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万華鏡

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第十七話 甲子園にてその十一

「そうしない?」
「あっ、いいわね」
 最初に頷いたのは景子だった。明るい顔になってその提案に頷く。
「六甲おろしみたいに」
「中日が優勝した時みたいなドラゴンズ応援歌みたいなね」
 そうした感じのだというのだ。
「そういうのはどうかしら」
「ドラゴンズなあ」
「ちょっとね」
 美優と里香はこのチームの名前を聞いて少し嫌そうな顔になって言った。
「その名前を出されるとな」
「あまり、だけれど」
「そうだよな、ドラゴンズだからな」
「巨人よりはずっといいけれど」 
 阪神ファンは巨人以外には寛容だ、相手が中日でもだ。
 だから今回もだがそれでもだった。
「流石にあの歌みたいなのはな」
「あまりよくないと思うけれど」
「いや、イメージでよ」
 琴乃はいぶかしむ二人に笑顔で話す。
「ああした感じでどうかなってね」
「コピーみたいなのじゃなくてか」
「あくまでイメージなのね」
「そうなの、それでどうかって思ったけれど」
 また言う琴乃だった。
「やっぱり駄目かしら」
「著作権的にもコピーじゃなかったらいいと思うわ」
 里香はここまで聞いて琴乃にこう述べた。
「それならね」
「そう、それじゃあね」
「ええ。六甲おろしとは別になの」
「六甲おろしはもうあるから」
 名曲である、これはもうあるからいいというのだ。
「それとは別になのよ」
「そういうことね。じゃあね」
「うん、作曲と作詞をしてね」
 琴乃はもうそこまで考えていた。
「作ってみようかなってね」
「優勝、ね」
 景子はこのことから考える顔になって言った。
「若しそうなったらね」
「嬉しいしそれでね」
「優勝は絶対になって欲しいわ」
 景子は心からこう願っていた。そのうえでの言葉だ。
「もう何があってもね」
「だからって思うし、私も」
「優勝したらそうした歌で」
 景子は言う。
「その他にも考えない?」
「阪神の歌?」
「選手の人達の歌とかね。いや、それは」 
 景子は自分で言ってからこの考えを引っ込めてこう言った。
「もうあるわね」
「選手の応援歌って多いわよ」
 彩夏がその景子に述べる。
「実際にね」
「そうよね、多いわよね」
「どのチームもそうだけれどね」
 このことは阪神に止まらない、チームは選手が作るものだ、その選手を応援せずしてどうなるかということだ。
「だからね」
「そうね。じゃあ選手の歌は」
「別にいいと思うわ」
「それじゃあチームの歌だけでいいわね」
「そういうことになると思うわ。けれど」
「けれど?」
「本当に優勝出来るのかしらね」
 彩夏はこのことを不安に思い顔にも出した。
「いや、どうなのかしら」
「今一位がヤクルトでね」
 里香がセリーグの今の順位を話した。
「二位が中日で」
「三位が阪神よね」
「後は広島、巨人で」
 憎むべき巨人の優勝はもう絶望的だった。誰もがこのことに歓喜している。
「横浜でね」
「横浜は相変わらずよね」
「あのチームは置いておいてね」
 心優しい里香はあえて言わなかった。 
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