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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第二章 A's編
  第二十八話    『集結』

 
前書き
今回は原作のバトルに少しだけシホの教えでアレンジを加えてみました。 

 





シグナムとザフィーラはヴィータ救援のために現場へと急行しているところだが、

「ザフィーラ…お前、少しやりすぎたのではないか?」
「むぅ…それを言うな、シグナム。まさかあれだけの戦闘能力を持ってしてバリアジャケットを纏っていなかったとは私も気づかなかった」
「そうか。しかしお前をそうも梃子摺らせたとも成ればこの先、彼女は最大の脅威になるかもしれないな」
「…追ってくると思うか?」
「ああ。まだあの目の輝きは失せていなかったからな。時間はかかるだろうが追ってくるだろう。先程、お前が張った閉じ込めるための結界がすぐに破られたことからして確実に、な」
「そうだな。しかし管理局の関係者だからデバイスを所持していると勘ぐっていたのがいけなかった。おそらく私の本気の蹴りで相当内も外もダメージを負っただろう」

ザフィーラはそれだけ述べて顔を俯かせる。

「主はやてのご友人だからやはり心痛むな…」
「だがそれも覚悟のうちだ。賽はもう投げられてしまっているのだからな」
「その通りだ。我等はもう後には引けない事情がある!」


◆◇―――――――――◇◆


シグナムとザフィーラが別の戦闘区域に向かう少し前…。
なのはも既にバリアジャケットをまとってヴィータと交戦状態に入っていた。

「どうしてこんな事するの!?」
「………」

ヴィータは何も答えず鉄球を取り出す。
だけどなのはもディバインシューターを遠隔操作させてヴィータに当てにいく。
なのはの頭の中にシホの言葉が蘇る。

『いい、なのは。あなたの使う誘導系の魔法は相手をかく乱させるのに打ってつけよ。
別方向から誘導して相手に攻撃を加えれば必ず意識はそちらに向いて迎撃を取ろうとする。
そこをなのはの自慢の砲撃で狙い撃ちなさい!
それでもし落とせなかったら即座にその場から離脱。これを心がけること』

(うん…!)

シホの思惑通り、ヴィータはディバインシューターを撃墜しようとグラーフアイゼンを振ろうとしている。
なのははその間に、

「レイジングハート!」
《Shooting Mode.》

以心伝心とはこの事だ。レイジングハートは即座になのはの意志を忠実に受け取り己の形を砲撃戦形態に変化させる。

《Divine Buster.》
「ディバインバスター!」

桃色の砲撃が放たれる。
だがヴィータは既にスフィアを打ち落としこちらに向き直り、

「ちっ! グラーフアイゼン!」

グラーフアイゼンを大振りに構えてなんとヴィータはバスターに向けてハンマー部でフルスイング。
少し拮抗しているが溜める時間が少なかった為、ディバインバスターはどんどん威力を落としていく。

「おおおー!」
(でも…!)

なのははその光景に驚きはしたものの、すぐに意識を呼び戻してフラッシュムーブを使いヴィータに接近した。
まだ砕かれるまで数秒ある。その瞬間を狙う…!
ヴィータもなのはの接近に気づいていたがまだ破壊していないためにその場で止まったままだ。
そこをつき、なのはは杖にではなくあろうことか“腕”にリングが展開していてその手には球体のスフィアが形成されていた。
そして魔法陣の足場を作り、

「シホちゃん直伝! ディバイン・シェイクバスター!」
「ガッ…!?」

その足場に震脚を力強く踏み込んで力を込めたほぼ零距離での掌底を叩き込んだ。
…いつかシホとクロノが漏らした一言。


―――感覚で魔法を組む子は予想外の事も起こしてしまうから恐ろしい、と。


シホから教わっていた中国拳法は形だけならサマになってきたがフィアには劣るし威力もない。
だが、それを魔法とミックスしてみたらどうだ…?
と、いう独自の発想が身を結び、一度それを使用した際にシホは盛大に吹き飛ばされ寝込んで治療に丸一日かかってしまった事がある。
生身で魔法をくらえば当たり前なのだが、その時のシホはあまり効果は望めないだろうと踏んでいたため自業自得でもあるが、なのはは泣きながら平謝りを何度もしたのは両者にとって苦い思い出だろう。


閑話休題


とにかくそれを喰らってヴィータはただでは済まなかったらしく空中で胸を押さえて苦しむ素振りを見せる。
当然、一撃離脱をその身で叩き込まれているなのはは距離をおいて、

「どう! これでお話を聞かせてくれる!? どうして私を襲ったの!」
「くっ、ぐ…いってぇ、な!」

だが聴く耳持たずヴィータはなのはに特攻をしかけてくる。
だがすぐにフラッシュムーブを使い、再度レイジングハートを構える。
そして先程よりインターバルを伸ばして、

「お話を…!」
《Divine…》
「聞いてってば!!」
《Buster.》

レイジングハートから砲撃が放たれる。
ヴィータはそれを今度は迎撃できる時間がなく無理に体を捻じ曲げてそれをなんとか回避する。
だが、そこで帽子が掠ったのか頭から離れ地面へと破れながら落ちていく。
それを目にしたヴィータの目の色が変わり怒りが滲み出す。

「てめぇ…!」
「!?」

ヴィータの怒りの咆哮と睨みになのはは背中に嫌な汗を掻いてしまい、その場で体を止めてしまった。
なのはは知らなかった。殺気を向けられるということを…。
フェイトと戦った時は、フェイトはジュエルシード集めに専念していてそれに魔導師同士での戦いもなのはが始めてという事もあり敵意は出しても殺気までは出ることは無かった。
プレシア戦にしてもほとんどはシホが戦っていた為に直接殺気をぶつけられる事もなかった。
今までのシホの特訓でもあくまで敵と想定された模擬戦をしてきただけで一度も殺気は受けた事が無い。
だが、今回なのはは生まれて初めて殺気というものを直接ぶつけられて、訳の分からない感情に心が支配されてしまい動きが鈍ってしまったのだ。

「グラーフアイゼン、ロードカートリッジ!」
《Explosion. Raketenform.》

なにより、デバイスの一部が一瞬開き、そこには銃の弾丸みたいのが見えてそれが装填された。
それによりヴィータの持っているデバイスがハンマーから姿を大幅に変えて、片方にドリルのような突起、もう片方は飛行機の噴射口のようになりヴィータ自身の魔力も増大する。
今まで見たこともないものになのはの思考はパニックを起こしていた。

「ラケーテン…!」

しかしヴィータはそんななのはの心情にも構わず、噴射口から炎を噴出して遠心力を使い回転をしながらなのは目掛けて突撃してくる。
なのはは考えより先になんとか回避行動を取ろうと距離を取ろうとするが、ヴィータはそれを遥かに上回るスピードで接近してグラーフアイゼンを叩きつける。
咄嗟にラウンドシールドを展開したが、それはすぐに破壊され、

「ハンマー!!」
「きゃあああーーーッ!!」

シールドを破壊し、その威力は衰えを見せずレイジングハートにまで及び杖部分をまるで削るようにしてなのはをそのまま弾き飛ばした。
なのはもその強力な攻撃に急ブレーキが効かずそのまま一つのビルに激突し、一つの部屋の奥にまで叩き込まれた。
そこでなんとかなのはは体制を立て直そうとするもあまりの威力だった為に立つのも辛く杖を棒代わりにして巻き上がった埃と衝撃による咳き込みをすることしかできないでいた。
そしてそんなところを見逃すわけもなく、ヴィータは追撃してきて再度その尖ったハンマーをなのは目掛けてぶつけにきた。

《Protection.》

かろうじてバリアを展開できたがそれも雀の涙ほどの程度で、ヴィータは威力をさらに上げて、

「ぶちぬけぇーーー!!」
《Jawohl.》

噴射口からさらに炎が吹き上がりシールドを完全破壊しなのはのバリアジャケットの上着部分を砕き、その勢いのままなのはは瓦礫の山まで吹き飛ばされる。
ヴィータは幾分頭から熱が引いたらしくゆっくりとなのはに歩み寄り、グラーフアイゼンを振り上げる。

(嫌だ…こんなところで…ユーノ君…フィアちゃん…クロノ君…アルフさん…シホちゃん…フェイトちゃん!)

ガキィ!

なのはの心からの叫びは、届いたらしい。
かすかに目を開けば目の前にはフェイトがいてヴィータのグラーフアイゼンを押さえている。
そしてなのはの後ろから、

「遅れてごめん、なのは…」

ユーノが優しく声をかけてくれた。

「フェイト、ちゃん…ユー、ノ君…?」

なのはは声を出すのも辛いらしくその声はとても弱弱しい。
ヴィータはフェイト達を見て、

「仲間か…?」

ヴィータの問いかけにフェイトは、

「友達だ…」

静かに、そう告げてサイスフォームを展開して構えた。


◆◇―――――――――◇◆


Side フェイト・テスタロッサ


「テメェら………管理局、か」
「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。
民間人への魔法攻撃………軽犯罪では済まない罪だ。武装を解除すれば、弁護の機会が君にはある」
「誰がするかよ!」

そういって赤い少女は外に飛び出していった。
離脱が速い。相当の腕の持ち主かもしれない…でなければなのはがここまでなる事はないから。

「ユーノ、なのはをお願い!」
「わかった!」
「ふ、フェイトちゃん…」
「なのは。もう大丈夫だよ。なのはの事は私が守る!」
「ありがとう、フェイトちゃん………、あ! ユーノ君。シホちゃんは!?」
「シホは一緒じゃないの!? だからか…」
「だから、って…?」
「こっちに転移してきた途端、フィアはシホの魔力が感じる方へ飛んでいっちゃったんだ…」
「にゃはは…フィアちゃんらしい…」
「とにかく、あのシホがそう簡単にやられるとは思えないから大丈夫だと思う。だからお願い…!」

私は二人にそう告げて外に飛び出した。
すると待っていてくれていたのか赤い少女は上空で停滞している。
それなら!

「バルディッシュ!」
《Arc Saber.》
「はぁ!」

アークセイバーを放つ。
だが相手の少女も球体の球を何個も作り出して迎撃してくる。
アークセイバーは少女にぶつかったがなにか知らない術式の魔法で防御して突破できないでいる。
逆に私は少女の放った鉄球に追いかけられてしまう始末。
そこにアルフが不意打ちでバリアブレイクをして防御を砕くけど…強い。
その後、何合か打ち合ったけど重みが違う。
まるでシホの攻撃みたいだ!
シホ…今どこにいるのか分からないけど無事でいて!


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


今私はフィアに肩を貸してもらいながらなのは達の場所に向かっている。
どうしてこんなに早く対応できたのかというとフェイトの裁判の結果が出て、おまけに管理局の嘱託魔導師になれた事を聞く。
その知らせをしようとした所、通じないので来てみたらこんな惨事になっていたというわけだ。
…なにか都合がいい気もしないけど、助かったのは確かだ。
今、なのはの方にはフェイト、アルフ、ユーノが応援に駆けつけているらしい。
私も、急がないと…!

「フィア、もっとスピードは上げられる?」
「さすがに回復しながらだと…」
「そう…無理を言ってごめんなさい」
「いえ…お姉様の無事が確認できれば私はそれだけで…」
「ふふ、ありがと」
「それより、お姉様はどうしてアヴァロンを使わないのですか…?」
「今はまだ戦闘中だからよ。だから無駄な魔力は出来るだけ控えなきゃいけない…あいつらは只者じゃない事は身を持って体験したことだし」
「それなら、私もちょっと無理しますけど回復とスピードアップを並行して行います!」
「お願い…!」

私は連れてもらっている間にも回路に様々な武装を設計しておく。
いつでも出せるように…。
そして市街地に入るところで、

「見えた!」
「ほんとですか、お姉様!」
「ええ。ザフィーラっていう守護獣はアルフと、シグナムという剣士はフェイトと…って、いけない! フェイトがシグナムに押されている!」
「そんな…!」
「フィア! もう十分回復したからあなたはアルフとユーノの援護を。私はフェイトを助けにいくわ!」
「はいです!」

そこで私とフィアは二手に分かれる。
そしてタラリアを全開にしてフェイトの元へ向かう。
見ればフェイトはシグナムの振上げからの一刀の元、ビルにまで叩きつけられている。
シグナムはフェイトに向かって名を名乗る。
それに律儀にもフェイトは名乗りを上げる。
だけどバルディッシュにはコア部分に皹が入っている。
後一撃をもらったら大破するかもしれない。
そんなこと、させない…!
シグナムがフェイトに襲い掛かろうとしたその瞬間、

停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!」
「「!?」」

二人は同時にこちらに向きフェイトは「パァッ」という表現がしっくりくる喜びの笑顔をして、対照的にシグナムは「やはり来たな!」というまるでランサーのような好戦的な笑みを浮かべる。
もしかしてシグナムも戦闘狂(バトルジャンキー)か…?
とにかく私はシグナムが剣の群れから退避したのを確認してフェイトの前に立ち、

「フェイト、無事…?」
「うん。でもバルディッシュが…」
「分かってる。これ以上の戦闘は不可に耐え切れないんでしょ? だからフェイトは下がっていて!」
「で、でも! シホ、体が傷だらけだよ!? ここに来る前になにかあったの!?」
「ちょっと、ね…」

そういい言葉を濁しながら私はその手に干将・莫耶と投影する。

「今は休んでなさい。でもいざって時には救援よろしくね。それとこんな時だけどまた会えて嬉しいよ、フェイト」
「私もだよ。シホ…頑張って!」
「ええ…!」

そして私はシグナムと同じ高さまで上がり対峙する。

「やはり来たか。しかしその傷ではそう長くは戦えないだろう?」
「そうでもないわ。ここに来るまでに応急処置は済ませてあるから万全じゃないけど相手を出来ないということはないわ。ちなみにもう逃げることはしないの…?」
「それはない。あの時は場合が場合だったからな。騎士として後姿を見せるのはいささか私とて渋った。
だが、ここには我等の目的は全員揃っている。もちろんシュバインオーグ…お前も含めてな」
「それを聞いて安心したわ。これで私も全力で相手をできる」

私とシグナムはお互いに笑みを浮かべる。
私としてはセイバーの面影を持った彼女と戦えるのはまたとない機会。
普段は楽しむという感情は戦場で起こすことはない。それは慢心を生むからだ。
だけど、この溢れてくる感情は止めようがない。実に気分が高揚している。

「しかし、先程は槍を持っていたようだが…今は双剣か。多様な武装を使うのだな」
「槍はあくまで二番手よ。本来私はこれが主流だから」
「そうか…。しかし無駄に話をしてしまったな。出来ればお前とはゆっくりと話し合いたいところだが…」

そこでシグナムの雰囲気が先程までの落ち着きようがなくなり剣呑になる。
それでフェイトも少し当てられたのか体が微妙に震えている。
…殺気という物は初めてのようね。ちらりと目を向ければなのはも相当消耗している事が窺える。
これは早期決戦で終わらせなきゃいけないわね。
そしてシグナムに向きなおし、

「それじゃ…」
「そうだな。いざ尋常に…」
「「勝負…!」」


◆◇―――――――――◇◆


Side シャマル


やっぱりシホちゃんも関係者だったのね。
シグナムの提案が功をそうしたかもしれないわ。
今の私は普段の緑を基本とした甲冑じゃなく、変身魔法を使い黒塗りの甲冑の上にダウンコート、目を隠すグラサン。
さらに体格まで男性のようにしたからシホちゃんが私を見ても気づかない自信はある。
でも、それより驚きなのは今シホちゃんがあのシグナムと対等に戦っている。
シグナムもそれだけ本気を出さなければ相手にできないということなのかしら…?

「シホちゃん…あなたは一体…」

つい言葉が漏れてしまう。
ザフィーラとの戦闘でかなり追い込んだと聞いたけど、それでもやっぱり戦闘能力は他の子達と比べるとあきらかに高い。
それにデバイスやバリアジャケットすら使っていないことからして純粋に自身の力だけで戦っている。
この世界にそんな戦闘できる人物は今までいただろうか。答えは否。
やっぱり、そうなるとシホちゃんもあの人と同じ…いえ、今はそれを考えている時間はないわ。
現状で今一番魔力の蒐集がしやすいあの白い魔導師の子…。
今はなにかの結界の中にいるから中々手出しできないけど、あれが解けるのを私は待つ。

「だからお願いね、クラールヴィント」
《Ja. Pendelform.》

私の指にある二つの指輪から振り子が射出して機会を伺う。


 
 

 
後書き
シホとシグナムの戦闘は次回に持ち越しです。 
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