黒ミサ
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第一章
黒ミサ
普通のミサはキリスト教の聖なるものだ、だが。
これが黒ミサ、魔女のものとなると禍々しく邪悪なものになると言われている、そのミサはどういったものかというと。
「血を飲むの」
「ええ、それでね」
村井繪里子に左藤麻美が話す。
「子供を食べるのよ」
「子供って」
「赤ちゃんよ」
そのものずばりだった。
「儀式の時に殺して血を絞り取ってね」
「それでお料理してなの」
「それで食べるらしいのよ」
麻美はこう繪里子に話す。
「魔女の黒ミサだとね」
「何か酷いわね」
「でしょ?凄い邪悪な儀式なのよ」
麻美は繪里子に話していく。
「魔女らしくて」
「魔女って怖いのね」
「怖いも怖い」
麻美は言う。
「悪魔の僕だからね」
「だから怖いのね」
「そういうこと。それでだけれど」
ここで話題が変わった。
「うちの学校に魔術部ってあるじゃない」
「オカルト研究会じゃなかったの?」
「部に昇格して名前が変わったらしいのよ」
「それで魔術部になったのね」
「で、そこでも黒ミサやるらしいのよ」
「幾ら何でも赤ちゃんは食べないわよね」
繪里子は真剣に麻美に返した。
「それはないわよね」
「それ犯罪だから」
何処からか赤ん坊を攫って殺して食う、これで罪に問われない社会は人類の歴史では戦乱や飢饉で全てが崩壊している社会だけだ。
「ないわよ」
「そうよね」
「けれど黒ミサって興味あるでしょ」
「どんなのかね」
実際にこう返す繪里子だった。
「キリスト教のミサは見たことがあるけれど」
「魔女の方はないからね」
「それに魔女っていったら」
繪里子は日本人の魔女のイメージから麻美に話した。
「楽しいイメージあるけれど」
「お鍋で色々とぐつぐつ煮て箒に乗ってお空飛んでね」
「それで魔法を使うとか」
これが日本での魔女のイメージだ。
「そういうのだけれど」
「そうよね、私もよ」
「麻美ちゃんもなの」
「だって。奥様は魔女とか」
随分と古いアメリカのドラマの名前が出る、サマンサという人妻の魔女が色気があると共にコミカルで人気があった。
「魔女っ子アニメとかね」
「そういうのよね」
「それかお婆さんか」
その箒に乗って飛ぶ魔女だ。
「そういうのだけれど」
「だから普通に楽しいイメージよね」
「というか黒ミサも実際はどうだったのかしら」
「赤ちゃんを殺してないのは確かよ」
「そうよね、実際に何をするのかは知らないけれど」
「だから魔術部でやってるのよ」
その黒ミサをである。
「行ってみる?それじゃあ」
「そうね。それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
こうして繪里子と麻美は二人で魔術部の門を叩くことにした。そして出て来たのは胸が大きく黒髪を波立たせたやけにあだっぽい三年の人だった。
その人が魔術部の部長だった、名前はというと。
「黒部智秋よ」
「黒部さんっていいますと」
「確か」
「ええ、合唱部と掛け持ちよ」
そちらのソリストとして有名だ、抜群の歌唱力で知られている。
「そっちじゃ部長じゃないけれどね」
「魔術部だと、ですか」
「部長なんですね」
「そうなのよ」
大きな口で楽しげに話す、二年の二人と同じ制服の筈だが胸は大きく色気が全く違っていた、二十代の色気だった。
その智秋が二人を見ていう。
「村井繪里子さんね」
「はい」
繪里子はその大きな目で話す。茶色のショートヘアにアーモンド形の大きな吊り目である。口元は悪戯っぽい笑みになっている、肌は白く小柄だ。
「左藤麻美さん」
「はい」
麻美の目は細く切れ長だ、黒髪を長く伸ばしており口はやや大きい。背は繪里子より三センチ程大きいが胸が全くない、尚繪里子の胸は麻美よりましという程度だ。
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