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八条学園騒動記

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第二話 妹と兄その一


                     妹と兄
 彰子には明香という美人の妹がいる。そして実はスターリング=マクレーンにも妹がいるのだ。
「ねえスターリング」
 彼女の劉蝉玉が彼の机で声をかけてきた。
「今日妹さんいるかしら」
「アパートにかい?」
「ええ」
 アメリカから来ているスターリングはアパートを借りて住んでいるのだ。八条学園は連合中から生徒を受け入れ、他国の生徒はアパートから通う場合が殆どだ。その家賃は学費に入っている。スターリングは妹の隣の部屋に住んでいるのだ。
「どうなの?」
「確かいるんじゃないかな」
 スターリングは考える顔でそう答えた。
「いるのね?」
「多分ね」
「多分って」
「あいつのことはよくわからないんだ、実は」
 ここで少し困った顔になった。
「隣同士だけど部屋が違うから」
「そうなの」
 蝉玉はそれを聞いて困った顔になった。
「それは少し困ったわね」
「困ったって何かあるの?」
「うん、ちょっとね」
 蝉玉はその言葉を受けて話しはじめた。
「うちの兄貴がさ」
「兄貴って」
 スターリングはそれを聞いて目をしばたかせた。
「大学の文学部にいる君のお兄さん?」
「そう、その兄貴よ」
「そのお兄さんがどうかしたの?」
「その娘の家庭教師になるらしいのよ」
「へえ」
「へえって」
 それを聞いても特に驚かないスターリングに蝉玉はむっとした顔になった。
「大事だと思わないの?」
「そういえばあいつに家庭教師をつけたいって実家のパパやママが言ってたから」
 スターリングは答えた。
「それが君のお兄さんだったんだなって」
「そう思っただけ?」
「それ以外にどう思うんだよ」
 逆にそう問い返してきた。
「家庭教師になるだけでさ」
「うちの兄貴なのよ」
「だからそれが」
「年頃の女の子に若い男がって。どう考えても危ないでしょ」
「そんなこと言ってたら僕達だってそうだし」
 両手を頭の後ろに組んで言う。
「一緒じゃないかな」
「あのね、スターリング」
 彼女は危機感のない彼氏にムッとしながら言った。
「年頃の女の子がそもそも若い男と一緒の部屋にいたら」
「何かあるっていうのかい?」
「そうよ」
 蝉玉はきっとしてこう述べた。
「それ位わかるでしょ。それなら」
「けどそんなの僕達がここであれこれ言ってもはじまらないよ」
「そんなのわかってるわよ」
 きっとして言い返す。
「だから今日ね、私が直接あんたの妹さんに言ってやるのよ」
「何て?」
「うちの兄貴に何かされそうになったら」
「うん」
「バットで頭を思い切り殴ってやれって」
「バットで」
「理想は金属バットね」
 しれっとした様子で言う。
「軽くて硬いから。脳天なんかやったら一撃よ」
「過激にとんでもないこと言うなあ」
「あんたの妹さんの為よ」
 当の蝉玉はそれをとんでもないとは全く思ってはいない。
「当然でしょ」
「当然なんだね」
「そうよ。とにかく今日の放課後よ」
 スターリングに拒否権はなかった。
「いいわね、それで」
「わかったよ。じゃあ放課後ね」
「そういうこと」 
 これで話は纏まった。というよりは蝉玉が強引に纏めさせた。かくして二人はスターリングの隣のアリスの部屋に向かうことになった。だがここで二人途中参加が加わった。
 
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