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八条学園騒動記

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第九十六話 ミステリアスその三


「それは」
「確かあの細長い鯨よね」
「学校の水族館にもいたよね、小さいのが」
「ええ」
 八条学園には水族館もあるのだった。何でもある学校である。
「あれなのね」
「味、どう?」
「普通の鯨と同じだな」
 タムタムはその鯨サンドを口の中に入れつつ二人に対して言う。
「大して変わらない」
「鯨は鯨なのね」
「そういうことね」
「やっぱり鯨なんだ」
「それでだ」
 見ればタムタムはもうサンドイッチもヌードルも殆ど食べてしまっていた。その食べる速さはかなりのものである。量だけではなかった。
「俺はこれでいいが」
「ええ、あんたはね」
「これで頼りになる助っ人が一人」
「問題はもう一人だ」
 タムタムの顔が真剣なものになる。
「あいつはどうするんだ?」
「あいつ!?ああ」
 ジュディが今のタムタムの言葉に気付いた。
「プリシラね」
「俺はサンドイッチさえあればいい」
 食べ終えたそれを指して言う。
「けれどあいつはな」
「わからないってことね」6
「そもそも何か好きなものがあるのかどうか」
「そうなんだよね」
 ローリーもそこを言ってきた。
「プリシラのことは何も知らないんだよね、僕も」
「そういえば私も」
 プリシラもそれは同じだった。
「あまり知らないわね。っていうかよく考えたら全然」
「あいつもあいつで謎の塊だからな」
 タムタムですら知らないのだった。
「何が趣味で何が好きなのか」
「わからないのよね」
「しかもだよ」
 ローリーがここで言う。
「プリシラって普段何を食べているの?」
「何をって言われたら」
「何なんでしょうね」
 それすらもわかっていないのだった。よくよく考えればプリシラも謎だらけの人間である。
「とりあえず何か食べているのは間違いないわよ」
「それは当然だな」
 タムタムもジュディのその言葉に頷く。
「生きているんだからな」
「そういうこと。人間は絶対に食べないと死ぬから」
 これは何がどうなろうか変わりはしない。そういうことだ。
「だから。何か食べてるのは確実よ」
「サプリメントだけとか」
 ローリーがまた言ってきた。
「そんなのの可能性は?」
「有り得るかも」
 ジュディは腕を組んでその可能性について言及した。
「ひょっとしたらだけれど。プリシラだからね」
「謎が多いな、確かに」
 そしてタムタムもそれに同意する。
「何が何なのか」
「わからないからね。何もかもが」
「とりあえず何かあるのは間違いないわ」
 ジュディはこう述べた。
「何かがね。それを調べる?」
「そうだね。けれど」
 ローリーは首を捻りつつ述べた。
「何かこれってね」
「これって!?」
「ひょっとしたら白い影以上の謎かもね」
「言われてみれば」
「そうだな」
 彼女の言葉にローリーもタムタムも同意する顔になった。 
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