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八条学園騒動記

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第百五十話 何と相手はその八


「専門家じゃないですし。僕は」
「専門家でもわからないものだよ。完全にはね」
「完全にはですか」
「うん。だからね」
 わからないというのである。
「それについてはね」
「何かまだ僕にはよくわからないですけれど」
 ロミオは難しい顔になっていた。その難しい顔での言葉だった。
「そういうものなんですね」
「うん。じゃあそれでね」
「わかりました」
 ロミオはまた頷いた。これで話は終わりだった。そしてそのうえでまた言うロミオだった。
「それでおじさん」
「何だい?」
「その商品ですけれど」
 話は商品に戻っていた。彼が戻したのだった。
「ちゃんとした値段で買いますから」
「そうだね。それでいいよ」
 何と彼もそれでいいというのだった。皆それを聞いて目をしばたかせることになった。そうしてそのうえで皆で話をするのだった。
「心変わりしたのかしら」
「そうみたいだね」
「今の話で」 
 皆そう捉えていた。
「改心かな」
「そうじゃないの?」
 改心という言葉もあがった。
「やっぱりこれって」
「いや、そうじゃないかも」
「そうね。これは」
 その中でペリーヌが言う。昨日彼と対峙した彼女がだ。
「ほろりときたのじゃないかしら」
「ほろりと」
「じゃあ改心なのかな」
「そう思うわ。私はね」
 彼女も改心と見ていた。それは決して同情やそうしたものから見ているのではなかった。あくまで冷静に見てそのうえで言っているのだった。
「改心したんでしょうね」
「成程ね」
「そうなったのね」
 皆これで納得した。その間にもロミオと彼は話をしていた。それは商売の話だった。
「じゃあこのモデルガンは」
「君の言った値段の通りだよ」
 こう述べたのだった。
「それでいいよ」
「じゃあ一万テラですね」
「うん」
 穏やかな微笑と共に頷いてみせたのだった。
「そうだよ。一万テラだよ」
「わかりました。それじゃあ」
 ロミオは自分の財布からすっと一万テラを出した。男もそれを受け取る。そのうえでモデルガンを引き渡しそれで話は終わったのだった。
「有り難う」
「はい」
 男もロミオもそれぞれ言う。
「また来てね」
「ええ、また」
 挨拶は温かいものだった。
「縁があれば」
「そうだね。アッラーのお導きがあれば」
 如何にもサハラの人間らしい言葉だった。
「来てね。またね」
「わかりました」
 こうして二人は別れた。ロミオはそのモデルガンを持って帰った。その彼を皆が出迎える。そうしてしんみりとした調子になってる告げてきたのだった。
「いい買い物したわね」
「うん」
 ロミオはまずはペリーヌの言葉に対して頷いた。
「満足しているよ」
「そうでしょうね。そのモデルガンよね」
「これ。お宝になるね」
 ロミオはこうも言うのだった。
「これね。ずっと持っているから」
「そうするべきよ。それじゃあね」
「帰ろう」
 ロミオから皆に告げた言葉だった。
「これでね。行こうか」
「ええ。それじゃあ」
 また言うペリーヌだった。彼女が主にロミオと話す形になっている。
「何処に行こうかしら」
「僕の家なんてどうかな」
 ここで自分の家でと提案するロミオだった。
「僕の家で皆で。どう?」
「あっ、そういえば」
「今までロミオの家に行ったことないわよね」
「確かにね」
 皆このことに気付いたのだ。誰もロミオの家に行ったことはないのだ。ロミオにしろ実は自分の家に誰かを招いたことはないのである。
 そのことに気付いたうえで。皆話をするのだった。
「それじゃあ」
「いいかしら」
「うん、いいよ」
 ロミオとしてもいいということだった。
「それじゃあね。今から僕のお家にね」
「行きましょう」
「そうして楽しくね」
 そんな話をしたうえで皆でそのロミオの家に行くのだった。サハラの男との話は終わり今度はロミオの家での話となるのだった。


何と相手は   完


                   2009・8・20 
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