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100年後の管理局

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第六話 雷光、二刀流

 
前書き
アリスさん戦闘開始 

 
二振りの金色の剣を交差させ、銃剣を受け止めたのはアリス・T・ハラオウンその人だった。
「大丈夫ですか?」
アリスは銃剣を受け止めながら、後ろに居る男に安否を問う。
「あ、ああ。」
アリスに安否を気遣われた男の声には明らかな動揺が見て取れた。
実際の理由は不明だが、おそらくその理由はアリスの見た目であろう。
アリスは銃剣を構える少年よりもさらに幼い少女であるのに、少年の銃剣を軽々と受け止め、こっちを気遣う余裕すら見せているのだ。
この大きなギャップが男の動揺を誘ったのだろう。
「はっ!」
アリスは全身のバネと魔力で強化した腕力で銃剣をはじき返す。
自分の得物をはじかれた少年はわずかに態勢をのけぞらせるが、すぐさま後ろに跳躍し態勢を立て直す。
「なんだぁ?てめえは。」
「本局所属執務官、アリス・T・ハラオウン。傷害の現行犯であなたを拘束します。」
それを聞いた少年と男は呆然とし、少年は唐突に笑いだす。
「クハハハハ!てめえみてえなクソガキが執務官だと?笑わせんな!」
少年は一気に踏み込み、銃剣で薙ぎ切りにかかる。
「死ね!」
しかし薙ぎ払われた銃剣は、対象に当たることなく空を切る。
そこにはもうアリスはいない。
少年は後ろから攻撃の気配を感じすぐさま後ろを振り向き銃剣を盾にする。
後ろからの攻撃を防ぎ切り攻撃の主を確認すると、先ほど少年が立っていた位置にアリスはいた。
「てめえ………、いつの間に………。」
屈辱の表情を浮かべる少年。けれどアリスは答えない。
少年は沈黙を挑発と受け取り、さらなる屈辱を覚えて怒りをあらわにさせる。
「クソガキごときが調子にのんじゃねえぞ!」
今度は少年も最大速度で切りにかかるが、またもや空振り。
気付いた時には脇腹を二刀の剣で殴られ、吹き飛ばされていた。
「ぐっ………。」
10メートルほど吹き飛ばされた少年は銃剣を杖代わりに立ちあがろうとするが、体に力が入らないことに気づく。
先ほど攻撃されたときに電撃を浴びせられていたのだ。
足の筋肉が痙攣し、うまく立ち上がることができなかった。
「拘束します。」
「くっそがああああ!」
アリスが少年を拘束しようとバインドをかけようとした瞬間、少年は立ち上がりアリスに攻撃を仕掛ける。
バインドは急激に少年が動いたせいで、狙いを外し不発に終わる。
振るわれる銃剣を今度はかわさないアリス。
型もなく、ただただやみくもに振るわれる剣を受け止め続ける。
「その、偉そうに人を見下す態度が、一番むかつくんだよ!」
斬りおろされる銃剣を二刀で受け止め、薙ぎ払いを一歩下がってかわす。
いちいち攻撃が大ぶりなせいで、隙だらけである。
しかし、アリスは攻撃しない。
「てめえだって、教師だって、局員だって、全員偉そうにあれこれ言う!指図すんじゃねえよ!俺には才能があんだよ!偉そうにしてんじゃねえ!」
そう言って振るわれる薙ぎ払いを大きく距離を取るように跳躍することでかわす。
そうしてアリスは口を開く。
「私はともかく、局員や教師は偉そうなんじゃなくて、実際にあなたより偉いんですよ。」
「どこがだ!たかだか十数年俺より先に生まれてるだけじゃねえか!それになにより俺より弱くて才能もねえのによ!」
アリスの言葉にカチンと来たのか、さらに声を荒げ吼える少年。
しかし、アリスにとってその言葉の中には見過ごせない内容があった。
「その十数年が大事なのよ。十数年ちょっとの時間しか生きていない私やあなたより、それだけ多くの人生経験を積んでる。色々な苦い経験だってしてきている。そんな人たちだからこそ、私たちよりも偉いのよ。」
アリスの口調から丁寧さが消える。そこにはわずかに怒りがあった。
アリスは才能ある少女である。それをアリス自身がしっかりと認識している。
それは自意識過剰なことではなく、実際に周りに認められ、結果も残してきた。
そのうえでの認識でしかない。
しかし、その才能の上に胡坐をかいたことなど、アリスは一度もない。
どれだけの才能を持とうとも所詮は小娘。長い時を生きた老練な人間には敵わない部分も多い。
アリスはそれを自覚している。だからこそ、年長者の意見には耳を傾けるべきだと考えている。
しかし、それを認められない少年は反論する。
「はっ!だからってこの俺が雑魚の言うことを聞くとでも?」
アリスは呆れたような表情を見せる。
「はぁ………。典型的な力に溺れた奴の言い分ね。」
アリスは大きなため息をついた。
力に、才に溺れた者ほど、弱者を見下すからである。
その時、顔は下を向き、顔を手で覆っていたため、少年にとっては大きな隙ができていたように思えた。
少年は自分の全力を込めた黒い弾丸を打ち出す。
「死ね!」
『Black bullet.』
黒い弾丸は十分な勢いを以てアリスに迫る。
しかし、アリスは動じない。
だらんと腕を下げ、リラックスした状態で迫る黒い弾丸を見据える。
残りわずか一メートル。そこまで黒い弾丸が迫った時、右手が大きくぶれた。
ギィン!と大きな音が聞こえた次の瞬間には黒い弾丸がアリスの遥か上を通過していった。
「私は自分よりも早く生まれた人には、尊敬を払うのが常だと思うわ。」
アリスは左半身を前に出し、わずかに腰を落とす。
「積み上げてきた時間と言うのはそれだけ大きなものだから。」
右手に持つ剣を背中に回す。
「でも、そんな私にも尊敬できない人もいる。」
左手に持つ剣を右の腰に回す。
「それは、世の中で自分が一番って思ってる奴よ!」
リンカーコアから溢れる、大きな魔力を解き放つ。


少年は魔力を持たない。
だからこそ、魔力という才能の必要ないジーンドライバーになったのだ。
そして少年にはジーンドライバーとしての才能があった。
その証拠に、彼の通う学校には在校生、教師全て含めて彼に敵う者はいなかった。
もちろん学校に居る魔導師の生徒、教師も彼に敵わなかった。
まっすぐに育ったなら、Sランクのジーンドライバーになれただろう。
それを可能にするだけの才能が少年にはあった。
その才能が少年に告げる。
勝てない。と
きちんと鍛えれば分からない。けれど、少なくとも今のままでは勝てないと。
逃げろ、退け、負けを認めろ、降伏しろ。
魔力がないため、魔力を感じることができなくても、アリスの放つ圧力が少年の才能に負けを告げさせる。
けれど少年は退かなかった。少年の傲慢さが退かせなかった。
初めて出会う自分より強い相手を前に、自分より強い奴がいるはずがないと、自分に言い聞かせて。
「うあああああああ!!!」
『Black Hummer.』
自分の持つ全力を込めた、最後の砲撃。
黒い砲撃がアリスに迫る。
けれどアリスは先ほどと変わらずに焦らない。
構えた二刀を一気に振り抜く。
「雷光二閃」
『Plasma Riot Zamber.』
剣から吹きだす黄色の閃光が黒い光を塗りつぶす。
 
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