インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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襲われる兎
前書き
ドドンッと大公開! かなり進んでいますので、目次で確認して下さい。
―――祐人side
ようやく見つけた。俺が記憶を消したのはこの女を殺すためだ。
「風宮、今すぐ銃をしまえ!」
「そいつと同じで頭でも惚けたか、ブリュンヒルデ。今までそのゴミがしてきたことを考えれば当然のことだろ」
むしろ今まで散々競技の邪魔をしてきたんだ。当然だ。
「ねぇ、どうしてゴミ風情が私を惚けているなんて言えるのかな?」
篠ノ之束が俺に声をかける。
「は? VTシステムなんて物を嫌っている割には俺を殺すために使っていたじゃないか。わざわざシュバルツェア・レーゲンに細工までしてな」
「「!?」」
そのせいで俺の家までも消されたんだし。
「………何でお前がそれを―――」
「俺が消したからな。お前がかつて俺がいた場所を消したように」
「!?」
「どういうことだ、束」
俺の言葉を聞いて、篠ノ之束は身震いをした。
「まさかお前、『不可視の抵抗』の―――」
「ふーん、覚えていたんだ。テメェの脳は容量が小さいから忘れていたと思った」
エレメント・ブレードを抜き、エレメント・コアを装着して炎を帯びさせる。
「………よくもちーちゃんの真似を―――」
「くだらない」
「何?」
「下らないって言ったんだ。それとも何か? お前はこんなことを予期できずにミサイルをハッキングしてその女に落とさせたってのか? 下らないだろ」
―――ズガンッ
ブリュンヒルデが当たらない角度で発砲し、ゴミに当てた。
「………何で―――」
ゴミが同様するのもわかる。何故ならゴミが纏っている絶対防御が貫通したからだ。
「これが現実だ。それともどうする? 一夏と篠ノ之を自分の味方に付けて敢えて殺させるか?」
これは割りと本気だ。
「ふざけないでよゴキブリ。君なんてこれで一発なんだから」
上からゴーレムが飛来するが、俺がキーボードを叩くと同時に―――ゴミに向けてビームを撃った。それをブリュンヒルデが切り払う。
「………何で? 何で命令に―――」
「機械を使っているからだ。AIで動いている限り、奪うのは造作もない」
コアを風に変え、横に薙ぎ払って木ごとゴミを殺そうとする―――が、逃げ足だけは早く回避する。
「逃がすかよ」
追跡しようとすると同時にブリュンヒルデが割って入ってきた。
「止めろ風宮」
「無理。死にたくないならそこをどけ」
混じりっけなく本気だということを知らせるために俺は殺気をぶつける。
「………そんなことをすれば、アイツと同じことに―――」
「ふざけてるのか、アンタ。俺は既にあの女を超えているんだよ」
「………だけど、私はお前には人殺しになって欲しくはない」
おそらくそれは本気だろう。
「自惚れるのもいい加減にしろ、織斑千冬」
―――ズガンッ
発砲が辺りに響くと同時に織斑千冬は倒れた。
「……か……ぜ……み……」
「安心しな。撃ったのは麻痺弾だ。後遺症もなく時期に元に戻る」
それだけ言って俺はゴミを殺すために後を追った。
■■■
「ちょっと待ちなさいよ!」
辺りに鈴音の怒鳴り声が響く。
「……嫌」
「いいから、待ちなさいっての!」
鈴音は追っていた相手―――簪の腕を掴んだ。
「アンタ、どうして今日の試合に出なかったのよ」
「……一人……増えたところで……祐人に勝つことは…無理だから…」
「そんなの、やってみないとわからないじゃない!」
「……それは……あなたが彼を……よく知らないだけ……」
簪がそう言うと鈴音は引っぱたこうとする。彼女にとっては闘魂打ちのつもりだった。
―――ザザザ、ドンッ
その時、何者かが鈴音にぶつかって二人は弾き飛ぶ。
「っ痛ぅ。誰よ!」
「そっちこそ誰だよ。この天才束さんの邪魔するとはどういう神経しているんだよ」
「―――え?」
ぶつかった相手はなんと篠ノ之束だった。
「まぁいいや。今は逃げないと―――ん?」
束は簪に気付いた。
「(……こいつ、あのゴキブリと一緒にいた……)おいお前、ちょっと死んで」
「え?」
束は言うや否や、懐から銃を出してそいつに向ける。
「殺すのは心苦しいけど、邪魔だから―――」
―――ガンッ! ドンッ!
銃口を引こうとした瞬間、彼女は殴られて大木にぶつかった。
「もう! 一体誰―――!?」
その姿を見た束は目を見開く。そこには右手を悪魔の様に形を変えていた祐人が現れた。
「嘘……!? 何で………ちーちゃんは……?」
「今頃保健室でおねんね中」
「「え!?」」
祐人の言葉に反応を示したのは束と鈴音だった。そして簪に至っては、
(たぶん、スタンガン)
何を用いたのかを考えていた。
「ところでさぁ、自称天才」
「はぁ? 束様は十全の天才なんだよ。これだからゴキブリは―――」
「ふ~ん。自分の発明が認められなくて白騎士事件を起こし、結局は兵器としか見られてないじゃないか。それでどこが十全だって言えるんだ? それに―――お前がいう低レベルにことごとくとアンタの作戦を打ち破られたのに………」
「………」
何も言えないのか、彼女は徐々に自分の下唇を噛んでいった。
「まぁ、他人と馴れ合えない時点でお前は―――十全じゃないんだよ、欠陥人間。ISだってそうだ。女にしか扱えない時点で誰もが拒否するのに決まっている。まぁ、意図的にしているか知らないけど。それと、織斑千冬だけど―――死んだよ」
「「え!?」」
「つまらなかったなぁ。懇願するひまもなく呆気なく死んじゃったし」
束はキーボードを操作して千冬の状態を見る。
「………お前、お前ぇぇええええええッ!!!」
雄叫びと同時に上からミサイルが飛来する。それは祐人たちに直撃したかに思われた。
「温い温い。その程度で俺を殺そうと思っているみたいだけど―――無理だ。だってお前―――俺と違って弱いもん」
「黙れぇぇええええ!!!」
さらに上空からビームが撃たれるが、祐人たちに届くことはなかった。
彼はその間にプライベート・チャネルを簪に繋げる。
『今の内に凰を連れて逃げろ。援軍はいらん』
『……わかった』
簪は指示に従ってすぐに打鉄弐式を展開して凰を抱えてそこから離脱した。その間にも束の猛攻が祐人を襲うが、祐人には一つも通らなかった。
「何で……何で……!!」
「別に教えてもいいけど、お前には恨みが募っているからさ。知らずに死ねよ」
祐人の手に何かが現れ、それが割れると同時に祐人の手に黒い玉が現れる。そしてそれを束の方に投げた。だが、
―――ドォンッ!! ドォンッ!!
くーが束を庇って近接ブレードで弾く。
「ふ~ん。随分と献身的なんだな」
「束様は私の主ですから」
「へ~。まぁ、どうでもいいけど」
祐人はさほど気にせずに周りに黒い玉を展開した。
「襲え」
祐人の声を合図に黒い玉が一斉に襲った。
「―――ォォォオオオオオオオッ!!!」
雄叫びをあげながら白いISが乱入して、その後ろにフォローに回るかのように赤いISが乱入した。
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