八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十二話 大勝負その八
「そのことにはね」
「最初からまんざらじゃなかったってことに」
「マラソンの前からそうだったんだ」
「僕も今気付いたんだ」
トムは照れ臭そうに笑ってセドリックに告げる。
「実のところはね」
「それだけ微妙だったってことだね」
「微妙だったけれど伏線はあったんだよ」
トムの言葉はこうであった。
「だから上手くいったんだ。マラソンは結局きっかけだったんだよ」
「何かそれを考えると面白い話だね」
セドリックは歩きながら言う。それを今実感しているのだった。
「ハッピーエンドに終わったしね」
「それが一番だしね」
トムもそれは歓迎するのだった。
「よし、じゃあ僕も頑張るか」
「彼女見つけるってこと?」
「何かあの二人見ていたら羨ましくなってね」
そうセドリックに言う。
「誰かいないかな」
「そのうち見つかるんじゃないの?」
セドリックはここでは何故か他人事であった。
「これって結局縁だからね」
「それはわかっているよ。ところで」
「何?」
自分に顔を向けてきたトムに対して問う。
「いや、セドリック随分落ち着いているなって思ってね」
トムが言うのはそこであった。
「どうしてなの?彼女いるとか?」
「実は許婚がいるんだ」
「許婚・・・・・・いるんだ」
「子供の頃に決められてね」
ここで明るい笑みをトムに見せてきた。
「実は八条学園にもいるし」
「そうだったんだ。意外だね」
「別に隠していたわけじゃないけれどね」
それは否定するのであった。
「実はそうだったんだ」
「セドリックの許婚かあ」
「よかったら紹介するけれど」
「別にいいけれど」
それにはあまり乗り気ではないトムであった。
「別に僕が彼女紹介してもらえるわけでもないし」
「まあまあ」
少し苦い顔になったトムをまた宥める。
「そんなこと言わないでね。ここは是非共」
「紹介させて欲しいってこと?」
「そうだよ。駄目かな」
「そこまで言うのなら別にいいけれど」
彼も強く拒むわけではない。だからここでは頷くのであった。
「じゃあ御願いさせてもらうよ」
「うん、それじゃあ今度の土曜ね」
またにこりと笑ってトムに告げてきた。
「楽しみにしておいて」
「どんな娘なのかな」
トムは次にそれについて考えだした。
「それも楽しみにしておくね」
「是非ね。とても可愛いから」
「可愛い娘なんだ」
それを聞いて期待もする。今度はセドリックの話になった。トムはマルコとメアリーのことはもう忘れてセドリックの許婚のことについて考えるのであった。
大勝負 完
2007・12・18
ページ上へ戻る