八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第八十七話 動物発見隊その一
動物発見隊
ベンの三人の妹のクララとルーシーとケイト。この三人には特殊能力がある。
「ねえお兄ちゃん」
「また拾ったよ」
こう言っては動物を何処からか拾って来るのだ。連合では動物を捨てることは犯罪なので野良犬や野良猫はいないが野生動物はその限りではない。野生の犬や猫もいるのだ。
「はい、トッケイ」
「可愛いわよね」
「トッケイか」
オオヤモリともいう。鳴き声からトッケイとも呼ばれているのだ。
「また随分と変わったもの見つけてきたな」
ベンは帰宅と共に台所で人参を切っている自分に見せてきた妹達とそのオオヤモリを見て呟く。
「何処でそんなもの見つけたんだ」
「川辺にいたのよ」
「ねえ」
「川辺か」
それを聞いて見つけた場所については納得した。オオヤモリはそうした場所にいるからである。これについては彼も知っているのだ。
「それでも。よく見つけてきたな」
「まあね」
「運がよかったわ」
「運がいいか?」
ベンは包丁を使いながら妹達の言葉に首を捻る。
「あまりそうは思えないんだがな」
「そうかしら」
「運がいいわよね」
「ねえ」
三人で言い合うのだった。
「オオヤモリがこんなところで見つかるなんて」
「この前なんか狼だっていたしね」
「野生の狼か」
そんなものが野外にいるだけでも驚きである。
「危ないだろ、普通に」
「あれ、お兄ちゃん知らないの?」
次女のルーシーが笑って兄に対して言う。
「狼って人襲わないのよ」
「そうなのか?」
「そうよ。野生の狼でもね」
「そうだったのか」
これについては彼も知らなかった。話を聞いて包丁を使いながら驚いた顔になる。顔は妹達に向けられたままだが包丁は正確に動いている。
「だから犬になったんじゃない」
「そうでしょ?」
「そういえばそうか」
言われてみてようやく気付いたのだった。
「人襲わないからか」
「そういうこと」
「犬が人間の友達なら」
これからの言葉もまたそうなるのだった。
「狼も人間の友達よ」
「そうでしょ?」
「まあそうだな」
ベンもそれに納得して頷く。しかしだった。
「けれど。森に狼がいるのもな」
「ああ、大丈夫よ」
しかし妹達は平気な顔のままでまた言葉を返してきた。
「それはね。全然平気」
「人を襲わないだけじゃなくて家のペットとか普通に危ないだろ」
「森の方が食べ物豊富だし」
「それに森にはちゃんと人がいて自然保護しているし」
この時代では連合各国にこうした自然保護官がいるのだ。木々や動物達の保護及び自然破壊にならないようにコントロールしているのである。
「ニホンオオカミだしね」
「ニホンオオカミか」
地球ではいなくなったと言われてきた日本にいた狼だ。普通の狼と比べて原始的でありしかも身体が小さい。森林に棲む狼なのだ。
ページ上へ戻る