インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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過去話~戦うチルドレン
その組織は意外に大きく、中には演習上があった。
そこには俺と結華が立っていた。
「…………この広さ、IS用に造られたフィールドだろ」
「ええ。でも、あなたにとってはこっちの方がいいでしょう?」
俺は試合前に渡されたヘッドギアに触れる。克己曰く、「これは絶対に戦うときに必要」らしい。
「何も聞いていないと思うから説明するわ。それにはISの絶対防御の機能が備わっているの。ここにいれば手加減ができないようになるからそのために、ね。だからあなたも本気で来ればいいわ」
周りからのヤジを聞き流しながら必要なことだけ聞いて俺は頷いた。
「ところで、武器はいいの?」
強い故か、何も持っていない俺に声をかけてくる。だが、
「いや、いい」
「そう。だけど、私は手加減しないから」
「必要ない。されても迷惑なだけだ」
どうせなら全力で戦いたかった。
『では、始め―――!!』
開始合図のブザーが鳴り、ベレッタを発砲される―――が、
―――キィンッ!
こっちも同じベレッタで迎撃し、銃弾を弾いた。
試合を見ていた子どもたちが驚き、騒然とする。
「やるねぇ。だけど、ただでは―――!!」
結華がそこから跳躍すると同時にさっきまで彼女がいた場所から鎖が這い出でてきた。
「さっきも思ったけど、武器は使わなかったんじゃ―――」
「俺が使わないのはここにある武器だ。誰かが俺を妨害する恐れがあるから整備はいつも自分でやる」
鎖は徐々に結華を追いつめ、俺も追うが急に誰かに吹き飛ばされた。いや、正しくは妨害された。
「おわっ!?」
向こうも同じように吹き飛ばされそうになった。
「なるほどな、妨害アリってことか」
「すっかり忘れていたわ……」
「いや、そこは忘れるなよ!」
鎖制御を自動に変え、脳への負担を減らす。
俺は結華の方に一気に移動するが、彼女はダイナマイトを使って鎖を止めると同時に俺の動きも止めるつもりだろう。同時に改造銃だと思われるベレッタ二丁をこっちに向けて連射してきた。
―――ドォンッ!!
「……なんとか、これで大ダメージは与えられ―――嘘でしょ!?」
結華は途中で言葉を切る。
確かに鎖は弾け飛び、周りの妨害装置もいくつかは破損した。だが、俺まで攻撃は通らない。
「ぜ、絶対防御でも、今のはさすがに―――」
―――ジャララ……ザスッ!
鎖が別の方向から現れ、結華の動きを止めるかのように動かす。
「悪いが、俺は平凡の影で生き抜くことを強制されてきた。ただの一般人と一緒にされては困る」
俺はそう言うと同時に緋色のクリスタルと菱形のくぼみがある刀《エレメント・ブレード》を展開し、緋色のクリスタルを装着した。
「燃えろ」
刀を一薙ぎすると、そこから炎を纏った刃が一直線に結華に向かって進む。
彼女はほんのギリギリでそれを避けるが、俺はそこまで甘くなかった。
まだ滞空している間、俺は別のクリスタルの力を開放した。それは緋色のクリスタルが炎なら、その草原を思わせる黄緑は風。そういう力を宿したクリスタルを俺は『エレメント・コア』と呼んでいた。
その力を使って着地と同時に地面を蹴ってISに匹敵するほどのスピードで結華の首に刃を寸止めする。
「………勝負、あったな」
「……ええ、そうね」
この後、俺の勝利が確定し、観客―――特に子どもが驚いていた。
「………まさか、最初は手加減を?」
「……まぁ、ちょっとはな。以前は守りたい人がいたけど今はいないから」
そう言って俺は結華に手を差し伸べた。
「ありがとう」
「気にするな。後、俺は寝るために自室に戻る」
結華を立たせた後、俺はその場から去って自分の部屋に戻った。
(久々に力を開放したから……疲労が多い……)
施錠したことを確認し、ベッドに潜って眠った。
■■■
どれくらいの時間が経ったのだろう。
そんなことが頭によぎり目を覚ましてみると、そこには先ほど戦った結華が俺を見ていた。鍵は閉めていたはずなんだが……?
「……何でここに?」
「……いえ、先ほどの無礼を詫びに来たのです」
どうして敬語? そして無礼?
そこまで考えてある結論にたどり着いた。
「……もしかして、俺がここでビデオ鑑賞をしていた時の?」
「ええ。それ以外にはないかと」
「だったら別にいいって。俺が勝ったのはただのマグレだから。……それで、何で敬語?」
「それは私があなたに負けたからです。目上に敬意を払うのは当然のことです」
「気持ち悪いので敬語は却下。それが嫌なら命令な」
本当はそうでもないのだが、見た目は同年代だからということでタメ口をさせる。
「じゃあ、兄さん」
「………」
おそらく、今の俺は顔が引きつっているだろう。
俺は一時期「にーにー」やら「お兄ちゃん」など呼ばれていて、何故か急に身震いしたり鼻血が出たりと何故かその言葉を体が受け付けなかった。
(………あれ? 珍しくそれがない)
どうやらそれがないらしい。
「……駄目だった?」
「いや、いいよ、それで」
俺が許可を出すと結華は満面の笑みを見せて喜んだ。
(何故それで喜ぶ?)
そんな疑問を持ちながら、俺はこれからどうしようか考えるのだった。
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