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星河の覇皇

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第七部第四章 名将と老将その六


 アッディーンは数個艦隊を置きその開けた地点に留まっていた。一見統制をとっているように見える。だが実際の活動は違っていた。
「リヤド軍はまだか」
 彼は情報参謀であるシャルジャーに問うた。
「ハッ」
 彼は敬礼をしてから答えた。
「後方に何やら多くのエネルギー反応が確認されております」
「後ろからか」
 アッディーンはそれを受けて頷いた。
「得意のゲリラ戦術、そして奇襲を仕掛けてくるつもりのようだな」
「そのようです」
「彼等は何日後にこちらに来るか」
「速度が速いです。おそらく二日後には」
「よし」
 アッディーンはそこで意を決した。
「各艦隊に伝えよ。二日後だと」
「わかりました」
「そして我等も備えるぞ」
 彼は続けて指示を出した。
「彼等から見て奥に陣を敷く。守りを固めてな」
「はい」
「敵をこの空間に深く誘い込め。そしてその背と腹を撃つのだ。予定通りな」
「わかりました」
 彼は再び敬礼した。
「この戦いで南方が手に入る」
 アッディーンは言葉を続けた。
「一気にいくぞ。そして勝利を手にするのだ!」
「ハッ!」
 そこにいた全ての者が敬礼した。こうして彼等はアッディーンの言葉通り兵を動かした。
 二日後リヤド軍は来た。そしてアッディーン率いるオムダーマン軍を発見した。
「敵艦隊発見」
 彼等は通信を遮断し隠密行動をとっていた。これだけの規模の艦隊の動きを隠密裏に済ませることができるのもハイヤーンの将としての力量故であった。この報告も参謀の一人の言葉だけであった。
「規模は」
 ハイヤーンは問うた。
「四個艦隊程です」
「わかった」
 彼はそれに頷いた。
「では全軍攻撃開始だ。よいな」
「わかりました」
 そして彼等はそのままオムダーマン軍に向かう。発見されていないと信じて疑わなかった。
「来たな」
 だがそれは違っていた。アッディーンは彼等の位置を正確に掴んでいたのだ。そのうえで陣を整えていた。しかし今は彼等はリヤド軍に背を向けていた。
「よいな、全ては予定通りだ」
 彼は周りにいる参謀達にこう言った。
「はい」
「わかっております」
 彼等は皆それ答えた。そしてアッディーンの次の指示を待っていた。
「敵艦隊、間も無く我等の攻撃範囲に入ります」
「よし」
 アッディーンの目が光った。
「全軍反転!そして攻撃を開始せよ!」
「ハッ!」
 アッディーンの指示に従いオムダーマン軍は一斉に艦首を回した。そしてそこから攻撃を仕掛けた。
「ムッ!」
 それを見たハイヤーンは思わず声をあげた。
「いかん、全軍弾幕を張れ!」
「ハッ!」
 すぐに指示を下す。それに従いリヤド軍は隠れるのを止めビームを斉射した。そしてそれでオムダーマン軍の攻撃を凌いだ。
「気付かれていたか」
 ハイヤーンは敵の攻撃を防ぎきったのを見てそう呟いた。
「どうやらそのようですね」
 参謀の一人が苦渋に満ちた顔をしていた。彼にとっても思いもよらぬことであった。
「だが負けたわけではない」
 しかしだからといって戦意を喪失するハイヤーンではなかった。
「数において我等の方が有利にある。わかるな」
「はい」
「全軍攻撃を仕掛けよ!そして押し潰せ!」
「ハッ!」
 すぐさまリヤド軍は進撃を再開した。数に劣るオムダーマン軍を包み込むような形で攻め立てる。それを見たアッディーンは全軍に指示を出した。
「退け」
「ハッ」
 そしてオムダーマン軍はその言葉に従い後ろに退いた。
「逃げるのか?」
 ハイヤーンはそれを見てまずそう考えた。だが様子が違っていた。
 艦首はこちらに向いている。そして間合いを見計らって動いているのがわかった。
「有利な場所で戦うつもりか」
 ここで地図を見る。彼等の真後ろに道の一つがある。そこに入れば取り囲まれることはない。だがそれを許すハイヤーンではなかった。
「そうはさせんぞ」
 彼はすぐに指示を出した。高速部隊に命令を出す。
「オムダーマン軍の後ろに回れ」
「わかりました」
 それを受けて一個艦隊が離れる。そしてオムダーマン軍の後方に回ろうとする。それはアッディーンにもわかっていた。
「来たな」
 アッディーンはそれを見て呟いた。敵の意図はわかっていた。
 彼等は迂回しつつ左からオムダーマン軍の後方に回ろうとする。そしてその時道の前に出る。
「あちらはどうなっている」
 彼はシンダントに問うた。
「ハッ」
 シンダントは答えた。
「そろそろかと」
「そうか」
 アッディーンはそれを聞いてニヤリと笑った。それは勝利を確信した笑みであった。
 リヤド軍別働隊はそのようなことは知る由もない。彼等はただオムダーマン軍の後方を目指していた。
「さあ、どう出る!?」
 ハイヤーンはアッディーンの動きに注視した。このまま動かないとは思えなかったからだ。
 必ず動く、そう確信していた。だが彼はアッディーンの脳裏までは知らなかった。それが問題であった。
 別働隊が道の前に来た。その時であった。
 
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