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万華鏡

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第十七話 甲子園にてその六

「学校がサンダル駄目っていうのもやっぱり」
「危ないっていうのもあるわよね」
「走れないしね」
 体育の授業なぞ論外である。
「学校の中にいたら色々動くから」
「だから駄目ってことね」
「昔は下駄履いてくる人もいたらしいけれど」
「下駄もね」
 それもだった。
「あれも足出てるからね」
「危ないわよね。歩きにくいし」
 下駄は慣れないと歩きにくい、そういうことだ。
「だからね」
「靴の方がいいわよね」
「球場とか学校とかだとね」
「じゃあ暑いのは我慢して」
 安全優先、それでだった。
「靴ね、今は」
「それでなの」
 彩夏は笑って話す。そしてだった。
 今度は里香がこんなことを話した。
「甲子園って足元も危ないから」
「足踏まれたりするしね」
「色々なものも落ちてるから」
 琴乃にもこう話す。
「サンダルで行くところじゃないのよね」
「夏でもね」
「足の裏からの怪我って怖いから」
 里香はこのことを真面目に言う。
「例えば。最近はあまりないけれど」
「あまりって?」
「錆びた釘とか踏んだら危ないから」
 それが危ないというのだ。
「破傷風にもなるから」
「破傷風なの」
「破傷風は怖いから」
 実際に強張った顔で話す里香あった。
「少しでも治療が遅れたら死ぬから」
「そんなに怖いの」
「そう。お母さんから聞いたけれど」
 ここでは母親だった。
「破傷風は凄く苦しんで死ぬから」
「かかるべきじゃないのね」
「だからね。そういう危険があるから」
 サンダルはというのだ。人の多い場所では。
「駄目なのよ」
「そうなのね」
「だから私も靴だし」
 それは里香もだった。
「というかいつも靴にしてるの」
「そういえばそうよね」
 琴乃は里香に対しても言った。
「里香ちゃんいつも靴よね」
「そうでしょ」
「それに服もいつも」
 里香の今の服はライトブルーのくるぶしまであるワンピースだ。その上に白いカーディガンを肩にかけている。
「ガードが固いっていうか」
「冷やさない様にしてるの」
「そうよね、いつも」
「身体を冷やしたらよくないから」
「夏でもなのね」
「そうなの、だからね」
「ううん、里香ちゃん足奇麗なのに」
「足も冷えやすいから」
 それで今の様にロングスカートをはいているというのだ。
「私も気をつけてるの」
「けれど里香ちゃん冷え性じゃないわよね」 
 その冷え性の景子の言葉だ。
「特に」
「多分ね」
「私なんか本当に冬大変だから」
 またこの話になる。 
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