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八条学園騒動記

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第百十一話 ポケットの中の薬その五


「まだらの紐は何処から出て来たの?」
「さあ」
「さあって」
「本当に急に出て来たのよ」 
 その通りだから恐ろしい。
「話にね。急に」
「無茶苦茶ね」
「しかも偶然通り掛ったおじさんにね」
「おじさん?」
「犬の散歩をしていた近所のおじさん」
 若本さんのことだ。本当に偶然通り掛っただけだ。
「その人がたまたままだらの紐を持っていてね」
「で、犯人だって騒ぎだしたのね」
「そういうこと。わかるのね」
「目に浮かぶようだわ」
 実際にその光景が脳裏にありありと浮かんでいるアンジェレッタであった。こうしたことは不思議なまでによくわかるのであった。
「どういった場面かね」
「それで。そのおじさんと大騒ぎになって」
「怒ったでしょうね、おじさん」
「怒ったっていうかねえ」
 今度はベッカが言う。
「驚いてたよ」
「そっちだったの」
「そう、だっていきなりだよ」
 ベッカはその時を思い出しながらまた呆れていた。
「犯人だろ、って言われたんだから」
「有り得ない展開ね」
「だからさ。もう驚いてさ」
「それでどうやって事件が終ったの?」
「呆気なかったけれどね」
 ベッカは言う。
「死体が起き上がってね」
「それはそうでしょ。あれ死ぬようなやつじゃないし」
 売っている本人だから実によくわかることだった。
「効き過ぎるだけでね」
「それが問題じゃないの?」
 ベッカは突っ込みを入れた。
「だから騒ぎになったんじゃ」
「あんなの来たら何があっても騒ぎになるんじゃないの?」
 アンジェレッタの突っ込みは正論であった。
「あの二人それこそ針が落ちても事件にしてしまうんだし」
「そうなのよね。困ったことに」
 そうなのだから始末が悪い。そんな二人なのだ。
「で、今回もそうだったのよ」
「いつものパターンね。それで事件はどうなったの?」
「だから死人が起き返ってね」
 このことをまたアンジェレッタに話す。
「それで終わりよ」
「すぐに終ったのね」
「ええ、それはね」
 このことはすぐに頷くことができた。
「騒ぎとは反比例してね」
「よかったじゃない」
「けれどそれでもね」
「そうだよね」
 ここでペリーヌもベッカもうんざりとした顔になる。
「物凄い騒ぎだったから」
「もういつものテンションでね」
「そこも相変わらずなのね」
「相変わらずも相変わらずよ」
 ペリーヌの今の言葉はかなり変な言葉だった。
「いつも通り。うんざりしたわ」
「やれやれね」
「全く。何であんなに推理を外しているのかしら」
「それだけじゃないしね」
 またベッカが突っ込みを入れる。
「あの二人はね」
「そうなのよね。無駄に元気」
 そこも問題なのであった。 
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