八条学園騒動記
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第百四十四話 話のわかる漫画家その五
「それも当然だよ。だってこの世は神が治めているんだよ」
「神がなんですか」
「キリストの神様が」
「ああ、神様は一人じゃないだろうけれど」
これは連合特有の考えであった。連合ではやはり多くの宗教がありそれが共存しているからこうした考えに至るのであった。神父でもある彼でもだ。
「キリスト教の神様もね。治めているから」
「あの神様もなんですね」
「それで他の神様も」
これが連合の考えである。エウロパでも大体同じだ。やはり複数の宗教が同時に存在しているとこうした考えに至るのである。
「そういうことなんですね」
「それでですか」
「うん。僕の信じている神様が治めているから」
そして今度はこう言うのであった。
「だから。そうなるんだ」
「そうですか。それでなんですね」
「この世界は治まっているんですか」
「そう思うよ。それじゃあ後は」
話が終わったと見てだった。橋爪はここで話を変えてきた。
「今から散歩に行くけれど」
「あっ、はい」
「それじゃあこれで」
「いや、時間はまだあるから」
皆彼に礼をして帰ろうとしたがそれを呼び止めるのだった。
「だからね。よかったらだけれど」
「よかったら?」
「何かありますか?」
「サインしていいかな」
こう自分から申し出てきたのであった。彼自身からであった。
「どうかな。何かあればよかったら」
「えっ、サインって」
「先生がですか!?」
売れっ子漫画家のサインである。皆この申し出にびっくりした。
「私達にですか」
「いいんですか!?それって」
「いいよ」
ここでも穏やかな微笑みであった。
「さあ、色紙はこっちで用意してあるし」
「色紙もあるんですか」
「サインペンもね」
それも用意しているというのだ。何もかも用意しているのだった。
「あるからね。だから喜んでさせてもらうよ」6
「そうですか。それじゃあ」
「御願いします」
彼等としても願ったり適ったりの話であった。やはり悪い話ではない。
「僕はシャツにも御願いします」
「私は帽子に」
「うん、待ってね」
まずは色紙を用意して次にサインペンを取り出す。そうしてそのうえで彼等にサインを書いていく橋爪だった。やはりその間も温厚な笑みを浮かべている。
「さて、これでいいかな」
「はい、有り難うございます」
「どうもです」
皆そのサインを書いてもらった。やはり喜ばしいことであった。
「それじゃあ有り難うございました」
「これで」
「またね」
双方共に挨拶をした。
「今度は単行本持って来てくれたらね」
「それにサインしてくれるんですね」
「単行本に」
「うん、させてもらうよ」
やはりこう答えるのだった。
「是非ね」
「それじゃあ今度は」
「持って来ますね」
「その時またね」
こんな話をしてそのうえで別れるのだった。彼等は笑顔で橋爪と別れた。そうしてそのうえで今は戻るのだった。そしてその中で話をしていた。
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