八条学園騒動記
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第八十七話 動物発見隊その四
「ジャーマンポテトっていったらやっぱりね」
「だから」
「そうか。ならいいんだけれどな」
妹達の言葉を聞いて満足した笑みを浮かべる。
「じゃあ。これ切ったら御飯炊くからな」
「それ私達がしようか?」
「いつもお兄ちゃんがしてるし」
「ああ、いいよそれは」
しかしこの申し出は断るベンだった。
「幾ら忙しくても御飯は自分で炊くさ」
「またどうして?」
「自分の好みに炊けるだろ」
理由はそれだった。些細だがかなり大きな理由であった。
「だからだよ」
「何だ。何かと思ったらそんなことなのね」
クララは兄の今の言葉を聞いてまずは拍子抜けした。
「些細なことっていうか」
「こだわりかと思ったけれど」
「けれどこれって案外重要だぞ」
また妹達に述べる。
「自分の好みのものが作られるっていうのはな」
「そうなの」
「ああ。それで最近」
そうしてまた言うのだった。
「凄い元気だしな。そのせいで」
「それは多分違うわ」
「そうよ」
だが今の言葉は妹達に容赦なく突っ込まれた。
「夜更かししなくなったからよ」
「動物達の名付けで」
「何だよ、言うのはそれか」
妹達にまでクラスメイト達と同じことを言われて顔を顰めさせるのだった。
「そんなに僕のネーミングは悪いのか」
「最悪よね」
「はっきり言ってね」
妹達の言葉も同じだった。
「どうしようもないっていうか」
「流石に駄目でしょ」
「ちぇっ、わかったよ」
妹達にまで言われて憮然となる。その憮然とした顔で述べるのだった。
「じゃあそれは諦めるか」
「センスないから」
「センスないか」
「全然」
次女のルーシーの言葉だった。
「料理のセンスはあるのに」
「自分ではそうは思わないけれどなあ」
首を捻る。自分としては普通のことをしているつもりなのだ。
「まあいいや」
「いいの」
「ああ。やることをやるだけさ」
そう言いながら切り終えた玉葱をボールに移す。今度はジャガイモを出してきた。実に見事な包丁捌きをまたしても見せて皮を剥いていく。
「僕のやることをね」
「そうなの」
「じゃあお兄ちゃん」
妹達はまた兄に言葉をかけてきた。
「何かな、今度は」
「明日の晩御飯のおかずだけれど」
「今作っているのは今日のだぞ」
話を聞いていて随分早いと思っていた。しかしそれでも妹達の話を聞くのだった。何だかんだ言って彼も兄であった。なお兄弟で一番上である。
「まあいいさ。それで明日は何なんだ?」
「お蕎麦がいいわ」
「蕎麦か」
「ええ、どうかしら」
それを兄に問うのだった。
「お蕎麦で」
「今日のお昼のお弁当鮎の唐揚げと野菜のにっころがしだったじゃない」
「ああ」
昨日の夕食の残りである。そこにデザートのフルーツを切って入れて主食は御飯である。最高の組み合わせの一つである。
「それ食べていたら思ったのよ」
「お蕎麦もいいなって」
「そうか。お蕎麦か」
ベンもその話を聞いてまんざらでもない顔を見せるのだった。
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