万華鏡
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第十七話 甲子園にてその二
「お母さんお肉は」
「お肉がどうかしたの?」
「最近羊よく使うわね」
「あれね」
「そう、最近凝ってるの?」
「気に入ったのよ、最近」
羊の肉のその味がだというのだ。
「それでよく使ってるのよ」
「それでなのね」
「そう。美味しいし安いし」
「カロリーも少ないわよね」
「いいこと尽くめでしょ」
母は今度はスープを碗の中に入れていた。湯気とかぐわしい香りもそこにある。
「羊は」
「そうね。ただ匂いがあるわよね」
「それも慣れるといいものでしょ」
「私は平気だけれどね」
マトンの匂いだ、羊の肉を嫌う人はこの匂いで嫌うことが覆い。
「それでもね」
「お父さんは少し苦手かしら」
「そうかもね」
琴乃はこのことは少しであるが察していた。話をしながらテーブルに座る。
その琴乃に対して母はさらに言う。
「あまりマトンを食べるところ見たことないからはっきりとはわからないけれど」
「マトンはね。本当に匂いが強いから」
「ラムにしようかしら」
子羊の肉である。マトンは成人の羊の肉だ。
「それなら」
「ラムはあまり匂いしないからよね」
「そうよ。本当に羊のお肉はね」
「カロリーも低いししかもよね」
「美味しいし安いのよ」
「牛肉に比べてずっとよね」
「あんないいお肉は滅多にないわよ」
母は羊肉に対して手放しの絶賛で語る、その言葉には熱いものさえ宿りそのうえで娘にその餅を差し出した。
無論スープもだ。琴乃はいただきますをしてから食べるがそのうえで食べながら母に対してこうも言った。
「中華料理でも羊よく食べるの?」
「食べるわよ」
返答は即座だった。
「中国では何でも食べるじゃない」
「だからなの」
「四本足のものは机や椅子以外はね」
「全部食べるの」
「空を飛んでるものは飛行機以外」
「バッタとかトンボも」
「虫も食べるからね」
だからバッタやトンボもだというのだ。母は娘にさらに話す。
「海や川のものだとね」
「船以外は、なのね」
「そう、とにかく食べられるものは何でも食べるのが中国人だから」
「羊もなのね」
「羊は北京料理で有名だから」
四大料理の一つである、その北京に上海、広東、そして四川の四つだ。大きく分けてこの四つに大別できる。
「よく使われるのよ」
「そうなのね」
「琴乃ちゃんは中華はどっちかっていうと」
「海老とか貝とかお魚が好きだから」
琴乃はシーフードが好きである。それは中華料理でも変わらない。
「それだとどうなるの?」
「広東よ」
そちらになるというのだ。
「そこにね」
「広東なの」
「そう、そこよ」
「広東料理ね。それだったら」
琴乃はそのことを聞いてまた言う。
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