ＭＳＶ-蒼空の英霊-

Ｕ.Ｃ.００７９．１２．３１　ア・バオア・クー　Ｅフィールド

　ア・バオア・クーのＭＳデッキから白いザクが発進した。しかしそのザクは一切武装をしていないように見える。加えて言うならザクの面影は最早頭部のみである。
　脚を高出力熱核ロケットエンジンにし、腕を５連装メガ粒子砲に改装した試験用のＭＳで、本来はこのような激戦地に投入する予定でなかった。
　しかし使える戦力を遊ばせておく余裕はジオンにはなかった。

『ビショップ２、戦域に到達。行動を開始してください。』

　機内のスピーカーからオペレーターの声がする。

「了解。」

　慣性航行をしていたその機体のエンジンに火が点る。

「……いる。敵は近い。」

　パイロットは推進剤の少ないこの機体を巧みに操り敵に近づいき、こちらに気付いていないサラミスを射程ぎりぎりにとらえる。

「……っ、そこ！」

　機体の腕部が離脱し、目標に接近する。そして指先が光りそこからビームの奔流が走った。
　そのビームはサラミスの船腹に命中し轟沈した。

「……っ、あ、頭が、ああっ！」

　人の意識がパイロットを襲う。
　だが、その間にも敵機は近づいてくる。

「いやっ、来ないで。」

　再び腕部を離脱させてそれをＧＭの死角に回り込ませる。
　だがのパイロットはデキるようで回り込まれた腕部から放たれたビームを機体を半身捻らせてよけた。
　そしてＧＭのビームスプレーガンを連射する。

「よけられた？これならっ！」

　射撃戦は不利と見たＧＭのパイロットはビームサーベルを抜いて近接戦を仕掛けてくるが、戻ってきた腕部を向けさせ、手を握らせて射出させた。
　
「やあぁ！」

　ＧＭのコックピットに右ストレートをかまし、左手のメガ粒子砲を撃つ。

「やった。次……って推進剤が。」

　先ほどのＧＭとの戦闘で推進剤が怪しくなったのだ。

「戻らないと、あうっ！？」

　針路を要塞のハッチ に取った時、機体に衝撃が走った。
　見れば背後にマシンガンを持った敵機がいる。

「お願い、見逃して。」

　だが連邦軍にそんな思いは届かず、なおも撃ってくる。

「きゃぁぁっ、こちらビショップ２、援護を。」
『こちらクラッペ３。援護します。』

　進行方向から一機のザクがマシンガンを撃ちながな近づいてくる。

「ありがとうございます。ピットまで護衛願えますか？」
「あいよ。」

　彼女の機体を狙っていたＧＭはザクのマシンガンで怯んだところを、別のザクに見つかり撃破させた。
　だが敵は後ろだけではなかった。左手からＧＭが突っ込んできた。

「クラッペ３！左です！」
『ひだ……。』
「えっ！？」

　ＧＭはザクを真っ二つに切り裂き、少し離れたところで急転回して戻ってきた。

「い、いやぁぁぁっ！」

　錯乱した彼女は自機の右手のメガ粒子砲を乱射させて、接近していたＧＭを蜂の巣に変えた。
　だがそのことで機体はオーバーヒートした。

「しまった！こちらビショップ２、だれか。」

　コックピットの中で警告音が鳴り響く。ロックオンアラートも鳴っている。

「武装は動かなくてもいい。動いてっ。」

　敵が来る。すぐ近くに。

「っ！」

　だが、機体は爆発することはなかった。
　そして正面モニターに影が入っている。

『援護がなけりゃ何もできないんだな。御嬢さん。』
「あ、あなたは……？」

　モニターに映っていたのは高機動型ザクⅡのバックパックだった……。





ＴＯ　ＢＥ　ＣＯＮＴＩＮＵＥＤ……。　 

サイコミュシステム高機動試験型ザク　ＭＳＭ－０１

両腕を５連装メガ粒子砲に改装しサイコミュシステムの試験用に開発された機体をさらに改装し高機動試験用にした機体。
コードネームをビショップという。

護衛もいるにはいるんですが自分だけで精一杯なんです。
そして今度も２話構成です。
最後に出ていた男、一応エースですから腕は立ちます。
次回を乞うご期待？