、と言われたら信じてしまうだろう。

「良く似合っていますよ。
 そうですね、折角ですし今日からその制服で過ごしてください。
 今頃、他の学校や我が校にもあなたの事について話がされている筈ですので、通報などされる事もないでしょう。
 授業は明日から、今日は美琴さん、あなたがこの「学者の園」を案内してください。
 出席に関してはこちらで何とかしておくので。」

「・・・・・分かりました。」

複雑そうな顔をしながらも美琴は了承する。
麻生は一礼をして理事長室から出て行き、美琴も同じようについてくる。

「さて、これから色々と教えてくださいね。
 美琴先輩(・・・・)。」

「あぁ~!!その呼び方やめて!!
 鳥肌が出てくる!!」

いつもの様に話すように麻生にきつく言い聞かせると、美琴は麻生を案内するのだった。 
 

 
後書き
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