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『言霊使いと幻想郷』

作者:零戦
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第十話






「大丈夫なのかー?」

「あぁ、大丈夫だ」

 数日後、文に連れられてルーミアが御見舞いに来てくれた。

「災難でしたね誠さん」

「まぁな」

「誠ーこれー」

 ルーミアが俺に花を渡してくれた。

「ルーミアが来る前に花を摘んできたんです」

 説明ありがとう文。

「ありがとうなルーミア」

 俺はそう言ってルーミアの頭を撫でる。撫でられたルーミアは嬉しそうにしていた。

「はい、誠兄」

 そこへ霊夢がリンゴを切ってくれたのか皿に入れて持ってきた。少し強引だったが……。

「(霊夢さんも焼き餅ですね)」

「何か言った天狗?」

「いえ、何も言ってません」

 ん? 向こうで文が霊夢に頭下げてるけど何かあったのか?

「何にもないわ誠兄」

「そうか?」

 まぁ霊夢がいいならいいか。

「もう二、三日で退院だ。神社に何か変わった事はないか?」

『………』

「?」

 何だろうか? 凄い無言なんだけど……。

「……まぁ神社に帰れば分かるわ」

「……そうか」

 霊夢の言葉に俺はそう言うだけだった。それから三日後、俺は漸く退院した。

「御世話になりました」

 俺は玄関まで見送りに来た八意さんや輝夜、鈴仙、そしててゐがいた。

「また遊ぶわよ誠」

「御大事に」

「またねぇ~」

「身体には気を付けてね」

「分かりました」

 そして俺は博麗神社に戻った。ちなみに言霊でチャリを出してだ。

 舗装されてない道だったせいでかなり揺れてたけど……。

「よっと」

 そして博麗神社前の階段まで到着した。チャリを消して後は登るだけだ。

「到着っと」

 階段登るのしんどかった……。階段多すぎじゃないか? まぁ神社だから仕方ないか。

「ただいま~」

 俺は裏の扉を開けた。

「お帰り誠兄」

「お帰り」

「あぁただいま霊夢、魅魔……魅魔?」

「ん? 呼んだかい?」

「……何で魅魔が神社に?」

 おかしいな……俺の視界には霊夢と魅魔がいた。アルェ~? 魅魔って一応和解したとはいえ敵だったよな……。

「魅魔も神社に住んでるのよ」

「そうかそうか。住んでいるのか……って何でやねんッ!!」

 霊夢の言葉にツッコミを入れた俺は何も悪くないはずだ。

「ま、厄介になるね」

「ちょっと待て。霊夢、どういう事だ?」

「神社の裏山に魅魔を祀ってるでしょ? 紫に聞いたら神社の守り神みたいなものらしいから一緒に住みなさいと言ったのよ」

 霊夢が深い溜め息を吐いた。……紫さんよ、それは酷くねぇか?

「その分、霊夢の修行を手伝ってやってるんだからいいじゃないさ」

 魅魔がニヤニヤしながら霊夢に言ってきた。

「私は縁側で誠兄とお茶が飲みたいのよ」

「駄目だよ。一応は紫にも頼まれているんだ」

 魅魔はそう言って霊夢を連れ出す。

「ちょ、ちょっと離しなさいよッ!!」

「暴れない暴れない。それじゃちょっと行ってくるよ誠」

「あ、あぁ分かった」

「誠兄ぃ~~~」

 霊夢は魅魔に引きずられて行った。

「……仕方ない、晩飯は俺が作るか。カレーでも作るかな」

 俺は溜め息を吐いて台所に向かった。なお、晩飯時に霧雨魔理沙はどうなったか聞いたけど何でも一人で生きていけるらしいので魔法の森に住居を構えたそうだ。

 ……放任主義か? 霧雨も苦労してそうだな。たまに様子を見に行っているらしいが。

 その日からの食事は二人分から三人分になるのであった。



 山の中にある石段を登るとそこは無数の板塔婆があるところに五十音ことはがいた。

「……久しぶりだね誠兄、孝兄」

 ことはは持ってきた花束を八雲誠と敷島孝之と書かれた板塔婆の前に置いた。

「相変わらず秋名やヒメ、恭助達は元気だよ。まぁヒメは元気が有りすぎるけどね」

 ことははそう言って笑う。しかし直ぐにそれは消えた。

「もう二人がいなくなって三年が流れたよ……ヒメ達がいるけど……私は二人もいてほしかった……」

 そう言ってことははぺたんと地面に座る。

「……私ね、二人が死んだとは思えないよ。だって誠兄は雷が当たる前にスキマみたいなのが開いたしね」

 秋名やヒメ達は見てないと言っていたがことはには見えていた。確かに誠がスキマの中に吸い込まれるのを……。

「スキマの中には目が多数あった。事務所の地下にある書物を読んでいるけど、まだ見つからない。でも……」

 ことはは立ち上がる。

「私はまだ諦めていない。誠兄の事も、孝兄の事も。だから……それまで待っていて」

 ことははそう言って元来た道を歩いて行った。そして草むらから現れるのは二人の神と妖怪である。

「……やっぱ誠は幻想郷にいたか……」

「えぇ。誠君には神社に倒れてたとは言ってるけどね」

 神の名は士夏彦雄飛。エロいおじさんであるが神である。

 そして妖怪は幻想郷を作った八雲紫である。

「孝之の居場所は?」

「それが何処に送ったか分からないわ。何せ、あの時は無我夢中だったわ」

「……まぁいい。二人が生きているならな」

「あら? 返してほしくないの?」

「馬鹿野郎。俺は神だが此処(桜新町)の土地神は八重だ。俺は守り神さ」

 士夏彦はそう言って薬タバコに火を付けて煙りを吐き出す。

「……二人の事は頼んだぞ」

「任されたわ」

 紫はそう言ってスキマに入っていった。

「……幻想郷……か」

 士夏彦は空を見上げた。薬タバコの煙りは空に舞い上がっていった。







 
 

 
後書き
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