八条学園騒動記
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第百二十五話 鏡の間その五
「鏡には色々と宿るものがあります」
セーラは前に進みつつその皆に対して語る。
「そう、色々なものが」
「色々なものっていうとやっぱり」
「あっちの世界ってことよね」
「だからこそ魔界ともつながるのです」
セーラはまた話した。
「その鏡もまたそうです」
「そうなるのね」
アンもそれを聞いて頷いた。セーラが先頭を進みラメダスとベッキーがその彼女を護るようにして彼女のすぐ後ろに左右並んで歩いている。アンはその二人のすぐ後ろにいるのだ。
「何か話がオカルトに向かうなんて考えなかったけれど」
「オカルトという言葉を否定しても何にもなりません」
セーラはこうも話した。
「それは可能性として常にあるものですから」
「常にね」
「あらゆる可能性があります」
「その中にオカルトもある」
「そう言いたいのね」
「その通りです」
また皆にも話す。
「この世界での事件は常にこの世界の存在が為すとは限らないのです」
「この世界のねえ」
「意味深い言葉ね」
まさに今回の事件がそれである。何しろ只の落書きがこうした大騒動にまで発展している。だからこそ皆意味深い言葉になっているのである。
「そしてそ鏡だけれど」
「あれね」
その鏡が見えてきた。
「さて、あの鏡ね」
「何か一見すると只の鏡だけれど」
「妖気に満ちています」
セーラが見ればそうなのだった。
「まさに魔界そのものの妖気が」
「妖気っていうとあのゲゲゲだけれど」
「髪の毛立たないぞ」
二十世紀からある古典漫画である。やはりこの作品も作者の手を離れてこの時代においても連載されている。妖怪漫画として日本から生まれた名作である。
「俺も」
「私も」
「それは彼もまた妖怪だからです」
セーラもその漫画を読んでいるのだった。
「人間である私達にはそうした能力はありません」
「そうなの」
「それでもです」
だがセーラの言葉は続く。
「妖気は感性を研ぎ澄ませば感じ取ることができるのです」
「その研ぎ澄ませばってこと自体が難しいけれど」
「ちょっとどころじゃなく」
「さて、はじめましょう」
皆の話をよそにその鏡の前に来た。その鏡の前に来るとセーラの顔が普段の温厚な表情が真剣そのもののものに一変していた。
「この鏡、まさに」
「まさに!?」
「魔界の扉です」
こう言うのである。
「妖気が湧き出てきています」
「感じる?」
「ちょっと」
やはり皆にはわからなかった。
「ただ。寒気はちょっとするかしら」
「そういえば僕も」
「その寒気こそです」
セーラは鏡の正面に立ちそれを見据えたまま皆に述べる。その後ろにはやはりラメダスとベッキーがいて何かを出そうとしている。
「それこそが妖気を感じ取っているということです」
「これが?」
「その通りです。それだけこの鏡からは強烈な妖気が湧き出ています」
また話す。
「御注意を」
「ううん、どんどん話が大きく凄くなってるわね」
「もう何が何だか」
皆も唖然とするばかりである。
「それでセーラ」
「はい」
ルビーの言葉に応える。
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