八条学園騒動記
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第百十六話 二人で食べてその三
「あまり。今まで寝てたから」
「そう、よかった」
その言葉を聞いてまずは安心する彰子だった。
「あのね、明香」
「うん」
「今日はいいもの持って来たよ」
こう妹に言いながら玄関を前に進む。七海と先生もそれについて行く。この時二人はぺこりと頭を下げて明香に挨拶をするのであった。
「幼稚園の先生?」
「そうよ」
まずは先生がにこりと笑って明香に挨拶をする。
「小式明香ちゃんね」
「はい」
明香は先生の言葉にこくりと頷いて答える。
「そうです」
「彰子ちゃんの妹ね。お留守番大変ね」
「私はお留守番していません」
だが明香はこう先生に答えるのだった。
「私は。そんなことは」
「あら、そうなの?」
「お留守番はこの子がしています」
そう言うと部屋の奥から大蛇が出て来たのであった。アナコンダだ。平気で二十メートルはある。冗談抜きで何をされるかわからない不気味さを漂わせている。
「エリザベスが」
「そうなの・・・・・・」
流石に大蛇を見て思いきり引く先生だった。これは無理もなかった。
「蛇なのね」
「草食なんですよ」
「草食!?」
「はい、草食のアナコンダなんです」
こう先生に説明する彰子だった。
「我が家の大切なペットなんですよ」
「草食のアナコンダ!?そういえば」
ここで先生はあることを思い出した。
「確かカルタゴのザマ星系のあの?」
「はい、そうです」
彰子はにこりと笑って先生に答えた。
「あのアナコンダです。ですからとても大人しいんですよ」
「大人しいのね」
「それに凄く優しいですし」
見れば明香にその巨大な頭を摺り寄せている。それはまるで竜が乙女を恋い慕うようである。明香もそのアナコンダの頭を小さな手で優しく撫でている。
「我が家の家族の一員です」
「そうだったの。エリザベスちゃんね」
「はい」
名前は一応可愛いものだった。
「もう生まれて。ええと」
「五十年らしいわ、お姉ちゃん」
明香の方がよく知っていた。
「お父さんが言っていたけれど」
「そうだったね。私が生まれるよりずっと先からお家にいるもんね」
「そうよ。もうお爺ちゃんなのね」
「お婆ちゃんよ、明香」
姉が妹に突っ込みを入れた。
「だってエルザベス女の子だから」
まずは大蛇のお出迎えだった。七海はもう知っていたので彼女を見ても驚いてはいなかった。しかし先生はそれこそ腰を抜かさんばかりの有様だったのだった。
「あれはねえ」
「普通に引くからね」
皆エリザベスと先生の初顔合わせの話を聞いて口々に述べた。
「いきなり二十メートルもある大蛇が家の玄関ににゅって」
「普通はないから」
「そういえば」
アロアがここで皆に言う。
「彰子のお家も結構以上に大きいわよね」
「エリザベス普段はプールにいるしね」
「確かに」
なお連合では一戸建てならば普通に家にプールがあったりする。流石にアパートの個々の部屋にはないがそれでもどのアパートにもプールやトレーニングルーム等はあったりする。
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