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取り合えず眠い(仮)

作者:槌元てひ
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その1~寝起き~

 
前書き

――あ~、今日は休みだからって良く寝過ぎた……
――全然頭が回らない……。まだ寝惚けてるな……

目が覚めた時は頭が寝惚けていてまともに思考が働かなかった。
それは何時もの事だから思考の隅に追いやり、母さんが居るか声を出した。

――母さん、起きているか?
――……………………
――居ない……、多分出掛けているんだろ

返事は無かった。時間を確認していないが恐らく昼頃だから、買い物か散歩に出ているのだろうと、納得した。

――取り合えず……、まだ寝惚けてるから顔を洗おう……

居ないなら、自分で朝飯(と言っても時刻的に昼飯だが)を用意するために寝惚けた頭を働かすために顔を洗おうと洗面台へ向かった。

――は……、身体が幼くなってる?

洗面台に行って俺はやっと気付いた。自分の身長が低くなっている事に。鏡を見て気付いた。自分の顔が15年程の幼くなっている事に。
そんな、現象に出会った俺はただ

――これは……、夢だな。そうだ、そうでしかない。
――夢なら暫くしたら覚めるだろ

そう思った。何度か身体が幼くなる夢を見た事があるからだ。だから、こう言う時の対処法は、目が覚めるまで暫く呆けていれば良いと言うのも知っていた。

――まだ覚めないか……。さっさと起きたいな

しかし、何時もと違ってどれだけ呆けても目が覚めない。

――夢とは言え同じところにずっと居るのは詰まらないな……
――出掛けよう。そうしてたら起きるだろ。

だから、気分転換に外を出歩こうと思った。
だけど、目の前に広がった光景は

――ここは……、いったい何処だ?

俺の全く知らない場所だった。
どこにでもありそうな街並み。だけど、俺の知っている街並みとは確実に違う。そんな、街並みを見てこう呟く事しか出来なかった。

――これは、本当に夢か……?

この世界での最初の記憶


 

 

その1~寝起き~



「ふぁ~あ……」

電気の着いていない部屋に1つの声が聞こえた。勿論部屋の主である俺の声だ。寝起きでロクにまわっていない頭を必死に動かし働かし体を動かし部屋から出て朝飯の準備へ向かう。

正直物凄く眠い。だが、今現在俺は9歳だから義務教育たるに行かなくてはいけないのだ。そうしないと、将来就職活動した時に内申点やら出身校とかで困るのは俺なので、怠い面倒だと思っていても行くしかないのだ。その上、行かないと怒る人物も居るから、余計に行かないと駄目だ。1日サボるだけで、説教の嵐が降ってくるのは経験済みだ。もう、あんな時間と精神力を削るだけの不毛な経験はしたくないので、行くしかない。

欠伸をしながら朝飯をつくる。トントンと包丁で食材を切る小粋の良い音が静かな家に響く。ああ、とても静かで長閑だ。本来ならこんな日にはゆっくりとしたいが、さっきも言ったように自分の将来の為に学校に行くと行かないと怒る人物が居ると言う理由があるからどうしてもゆっくりとサボれない。2回も思考したのは、多分それだけベットに未練があるからだと思う。

そんな下らない思考を切り上げ、切った食材を事前に焼いてあったパンに盛り付ける。これで簡単なサンドイッチの出来上がりだ。普通に自分1人で朝に食べる量より多めにつくる理由は、簡単で朝につくって昼に普通に美味しく食べられると言う理由と、まだ寝ている我が家の最後の住人の為の分と言う理由。

サンドイッチを口に咥えながら昼飯の分と住人の分をラップで包み、包み終えたやつの中の自分の分だけを弁当箱に入れる。その弁当箱を鞄に入れ、これで学校に行く準備は完了。後は黙々と学校に行くだけだ。

そこでふと振り返った。
後は、学校へ行くだけだと言うのに、また未練がましく振り返ってしまった。振り返った先にあるのは静寂。まるで俺以外、人が居ない様に感じる家。その事に一抹の寂しさを感じるが、馴れた事だ。だけど、最初はかなり寂しさをかなり感じた。

身体が縮んで、良く知らない土地に1人孤独に投げ出される。そんな非現実的な事を体験した数年前。少しでも孤独感を感じない様に、極力家に居ないようにしていた数年前。そんな、家に居たくない思考は今にしてみたら考えられない。

その数年間の間に仲良くなった人物も居るが、多分その人達のお陰だろうと1人納得する。まだ、この身体が今より小さかった頃に少し遊んでいた兎を思わせる寂しがりなアイツだったり、ここ1年で出会った、猫耳の付いた保護者みたいのだったり、本が好きな紫髪のアイツだったり、何時も人前だと笑顔であろうとする似非関西弁のアイツだったり。

この身体になる前では、考えられない様なバラエティに富んだ人物達。その上、全員が性別が女と言う。その事に、俺はもしかしたらかなり幸運な奴では無かろうかと思う。

しかし、内1人とはここ3年は同じ学校なのに喋れてもいないから案外向こうは忘れているのじゃないだろうか、と思う。まぁ、傷の舐め合いみたいな関係だったし、幼かったから忘れていても仕方ないかと、思ってしまう。

そんな、思い出に浸るのを止めて玄関に向かおうとすると後ろから声が聞こえた。

「真央、おはようございます」

後ろを見ると茶髪に本物の様な、いや、本物の猫耳を着けて、年齢相応な可愛らしい顔つきだが、同時に母親のような優しい物腰を感じさせる顔つきをしている、現在の俺の保護者代わりをしている人物が居た。彼女はここ1年程前に出会った人物だ。昔から、何故か分からないけど俺には魔法が使えた。前の自分だと使えなかったから、その魔法に興味を持った俺は日々魔法で遊んでいた。実例を上げると、『術式』と言う名の数式を様々な物になるように演算したりだ。そんな風に、魔法で遊んでいたある日、何時も魔法練習していた森で他の魔力を何となく感じて彼女と出会った。で、そこから色々あり今は彼女と暮らしている。そんな彼女を見て思う。

彼女は身体を保つために俺から魔力を貰っているのだが、普段は俺の魔力消費を抑える為にセーフモードなる、低燃費状態で身長と言うより身体が全身が幼くなっている。そんな彼女の身長はセーフモードの時は、今の俺とあんまり変わらない、いや俺より少し小さいから、客観的に見て、とても保護者には思えないな。と

「む、真央。今、失礼な事を考えたでしょう」

相変わらず、自然にこっちの心を読んでくる事に少しヒヤリと背中に言い知れぬ物を感じる。このまま無言で居ると、肯定と取られまた説教をされると思い、

「いや……、それは気のせいだ。リニス」

目の前に居る猫耳美少女、リニスにそれは否定した。
ふと、リニスを見て思う。そう言えば、何時もはリニスの方が早く起きるはずなのに今日は俺の方が早く起きたな、と。その事に珍しい事もあるのだなと思った。が、寝過ごした理由が少し気になったので聞くことにした。

「そう言えば……、今日は起きるのが遅かったな。何でだ?」

「いえ、昨日は少し頑張り過ぎたじゃないですか。だから、疲れてしまって……」

責めている訳でも無いのに、何故そう申し訳なさそうなんだか。いや、リニスはそう言う質だったな、と思い出す。そう言えば心なしか何時もより身長がより小さい気がする。多分俺から貰っている魔力を少なくしているのだろう。少しでも俺の負担を、安全を考えての行動。

その事を、主思いの従者だと思うか、頼りないと思われていると思うのかは、人それぞれだろう。俺は半々だ。リニスは主思いで、俺が頼りない。俺は、そう思っている。

「いや……、良いさ。お前は普段から頑張っているからな。
 ああ、言い忘れてたが、朝飯はサンドイッチだからな。
 机にラップで包んで置いてあるから食べとけよ」

「ありがとうございます。真央
 朝食にしても、本来なら私がしておく事なのに」

そうリニスは言うが俺は家族なのだから別にそこまで気負う必要は無いだろうと思う。やっぱり、リニスの中には従者は主に使える者と言う考えがあるのだろう。俺的には従者も主も支え合うのが一番だと思うので、結局気負う必要は無いと思う。

「だから、そう気負うな。
 さっきも言ったが、お前は普段から頑張っているのだから
 あ、そろそろ時間だし行くな」

そして、何時もの様に玄関の扉を開け
一回リニスに振り返り

「いってきます」

と言って学校へ向かった。そして、

「いってらっしゃい。真央」

そう後ろから聞こえた。
その事に、嬉しさを感じた。恥ずかしさを感じるから、顔や口に出したくないけど独りボッチは寂しい。だから、やっぱりリニスが居て良かったと思っている。

「さて……、学校へ行こう」

そう口に出して、走り出した。




そうして、何時ものバス停に着き携帯で、時間を確認する。
後、数分したらバスが着く。しかし、ただ只管学校行きのバスを待っているのは物凄く暇だから、

[そう言えば……、昨日は本当に苦労したな……]

とリニスに念話で話しかける。リニスの身長が縮んだ理由の話だ。

[ええ……、そうでしたね。
 しかし、何故『あんな物』がこの世界に落ちてきたのでしょうか?
 あ、サンドイッチ美味しいかったです]

『あんな物』
昨日の晩に、ここ海鳴市に落ちてきた危険物。リニスが居た世界だとロストロギアと言う。こっちの世界だとオーパーツか、オーバーテクノロジー
の意味だ。で、今回落ちてきた物は、放って置くと地球滅亡とかなるそうだ。

そんな危険物を自分の身の為と地球の為に、昨日の晩は朝方まで起きて、必死に封印して回収していた。その所為で、こっちは普段から足りていない睡眠時間を、削るハメにあった。落としたやつを見つけたら絶対に1発はぶん殴ろうと決意する。

[そんなの俺が、知っている筈がない。だけど、落ちてきた理由は少なくとも事故か故意の筈だ。個人的には事故の方が嬉しい。そっちの方が心労が減る。
 そうか、サンドイッチ美味かったか……。今度何か作った時の為にリクエストをしてくれ]

故意だったら、犯人をぶん殴って管理局と言う魔法関係の警察兼司法組織に引き渡さないと駄目だからだ。だったら、何故事故の方が良いのか?理由は回収したら、後は適当な世界に封印して放置しとけば良いからだ。基本自分と知り合いに被害が来なければ良い人間なので、そんな事も出来る。だけど、リニスは絶対に許さなそうだがな。

[ですね。でも事故にしても、やっぱり原因はある訳ですからそれも究明しないと駄目ですね。
 あ、真央がつくるご飯なら何でも良いですよ]

原因究明、その言葉にため息を吐きたくなる。回収して終了みたいなゲームな感じで終わらない事に。そんな簡単に出来ていない世界に、不自由さを感じるが「それが当たり前」だと思い納得する。

[結局心労が増える訳か。面倒だな。
 了解、今度はお前が好きな魚料理にでもする]

[管理局に通報しますか?]

リニスの声の調子が上がっている事に気付く。今度は好きな魚料理だから、嬉しいのだろう。腕に縒りを掛けないとな。しかし、管理局か……。尋問とか同行とかがありそうで面倒だな。それに俺らが連絡してなくても結局来るだろう。

[いや、しない。奴等ロストロギアには過敏なんだろ?だったら、ハゲ鷹みたいに来るさ。来なくとも、俺らでも回収は出来るさ。時間はかかるだろうけど。あ~、本当にデバイスが欲しい]

俺が魔法を使うときは何時も自分で演算して、発現させている。デバイスが無いのだから仕方ない。本当に演算を変わってくれるデバイスが欲しい。基本的に術式はリニスが教えてくれるけど、俺の魔力量は特筆するほど多くないので、その度に術式を組み換えて燃費の良いやつに変えている。その所為で術式がオリジナルと殆ど変わってしまい、俺オリジナルになってしまっている。

[あぁ……、確かに管理局はロストロギアには過敏ですからね。その所為で地上の犯罪が増えているのですから本末転倒と言いますか、何と言いますか……。
 でも確かに、管理局が来る来ないにしても、真央にはデバイスが必要ですね。機材があれば私が作っていたのですが無いですからね……。でも、デバイスが無くても魔導師ランクが大体B+~Aあるのは凄いですよ]

魔導師ランクB+~Aと言われても、今一実感が湧かない。理由はリニス以外と魔法で戦った事が無いからだ。しかしリニス曰く、デバイスありでB+~Aは管理局だと天才ではないが十分出世出来るそうで、デバイスをありの俺だとAA~AAAは行きそうなのでこの歳でそれだけの実力があるなら十分天才だそうだ。

[マルチタスクでの高速演算と、高速詠唱か?アレは元々数学が得意なのと、早口言葉が得意だからだ。それに戦闘だとかなり有効な誘導弾何て使えないからまだまだじゃないか?]

誘導弾は相手に当たるまで永遠と演算しないと駄目で、面倒臭いから苦手だ。普通はその演算の一部をデバイスに任すものらしいがさっきから言っている様に生憎俺にはデバイスが無いので、戦闘しながら誘導弾何て使えない。

[そうでも無いですよ。誘導弾は結構技術が必要な物ですから
 それに真央には『あのスキル』がありますから、使えなくても関係ないですよ]

『あのスキル』
俺が初めての実戦で怪我が無いのと、デバイス無しでも魔導師ランクがB+~Aになっている理由。使う為の条件は特に無く性能は壊れと言うバグとしか言い様のないスキル。だが、一応欠点もある。燃費がとてつもなく悪くて、使い方によっては再使用に時間を空けないと駄目で、連続使用が出来ない。ただ、性能だけ見れば本当にバグとしか言い様がない。このスキルを完全に制御出来るようになったら誰にでも勝てるし、世界征服も出来る。仮に制御出来るようになっても、必要な時以外は使う気は全く無いが。

そんな風に念話をしているとバスが来た。
そのバスに乗り込み、どこの窓際の席が空いているか見る。空いていたのは一番奥の右側だけ。しかし、中央には俺の通っている学校で美少女だと有名な3人組が座っていた。その3人、高町、月村、バニングスは楽しそうに談笑している。この3人とは一緒のクラスで内2人とは一応知り合いだが、仲良さそうに話している横に座るのは少し悪い気もする。が、俺も席に座りたいからそこへ歩を進める。

「相席良いか?」

そう一言、客観的に見て無愛想と言えるような感じで聞いた。そんな、無愛想な聞き方した俺の言葉に3人は少し間を空けてけど嫌な顔をせず「良いよ」と言った。その言葉を聞いて

(まぁ、小学3年位なら別に同じ学校の異性との相席程度、気にしないか)

とか一人そう思いながら窓際の席に座った。
俺と3人の位置関係は1人分の席を空けて座っている。
席が1人分空いているとはいえ、3人の会話が良く聞こえてくる。同級生とはいえ、女子の会話だから何と無く聞いては駄目だと思った。3人の会話を聞かないようにする為に、バスが走っている間窓を少し開け風が流れる心地好い音を聞こうとしていると、良いタイミングでバスが発進した。

三人の談笑(詳しい内容は聞いていない)とバスのエンジン音と風の流れる音をBGMに少し開いた窓から空を見て、ふと思う。
今日も平凡で平和な日だ。と
 
 

 
後書き
のんびりやっていきます。 
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