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万華鏡

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第十七話 甲子園にてその九

「チャンスに打ってくれる主砲がな」
「一人いてくれたらいいのにね」
 里香は主砲は一人でいいと言う、だが美優はこう主張する。
「いや、二人だろ」
「二人もいるの?」
「三番と四番でな」
「四番だけで充分じゃないかしら」
 それだけでだというjのが里香だった。
「一人だけで」
「やっぱり二人だろ」
「優勝した時みたいに?」
「だからゲームにも入れてるんだよ」 
 バースと藤村をあえて入れたのである、主砲が二人いればそれで打線は見違えるまでによくなるからである。
「二人だよ、理想は三人な」
「三人もって」
「駄目かしら。一人じゃ」
「ダイナマイト打線じゃjないだろ」
「ううん、阪神は投手のチームだから」
 里香は阪神の歴史から語る。
「それでいいと思うけれど。これがソフトバンクとかだと違うけれど」
「ソフトバンクは打線か」
「打線と思うけれど。ダイハード打線とか」
 福岡ダイエーホークスの頃の打線の名前だ、とにかく打って打って打ちまくり相手チームを叩きのめした強力打線だ。
「四百フィート打線とか」
「何、その打線」
 琴乃はその四百フィート打線について尋ねた。
「聞いたことないけれど」
「南海ホークスの頃の打線の名前なの」
「古くない?ちょっと」
「昭和三十年代でね」
 やはり古い、五人から見れば。
「主砲は野村監督で」
「ああ、あの人最初は南海だったわね」
 琴乃もこのことは聞いていた。
「四番キャッチャーだったわね」
「そうだったのよ、最初はね」
「何かもう南海ってイメージじゃないけれど」
 諸般の事情でホークス側もあえて無視している。
「それでも最初はそうだったのね」
「そう、南海だったのよ」
「そこで三冠王だったって聞いたけれど」
「実際にそれになったから」
「凄い選手だったのね、監督としてだけでなくて」
「そうだったのよ。けれどそれでも」 
 ここでまたぼやく里香だった。どうも野球、阪神のことになるとぼやく様である。
「阪神の監督jの時は」
「あの時の阪神はね」
「どうしようもなかったから」
 琴乃に対してもぼやく。
「ピッチャーはよかったのに」
「先発いたしね」
「それに中継ぎがよかったじゃない」
 里香は中継ぎにも注目している、ピッチャーを見る視野は広い。
「中継ぎ課っていって」
「そういえばそう言われてたわね」
「阪神中継ぎ課ね」
「個性派が揃ってたわね」
「遠山さんとか葛西さんとかね」
 具体的な名前が挙げられる。
「いいピッチャー一杯いたでしょ」
「ええ、他のピッチャーならストッパーが出来る位の」
 そこまでの人材が揃っていた、当時から。
「とにかくピッチャーはいいから」
「後は相手より一点でも取ってくれれば?」
「それでいいのよ」
 里香の言葉も顔も切実なものだった。
「そうだけれど」
「問題よね、本当に」
「キャッチャーが欲しいわね。打ってくれるキャッチャー」
 里香はまた具体的に言った。
「城島さん引退したから」
「残念なことにね」
「もっと活躍して欲しかったけれど」
 やはり切実な顔での言葉だった。
「引退したら仕方ないから」
「ああしてリードがよくてホームラン打ってくれる人?」
「具体的には阪神の人じゃないけれど」 
 それでも出した名前はというと。
「古田さんみたいなね」
「大きく出てない?ちょっと」
「自分でもわかってるけれど」 
 里香は琴乃に弱い感じの声で返した。 
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