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八条学園騒動記

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第九十八話 ドードーの親子丼その十


「繋がってると思う?大体あっちだって」
「かなり眉唾だよね」
「そういうことよ。まずエイミーと私は他人ね」
 このクラスにもフェニキア人はいる。エイミーがそれだ。しかもフェニキア人だというのにその名前はアメリカ風なのがまたおかしな話であった。
「お互い絶対大昔のフェニキア人じゃないって思ってるわよ」
「やっぱり違うの?」
「信憑性はないと思っていいわ」
 これが現状である。そもそもローリーのヒッタイトにしろ突如として姿を現わした海の民という謎の民族に瞬く間に滅ぼされている。当時鉄器を使い精強と繁栄を誇ったヒッタイトを呆気ないまでに滅ぼしたこの民族は謎の民族とされている。この時代でもその素性は不明のままだ。
「カルタゴ人ってポエニ戦争で五万まで減ってそっから奴隷に売られたじゃない」
「うん」 
 第三次ポエニ戦争でカルタゴは陥落し生き残ったカルタゴ人は奴隷として売られた。カルタゴの街は完全に破壊された。これによりカルタゴ人は歴史から消えた筈なのだ。しかし連合ではカルタゴ人の末裔達が復活して国家を築いているのである。と、されているのだ。
「何でそれで今何十億もいるのよ」
「考えてみればおかしな話だよね」
「そうでしょ?だから絶対違うわ」
「ヒッタイトだって消えてるしね」
「そういう意味でドードーよりもいることが不思議ね」
「そうだね」
 連合では誰もがわかっているがこうした復活した古の民族国家は大抵自称である。まさか本当にヒッタイト人だとは誰も思ってはいないのだ。他ならぬ彼等自身にしろ。
「とりあえずエチオピアと日本とイスラエルは除外ね」
 連合の中で中国の他に歴史の古い国だ。エチオピアに至ってはその成立した年は不明である。シバの女王の末裔が今の皇帝だとされている。この皇帝にしろ二十世紀には一旦断絶している。
「何が何だかわからないから」
「そうだね。三国共混血凄いけれど」
「エチオピアは元々白人の国だったな」
 タムタムはふと言ってきた。
「確かそうだったか?」
「黒人じゃなかったかしら」
「いや、皇帝陛下は確か白人であられたぞ」
 今も一応そういうことにはなっている。ただしそのエチオピア皇帝家もその顔にアジア系のものがかなり入り肌も黒さが加わっているが。これもまた婚姻の結果である。
「二十世紀は。確か」
「今黒人系多くない?」
「アジア系も多いわよ」
 これが今のエチオピアの現状である。
「首相は完全な黒人よね」
「どう見てもね」
 今のエチオピア首相は完全に黒人である。誰がどう見てもはっきりわかる黒人であり趣味はボクシングだ。元エチオピア学生大会ヘビー級チャンピオンでもある。常に政敵をノックアウトしてやると豪語するいささかとんでもない人物だ。
「人種的には曖昧なんだな」
「シバの女王ってそもそも黒人だったかしら」
「そうなんじゃないの?」
 これもこの時代で議論が続いていることだ。
「そういえばソロモン王もアジア系じゃなかったっけ」
「キリストもあれよね。アジア系の顔らしいわよね」
 少なくともエウロパの十字架や宗教画のそれではないのは確実とされる。あのキリストの顔はラテン系の顔だからだ。
「何でも」
「そうそう」
 ローリーがジュデイの言葉に相槌を打つ。
「そうだったんだよね、確か」
「じゃああれは何なのかしら」
 ジュデイはさらに首を傾げさせる。
「あれって?」
「聖骸衣よ」
 突如として意味深そうな言葉が出て来た。意味深いだけではなくて神秘的な響きさえ秘めている。そんな複雑な響きのする言葉であった。 
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