剣の世界の銃使い
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宿での一コマ
食事を終えた後、明日に備えて早めに休むことにした。レストランの上に上がると2階はずらっと客室が並んでいて、俺が部屋を探し当てると、そこは意外にもシリカが取っている部屋の隣だった。シリカとお休みを言ってから、部屋に入る。
「うーん、ちょっと面倒なことになったかなぁ・・・」
その呟きは彼女の手助けをすることに対してではない。逆にそういう自分の好奇心をくすぐるものは大歓迎だ。しかし、先ほどから、それではないある過程が徐々に出来上がってきてしまっているのだ。
「今はどうすることもできないし、後で考えるか」
それについて考えるのを諦め、俺はミラージュスフィアを取り出し、いろいろなことを書き込んでいた。ミラージュスフィアには一度行った場所の立体地図を出せるだけでなく、その場所の情報などを書き込めるようになっている。そのため、俺は地図のいたるところに色々な情報を書き込んでいた。
一通り書き終わり、一息つく。とりあえず明日の準備をするかと思い、ミラージュスフィアで47層の立体地図を展開しようとすると、扉に2回ノックがあった。俺は立ち上がって、ドアの前で尋ねた。
「こんな時間に、誰だ?」
「あ、シリカです・・・」
ドア越しに聞こえたのは、少し前に分かれたばかりの少女の声だった。それを聞いてから、扉を開ける。するとやはり、チュニックを身に纏ったシリカが部屋の前にいた。彼女を部屋の中に入れてから、俺はもう一度尋ねた。
「んで、どうかしたのか?」
シリカが少し沈黙する。それから少し慌てたように言った。
「ええと、あの___よ、四十七層のこと、聞いておきたいと思って!」
最後の方は早口になっている。多分今とっさに考えたのだろう。
ん、分かった、と言ってシリカを椅子に座らせると、俺はベットに座る。机の上に置いてあったミラージュスフィアを起動するとすぐに立体地図が展開される。
「きれい・・・これって何ですか?」
「ミラージュスフィアっていうアイテム。一度行った場所のマップを出せるから、地図よりも役に立つんだよ。」
簡単にアイテムの説明をしてから、もう一度地図の方に目を向ける。
「これが主街区で、ここが明日行く思い出の丘だ。この道を通っていくんだが、ここのモンスターが少しレベル高いから注意した方がいい。あとは、そうだな・・・ここの店が結構いい味の肉まん売ってたり・・・・・」
指先を使って、四十七層の地理や情報を説明していく。丁寧に説明していき、説明が丘の少し前まで来たところで、あることに気づいた。
部屋の前にプレイヤーがいるのだ。それもさっきから全く動こうとしないで、この部屋の前にいる。話を続けながらも、扉に向ってこっそりと歩いていく。それを不思議に思ったシリカが視線を向けてくるが、静かにというジェスチャーをして、扉の前に近づく。そして、一気に扉を開くと、目の前にいた男に言い放つ。
「今日は来客が多いねぇ。で?こんな時間に何の用事だ?」
扉の前にいた男は、答えずに一目散に逃げていく。追いつこうと思えばいくらでもできるが、圏内じゃどうにもできない。それに捕まえるのも面倒くさい。すぐに後ろからシリカが部屋から顔を出したが、もうその時には、男は階段を下りて行く所だった。
「な、何・・・!?」
「大方盗み聞きだろうなー」
「え・・・でも、ドア越しじゃあ声は聞こえないんじゃ・・・」
「聞き耳スキルってのを上げてれば、部屋の中の声くらいは聞くことができるからな・・・尤も上げててもたいしたことはできないし、あんまりどころか、ほとんど役には立たないからお勧めはしないぞ?」
そんなの要りません!と彼女に怒られ、肩をすくめる。彼女は結構生真面目な方らしい。
シリカを部屋の中に戻し、扉を閉める。
「さて、邪魔が入ったな・・・どこまで話したっけ?」
「え?え?さっきの人は!?」
「目的はよくわからんが、どうせ圏内じゃ何もできないし、忘れていいんじゃないか?」
「そ・・・そんなに簡単に」
シリカにあきれられるが、実際その通りだし。彼女も諦めたのか、また話にもどる。
一通り話し終わったところで、彼女のほうから話題を振ってきた。
「そういえば、森にいたときに、レイトさんが持ってた武器って何なんですか?」
やっぱりそこくるか・・・。
「あー・・・・シリカにはもうばれてるからしょうがないけど、このことは他言厳禁ね」
「はい」
アイテム欄から、2丁銃の片方をオブジェクト化させる。
「これって・・銃ですよね?」
「ん。エクストラスキル《銃火器》な。ちょっとしたことで手に入れてな」
「へぇ・・・」
「ま、この話はまた今度ってことで」
そこで話を切り上げ、銃をしまう。今度はこちらから話しかける。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「なんですか?」
これから頼むことは若干マナー違反に関わることだ。
「マナー違反なのは分かってるんだが、敏捷と筋力、どっち重視で振ってるかだけ教えてくれないか?頼む」
「それくらいでしたら・・・えと、私は敏捷寄りですかね。大体7:3ぐらいですね」
「ん、助かるわ」
敏捷寄りでバランスのいい振り方っと。ちなみに俺は敏捷特化の9:1だ。まあ、俺がおかしいだけなんだが。
となると、戦略的には俺が足止め、シリカがアタッカーになるか。
「ちょっとメッセージ送るから待っててくれるか」
「はい」
とある人物に対してメッセージを書いていく。あまり関係のない話だが、この世界に来てタイプの速度も上がった。上がって困ることじゃないし、便利だし。
「と、これで終了。さて・・・」
シリカの方に向き直ると、いつの間にか彼女は俺のベットの上でもう眠りに落ちていた。何度か体をゆすってみるが、一向に起きる気配はない。
「流石に起こすのも可愛そうだしな・・・」
起こすのを諦め、掛け布団をかけてやる。椅子で寝るのは久しぶりだが、まあなんとかなるだろう。
それにしても、さっきの連中といい、盗み聞き野郎といい、なんかしら面倒なことに巻き込まれているのは分かっている。対策法を何個か考えつつ、俺は眠りに落ちていった。
後書き
感想とか待ってます!!
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