八条学園騒動記
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第八十五話 恐怖のバイキングその八
「それは事実だよね」
「だからなんだよ。カレーもそうだけれどマウリアって記憶に残るよ」
「そうだね。まあ安心して」
ロミオはまた二人に言ってきた。
「何?」
「これから行く映画はマウリア映画じゃないからさ」
「それはないんだ」
「二人共その方がいいでしょ」
今度はペリーヌが言ってきた。
「マウリア映画よりもオーソドックスな映画の方が」
「ええ、まあ」
蝉玉が答えてみせてきた。
「日本映画よね」
「そうよ、アニメ」
しかもアニメであった。日本文化が誇る芸術とさえ言われているものである。
「それと特撮。合計三本立てよ」
「面白そうね」
「面白いから特撮よ」
ペリーヌの意見だった。彼女は特撮好きでもあるのだ。
「世界征服を企む悪の貴族集団と戦う正義の戦士達の話よ」
「貴族集団っていうと仮面ライダーの最新作ね」
「そうよ。仮面ライダーノーブル」
この時代の仮面ライダーだ。ウルトラマンはウルトラマンウィング、戦隊ものは爆発戦隊バーンレンジャーとなっている。基本的にはどれも二十一世紀と変わらない。特撮は健在であった。
「それの映画版よ。同時上演が戦隊と魔女っ子ものでね」
「お決まりのラインアップね」
「それじゃ嫌?」
また二人に問うてきた。
「嫌なら他のものがあるけれど」
「私は別に」
蝉玉はそれは断らなかった。
「いいけれど」
「スターリングは?」
「僕もいいよ」
スターリングも頷いてみせた。反論はなかった。
「戦隊もの好きだしね」
「ライダーの今度の貴族集団ってそういえば」
蝉玉はここでふと気付くのだった。
「エウロパのあれよね、絶対に」
「っていうかそのものでしょ」
ロミオがこう述べた。
「あれはどう見ても」
「敵役としてはオーソドックスだけれどね」
「そうだよね」
連合の敵であるエウロパが敵役として扱われるのは当然のことであった。これまでにもエウロパをモデルとした敵が数多く出て来ている。エウロパを敵役にすると確実に視聴率があがるというジンクスというか法則まである。そこまで連合ではエウロパは敵視されているのだ。
「戦隊の敵だってノーブルメンだし」
「あれもどう見てもエウロパ」
「まあいいじゃない」
スターリングがここで結論を出したのだった。
「エウロパが敵なら。何か納得できるしね」
「そうだよね、やっぱり」
ロミオが彼のその結論に賛成する顔で頷く。
「エウロパだとね」
「何か異星人とか地底勢力とか異次元から来た存在とか」
どれも特撮ものの定番の敵役だ。
「鏡から来た勢力とかマッドサイエンティストとか」
「最後は本当にいるわよ」
蝉玉が突っ込みを入れた。
「あの博士がそうじゃない」
「あの博士ねえ」
ペリーヌは博士と聞いて難しい顔になるのだった。何があっても平気な様子を維持し続けてきている彼女には珍しい顔であった。
「何者なんでしょうね、実際のところ」
「人間じゃないんじゃないの?」
蝉玉はふとした感じで述べる。
「大昔の日本軍と同じで」
第二次世界大戦の頃の日本軍は伝説が完全に一人歩きして時として何処かの戦闘民族扱いされている。幾ら何でも柔道で一億人殺したとあってはそれはもう人間ではない。
「洪童が日本軍マニアだったよね」
ロミオはふとそのことを思い出した。
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