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とある完全模写の物語

作者:廃音
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吸血鬼
  真祖

 
前書き
ローラのしゃべり方は自分が書きやすいように変えてあります 

 
「それで?今回はどういう風の吹き回しだ?」

 俺は今イギリスのとある場所に設立されたネセサリウス本部にいる。

 そして俺の視界に写る女性の名前はローラスチュアート。俺達の上司にあたり、ネセサリウスのトップに君臨する女性だ。

 見た目は麗しい女性なのだが…その外見が内面の年齢にあっているのかと問われれば俺にも分からない。ローラと知り合ったのは数年程前の話なのだが、その時から外見が変わっていないのだ。

「それが助けてもらった恩人に対する態度かしら?神童光輝」

 今話している内容は言わずもがなインデックスの件についてだ。

 インデックスの脳に細工を施していた事に関してローラに言いたい事は山ほどあるが、それを言いにきた訳ではない。

 俺個人としては、今回のローラに騙されていたことは腹が立つが、同時にローラの判断はトップの人間としては正しい判断だとも認識している。だからこそ俺はインデックスに細工を施していた事を言いに来たのではなく、俺達に下された処罰に疑問を覚え、ここに来ているのだ。

「感謝はしているさ。だが、それとこれとは話が別だ」

「相変わらず冷たいのね」

 ローラはそう呟くと座っていた椅子から腰を上げ、俺の側へと歩み寄ってくる。

 そして俺の目の前まで来るとその小さな手を俺の頬に沿わせるように動かし、顔を俺の首に埋めるように体を被せて来た。

「今回の処罰に深い意味はないわ。ただ、あなたを私の側において置きたかっただけなのよ?」

 ローラの妖艶な声が自分のすぐ側で聞こえる。

「それは俺自身の事か?それとも俺の力の事か?」

 今までにも俺の力を求める人間は大勢いた。

 俺自身にも未だに分からないこの力。何時からこの力が使えるようになったのかも分からなければ、なぜ使えるのかも分からない。

 只言える事はひとつだけある。この力は人間の身に余る力だ。この数年間の間で数多くの人間と出会ってきたが、どの人間も俺の力に及びはしなかった。

「…さぁ。どちらなのかしら。私にも分かりかねるわ」

 ふふっ、と最後に美しい笑みを浮かべながらローラは俺から体を離し、俺に背を向ける。

 いまいちローラの言葉に信用は出来ないが、今の様子からして裏の考えがあるようには思えなかった。

 単純に俺が騙されているだけかもしれないが。ローラと出会ってから俺は一度もこいつの考えを理解できた事がない。

「それで、折角此方に帰ってきたのだから仕事でもやってく?」

 折角此方に帰ってきたのならば普通は休みをもらえるものじゃないのか?と疑問が浮かんでくるが、それを口に出すことはせず、とりあえず首を縦に振っておく。

 ローラ本人から仕事の話が来るときは限ってでかい仕事の時だ。

 恐らく俺が自分の意思で此処に来ようが来なかろうがローラ本人に呼ばれていただろう。

「あなたならそう言ってくれると思っていたわ。仕事の内容は簡単。人探しとその保護よ」

 人探しと保護。そう聞くだけなら確かに簡単な内容だが、俺にこの話が回ってきている以上、そんな簡単な内容では済まないだろう。

 一種の不安と胸に抱きながら、俺はその対象について疑問を返す。

「対象の特徴は?」

「んー…見た目は年若い女子なのだけれど、その中身がね」

「中身?どういうことだ?」

「その対象の女子、吸血鬼の真祖なのよね」

 正直ローラの言葉に自分の耳を疑った。

 吸血鬼。

 その名前は聞いた事ならあるが、実際にいるとなると話は別になってくる。

 吸血鬼の力は一般に人間でも知っているようなものであり、血を飲んだ対象を同属に変える、というものだ。

 と、そんな力だけなら大して脅威がない存在なのだが、吸血鬼の一番の力は不老不死による魔力の無限化、だろう。吸血鬼の魔力の源は自らの生命力から来ている。つまり不老不死の吸血鬼は自身が持つ魔力に限りがなく、無限に魔力を使用する事が出来る。

 だから一度吸血鬼が魔術と言うものを習得してしまえば、それは一瞬にして化け物の領域へと足を踏み入れることになる。更には吸血鬼は不老不死なのだから、人間に掛かっている時間制限がない。長く生きれば生きるほど最強へと近づくのだ。

 そして今回の対象はそんな恐ろしい力を持つ吸血鬼なのだが、今回は更に最悪だ。

 真祖。

 それは吸血鬼の始めである始祖から直接血を吸われ吸血鬼へと変わった存在の名称。つまり限りなくオリジナルに近い力を持っており、それだけ長く生きている、ということにもなる。

 この後の事を考えただけで頭が痛くなりそうな内容だ…。

「…それは本当に真祖なのか?ましてや本当に吸血鬼なのか?」

「書籍と照らし合わせた結果、真祖である可能性が高い、という結果よ」

 何故今になって吸血鬼が世界に出てきたのか気になる所ではあるが、それは俺の知りうる範囲ではない。その手の話はローラなどといった上の人間に任せておけばいい。

 俺は只与えられた仕事をこなすだけだ。

 …。

 とは言え、やはり文句の一つは言いたくなる。

 今まで騙されていた挙句、その次に言い渡される仕事は吸血鬼の真祖の保護だ。

 インデックスを捕まえるのとは話の次元が違う。まだ吸血鬼になりたての吸血鬼を捕まえるのであれば簡単だったが、長く生きている真祖となると…腕の一本や二本覚悟しておいた方がいいかもしれない。

「頭が痛い話だな。それで…報酬は?」

 金には困っていないのだが、報酬は大切だ。仕事を与える側と受ける側としてこの手のことはしっかりしていないと後々困る事になる。

「何か欲しいものはある?」

 ローラからそう言われ、欲しい物を頭の中に浮かべようとするが、一向に浮かんでこない。

「…特にないな。そちらで勝手に用意しておいてくれ」

 先程この手の話はしっかりしなければならない、などと思った人間の言葉とは思えない。

「分かったわ。それじゃあこれに目を通しておいて。彼女の特徴が書かれているわ」

 そう言いながらローラから手渡された分厚い書類。

 こんなにも分厚いのか…と思いながらもぺらぺらと紙を捲ってゆく。

 まぁ内容としては対象の外見特徴。そして使う魔術の種類などと言った所だ。

「これは…」

 こんなものか…と思いながら紙を見ていたが、最後の一枚に書かれた文に目が届いた。

 同族殺し。

 最後の一枚にそんな事が書かれていた。

 同族殺し、と書かれている以上、恐らく彼女は自分と同じ吸血鬼を殺したのだろう。それが何故かまでは分からないが、少なくとも彼女自身吸血鬼は好んでいないのかもしれない。彼女が吸血鬼の理由も何かありそうだな…。

 此処が今回彼女を保護する助けになるかもしれない。

「ローラ。当時彼女が人間だった頃の情報を集められるか?」

「…中々難しいことを言ってくれるわね。出来る限りやっておくわ」

「感謝する」

 最初は単なる仕事として終わらせようと思っていたが…少し興味が沸いた。

 あの少年…いや上条当麻に魅せられてしまったからか?柄にもない感情が芽生え始めてきている気がする。

 …だが、この感情も悪くはない、な。 
 

 
後書き
基本原作と同じ時間軸のオリジナルストーリーで展開します。
つまり、今日本では吸血鬼殺しの話、ということです。 
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