| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十六話 二人で食べてその七


「やっぱり彰子だし」
「明香ちゃんもね。明香ちゃんね」
「その頃からそうだったんだ」
 それで次はこう言うのだった。
「けれど。それで」
「その時はそれで終わりよね」
「ええ、そうよ」
 七海はまた皆に答える。
「それでね。皆でそのクッキーと他のお菓子も食べて」
「終わりね」
「それからまだあるのよね、それでも」
「ちょっとそれは」
 七海の言葉が急に鈍った。
「まあね」
「まあねって」
「あったんでしょ」
「この話はこれで終わったのよ」
 見ればその顔も少しばつの悪いものになっていた。
「これでね」
「えっ、これで終わり!?」
「それだけなの?」
「とりあえずはお菓子を食べて終わったのよ」
 こう皆に述べるのだった。
「そのクッキーをね」
「美味しかった?」
「ええ」
 この質問には答えることができた。
「それはね。ただそれから長い間経って」
「それでどうなったの?」
「わかったのよ」
 こう言う七海だった。
「最近にやってやっとね」
「クッキーの意味がね」
「そういうこと」
 彼女が言うのはそれであった。話は一旦終わったがそれからというわけだったのだ。話は一旦終わってもそれで完全に終わりとは限らないものなのだからだ。
「それでわかったのよ。どうして暖かいのかね」
「成程」
「暖かい氷ね」
「そうよ。それでやっと」
 言うのだった。
「わかったのよ。その暖かいクッキーはね」
「どうだったの?」
「美味しかった?やっぱり」
「まず言うとね」
 皆に微笑み、そのうえで述べる七海だった。
「暖かかったわ」
「暖かかったの」
「そして甘かったわ」
 また言うのであった。
「とてもね。今思い出してもあれが一番美味しいクッキーだったわ」
「一番なの」
「そう。今まで食べた中で一番美味しいクッキーだったわ」
 七海は答える。
「あれがね」
「そういうのを明香ちゃんは食べているのね」
「そのクッキーを」
「そうなのよね。それを考えたら」
 七海はさらに言葉を続ける。
「明香ちゃんってね」
「そうね。やっぱり」
「幸せよね」
「そういうお姉さんがいてね」
「そうよね。それも最近になってわかったわ」
 これもわかった七海であった。
「やっとね」
「だから私のお薬も通じなかったの」
 アンジェレッタもここで納得した。
「そういう絆があるから」
「そういうことね」
 アンジェレッタのその言葉に頷くコゼットだった。
「だからなのよ。彰子にあのお薬が通じなかったのは」
「元々妹さんが大好きだからなのね」
「そして妹さんも」
 同じだと言うコゼットだった。
「そうなのよ。やっぱりね」
「ううん、何かかなり羨ましいかも」
 ここまで聞いてふと呟くアンジェレッタだった。
「そういうのって。やっぱり」
「さて、と。私の話はこれで終わりよ」
 ここで話を実際に終えるアンジェレッタだった。
「これでね」
「お疲れ様」
「いい話だったわよ」
 話が終わると皆から労いの言葉を受ける。
「そうかあ。昔からいい姉妹だったのね」
「けれど。何かね」
「そうね」
 顔を見合わせて言い合いだした一同だった。
「何かあのアナコンダに久し振りに会いたくなったわよね」
「エリザベスに」
 その草食性のアナコンダだった。
「元気かしら、今も」
「元気なんじゃないの?アナコンダって長生きだし」
 普通に相当の時間を生きることで有名なのがそのソウショクアナコンダである。鶴は千年、亀は万年と言われているが流石にそこまではいかないにしろやはり長生きの生き物なのが大蛇でありその中でもこのソウショクアナコンダはかなりのものになっているのだ。
「百五十年じゃなかったっけ」
「確か今七十位だから」
「まだまだね」
 純粋に考えてまだあと八十年は生きる。やはり相当な時間である。
「じゃあ行ってみましょう、今度ね」
「そうね」
 皆笑顔でこう結論付けた。
「今度ね。皆で」
「そのクッキー。食べたいわね」
 最後にクッキーが話に出た。クッキーそのものは食べられないにしろ。それでもそこにあるものを食べてみたくなった一同であったのだ。


二人で食べて   完


               2008・11・28 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧