八条学園騒動記
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第九十七話 智には智でその十一
「それで作るの」
「何でもはじめてはあるわ」
いつものポーカーフェイスでそのジュディに言葉を返してみせる。
「終わりがあるのと同じで」
「それはそうだけれど」
「それでよかったら」
ここでプリシラは不意に三人に対して言うのであった。
「よかったら?」
「私の家に来ないかしら。今晩」
「っていうと」
ローリーはそれを聞いて述べた。
「僕達にもそのドードーの親子丼を」
「ええ、そうよ」
そういうことであった。三人を目だけで見回しながら述べる。
「どうかしら。よかったらだけれど」
「そうね」
それに最初に応えたのはジュディであった。
「私ドードーは好きよ。当然食べるのもね」
「じゃあジュディはいいのね」
「ええ。それに親子丼も好きだし」
それも好きなジュディであった。
「丁度いいわ。乗るわ」
「じゃあまずは一人」
「僕も」
次に名乗り出たのはローリーであった。
「僕もドードー好きだし」
「ローリーもいいのね」
「うん、何だか面白そう」
笑顔で話に乗って来たのであった。
「だから是非入れて。いいよね」
「参加者を募ってるのは私よ」
プリシラは今度は自分から強調してきた。
「だから。来て欲しいのよ」
「そうなんだ。じゃあ」
「ええ、御願い」
プリシラにとっては非常に珍しいことに彼女からの御願いという言葉だった。
「来て。是非ね」
「うん、じゃあ」
「それで俺か」
最後はやはりタムタムであった。彼は今まで考える顔をしていた。
「俺は。そうだな」
「どうするの?」
「二人と一緒だ。是非」
「そう。じゃあ」
「ドードーは精がつく」
鶏よりもいいとされている。それで人気があったりする。なお値段もリーズナブルとなっている。かなりポピュラーな食材であり合鴨にも近くなっている。
「だからな。これからのことを考えてだ」
「栄養補給ね」
「野球にもいい」
やはりタムタムは野球人であった。今の言葉にそれがはっきりと出ていた。
「だから。俺も」
「これで三人ね」
「それじゃあプリシラ」
またジュディが言ってきた。
「四人で。今夜は」
「そうよ。親子丼パーティーよ」
また随分と変わったパーティーであった。
「これからの為にね」
「よしっ」
今の声はジュディのものである。彼女が一番乗り気であった。
「ロシュフォール先生と戦う為の力をつけましょう」
「戦うんだ」
それにローリーが突っ込みを入れる。
「僕達先生と」
「その通りよ」
ここでプリシラがローリーに言ってきた。
「いいかしらローリー」
「うん」
自然とプリシラの言葉に顔を向ける。
「情報もまた戦いの一つよ」
「ああ、そうだったね」
言われてそのことを思い出したのだった。
「スパイもそうだよね、やっぱり」
「その通りよ」
そういうことであった。
「だからここは英気を養うのよ」
「そのためのドードー親子丼パーティーなんだね」
「ええ」
そういうことであった。これで話は決まりであった。
「じゃあ今日は放課後は」
「何もなし?」
「作戦再開は明日以降」
そういうことになったのだった。最早プリシラが実質的な司令官になっているかの様であった。もっとも司令官は最初はいなかったようだが。
「だから今日はドードーを買いに行くわ」
「了解」
「それじゃあ」
こうしてこの日は普通に終わった。だがこれは別の新たな騒動の幕開けだった。簡単に言えば一つの騒動の合間の些細とは言えない騒動のはじまりであった。
智には智で 完
2008・6・23
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