八条学園騒動記
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第七十八話 カレー薀蓄その四
「何か胸焼けしてきたし」
「カレーの話ばかりしていたら」
「そうなの。まあ食べ終わったし」
食べるのは早い。もうカップヌードルを食べ終えてスープを再生ゴミ箱に捨てていた。生ゴミ用ですぐにスープも蒸発するようにできているのだ。これもまた科学技術の結果である。それができるだけ無駄をなくすように、そして汚すのを最低限に抑えているのである。
「行きましょう」
「そうね」
「もういい時間だし」
時計を見ればそうであった。今行けば丁度ホームルームの時間であった。時間的には本当にいい感じだった。三人共納得できる時間であった。
「行きましょう」
「明日ね」
「それでお昼はどうするの?」
七海の話はもうそこに行っていた。話の中心はやはりそこにある。人間は食べないと生きていくことはできない、それは何が起ころうと変わりはしない絶対の定義である。しかし彼女の言葉はそれを超えたものがあった。簡単に言ってしまえば食い意地というやつである。これに勝るものはこの世には存在しない。これもまた何が起ころうと変わりはしない絶対の定義である。
「お昼は」
「食堂ね」
「そうね」
二人は今日はそのつもりであった。
「何がいいかしら」
「中華風レストランに行く?」
巨大な学園なので中に様々な店がある。中華風レストランだけでなく他にも様々な料理店があるのである。一体どれだけあるかというと少し見回っただけではわからない程である。
「今日は」
「いいわね、それって」
パレアナはコゼットのその提案に頷いた。
「あんた豚も食べるのよね」
「食べる前にアッラーに謝ってね」
「それでも食べるの」
「あくまで目標だから」
イスラムの決まりは実際はそうした感じのものが多いのだ。占いにしろ禁止していながら占星術が発達しているし酒はサハラでもよく飲まれている。あくまで節度ということである。
「だからいいのよ」
「じゃあ酢豚もいいわね」
「そうね。じゃあそれと炒飯ね」
「あっ、いい感じ」
昼食としては最高の組み合わせてあると言えた。日本でも昔から中華料理の組み合わせとしてはポピュラーなものである。
「それにラーメンをつけて」
「いいわね」
「あっ、ラーメンなの」
七海は今度はラーメンという言葉に反応してきた。
「お昼にはいいわね」
「あんたラーメンも好きなの」
「醤油味が好きよ」
どうやら本当に好きらしい。あえてここで醤油味というところまで指定してきたからだ。
「ラーメンはね」
「ラーメンも好きなの」
「何か定番みたいな」
「けれど実は」
しかしここで顔が曇るのであった。
「酢豚はあまり」
「あれ、嫌い?」
「酢豚は駄目なの」
「豚肉は好きよ」
それ自体は構わないらしい。それを自分でも告げた。
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