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八条学園騒動記

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第六十五話 セッティングその二


「あんたにね」
「あんたは何もしないの」
「何もしないわけじゃないけれど」
 そこまで薄情ではないダイアナであった。
「それでもね。何も起こらないことを祈るわ」
「私もそうよ」
 意外にもそれは同じであった。
「下手なことにならないといいけれど」
「カムイだからねえ」
 ダイアナは腕を組んで溜息をついた。それが問題なのだ。
「何が起こるやら」
「何を起こすやらかも」
 言い得て妙だった。本当にそんな男なのが問題なのだ。
「何だったっけ。前」
「聖帝親衛隊だったっけ」
 かつて勝手にそう自称して洪童と組んでカップルの邪魔をしまくっていたことがある。人間としてかなりな行為であるのは言うまでもない。
「訳のわからないことしていたわよね」
「あの時本気で気孔やってやろうかって思ったわよ」
 蝉玉も容赦がない。
「馬鹿やるんだから。何の漫画なんだか」
「変な服だったしね」
 その聖帝親衛隊の服のことである。
「核戦争後の世界みたいな」
「そうそう、それか地震の後の世界みたいな」
 ダイアナも蝉玉もそれぞれ言うがこうした世界観の漫画やアニメ、小説はこの時代にも存在している。日本から定着したと言われているが連合ではかなりポピュラーな設定と言える。これ程実際に住むとなると嫌だが作品として読むと面白い設定はない。
「服着て暴れたしねえ」
「今回も失敗したらそうなるかも」
 二人はそれを危惧していた。
「あいつ馬鹿だから」
「そうよね」
 ダイアナはまた蝉玉の言葉に頷くのだった。頷きながらカフェの中の照明や椅子を動かす。そうして舞台を設定しているのだった。
「そこが最大の問題だけれど何とかなるんなら」
「何とかしましょう」
「ええ」
 二人はそう話して舞台を設定していくのだった。それは公園でも並木道でも同じだった。とにかく慎重に丹念に話を進めていくのであった。
 そうしてデートになる。待ち合わせ場所はもう決まっていた。
「ラブレターには何て書いたんだい?」
 ピーターが妹に問う。
「最初は駅前の噴水のところで待ち合わせだけれど」
「うん、いいね」
 ピーターは彼女からその言葉を聞いて満足して頷くのだった。
「それで問題はないよ」
「あそこは待ち合わせ場所に問題ないわよね」
「それだけじゃないんだ」
 彼はここで妹にこう告げた。
「ここだけじゃないって?」
「そこでコインを後ろ向きに噴水に投げる」 
 所謂トレビの泉である。この時代そんな場所は幾らでもある。
「そうすれば恋が実るって言われているんだ」
「そうなの」
「問題はそれをカムイ君が知っているかどうかだけれど」
「あいつそんなの知らないわよ」
 横からウェンディが言ってきた。
「意外とそういうところは見逃すから。安心して」
「そう。じゃあそれは安心だね」
「ええ」
 かなり酷い言葉であった。
「まあ最初にはいいわね」
 ウェンディはそこには太鼓判を押したのだった。
「目印になり易いし」
「肝心なのはやっぱりこそこだね」
 ピーターもそこを指摘するのだった。 
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