八条学園騒動記
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第百二話 いざ集結その一
いざ集結
「昨夜の出来事ですが」
三次元テレビがニュースを伝えていた。
「突如として姿を現わしたエンペライザーは作家である柳田算数さんの邸宅を踏み潰しそのまま何処かへと飛び去ってしまいました」
画面には完全に踏み潰されたその家とエンペライザーが映っている。同時にその作家の顔写真もそこにはある。
「今連合軍がそのロボットの行方を追っています。なお幸い死者はありません」
「ここまでやって死者なしなのね」
「凄い運がいいっていうか」
テレビは二年S1組に持って来られていたものだ。蝉玉とスターリングがそのニュースを見て言っていたのである。
「何でも柳田さん達は家族で旅行に行っていたそうよ」
「ああ、それでなのね」
「それで助かったんだ」
二人はプリシラの説明を聞いて納得したのであった。確かに運がいい。
「けれどお家がねえ」
「これまた見事に」
完全に潰されている。当然ガレージも庭も何もかもだ。完全になくなってしまっている。
「中にいたペットとかどうなったのかしら」
「猫が一匹いたけれど逃げていたらしいわ」
「それは何よりね」
プリシラの話を聞いてまずはほっとするコゼットであった。
「犠牲者がいなくて本当に何よりよ」
「全く」
「まずはよかったよかった」
誰も柳田氏の不幸については考えていない。
「死人だけは出なくてね」
「そういえばだ」
ここでギルバートも出て来た。
「あの博士が何かしても犠牲者は出ないな」
「だって警報出るじゃない」
アンがギルバートに答える。博士はそれこそ台風や地震か雷と同じ扱いにされているのである。何処までも人間とは思われていないのであった。
「博士が何かしたら」
「それはそうだが」
「そうしたら皆逃げるから」
アンがまた言う。実際に天本博士は常に何をしでかすか警戒されているのである。やはり危険物や天災と同じものだと思われているのであった。
「だから犠牲者いないのよ。博士も殺すっていえば」
「ああ」
「そこらへんのヤクザ屋さんや不良とかだけじゃない。生体実験や気紛れの実験で」
「そういえばそうよね」
「そういうところはモラルあるのかしら」
皆はアンの話を聞いて博士について話をはじめた。
「無駄な血は好まないってやつ?」
「破壊できればいいってだけで」
「それでもかなり迷惑だけれどな」
「それはね」
ルシエンとアンネットが言う。それでも平気で少なくとも何億テラ規模の災厄をもたらすのであるからたまったものではないのだ。とりわけ博士のいる日本にとっては。
「日本政府も困ってるかな、やっぱり」
「本音言うと抹殺したいでしょうね」
これは非常によくわかることであった。
「だってねえ。あんなこといつもしてれば」
「それに反省するってことないし」
反省という言葉もまた博士の辞書にはない。天才というものは決してくじけたり諦めたりしないものだと勝手に考えているのである。
「気が向いたら今みたいに出て来て」
「何かしでかすのよね」
「で、今回はこれね」
テレビには家を破壊されて泣いている柳田氏が映されているがそれは誰も見ていないのであった。博士についてあれこれ考えているだけで。
「あの博士にしては大人しい?」
「そうじゃないの?家一軒だけだし」
とりあえず今は壊れた家を見ている。ただし柳田氏には無関心である。
「とりあえずはね」
「これからどうなるかはわからないってことか」
「あの博士よ」
今度はナンがダンに告げる。
「これで終わると思う?」
「いや」
すぐに答えを出すダンであった。
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