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八条学園騒動記

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第六十三話 ピーターの妹その七


「これから色々と忙しくなるわね」
「そうね」
 蝉玉もそれに頷く。
「何かとね。あんた達もよ」
「うん」
「わかってるさ」
 スターリングとアルフレドが蝉玉の言葉に頷く。
「色々とやらせてもらうよ」
「僕達だけじゃないかもな」
 アルフレドはこう考えを及ばせてきた。
「多分クラスの皆も」
「ああ、それはもう規定事項だから」
 ビアンカは笑顔で応える。
「ギルバートとアンの時と同じでね」
「ああ、あの時と一緒なんだ」
 スターリングはそれを聞いて納得した顔になる。
「だったらわかるよ」
「わかれば宜しい」
 ウェンディはふざけて言う。その次に彼氏に顔を向ける。
「あんたもね」
「喜んで」
 ピーターもにこやかに言葉を返す。
「可愛い妹の為なら」
「そういうこと」
「それでね」
 ピーターはここで言う。
「肝心のカムイ君に気付かれないことが肝心かもね」
「ああ、それは大丈夫だから」
 ビアンカが彼に答える。
「そうなの?」
「だって。馬鹿だから」
 やはり答えはそこにあった。
「それは安心していいわ」
「そうなんだ。だったらいいね」
「いいのね、それで」
 ウェンディが横から彼氏に突っ込みを入れる。
「滅多なことじゃ気付かないわ。まあ何するかわからないところがあるけれど」
「何かをねえ」
「結局は馬鹿だから」
 今度は蝉玉が言う。かなり散々なカムイの評価である。
「突拍子もないところがあるのよ」
「それが問題かな」
 ピーターは腕を組んで思索に入った。
「強いてあげるとすると」
「そうね。不確定要素があるのがねえ」
「けれど。それはまあ想定の範囲内だね」 
 そうウェンディに告げる。
「何とでもなるね」
「何とかなるかしら」
「大丈夫だよ」
 笑顔でまた言うピーターであった。
「大体は予想がつくから」
「あまり甘く見ない方がいいわよ」
 蝉玉が彼に突っ込みを入れた。
「あいつも結構破天荒だから」
「うちのクラスは特別だって知ってる?」
 ビアンカの忠告はまた別格であった。かなり現実味のあるものであった。
「凄い面々が一杯いるんだから」
「フランツとかテンボとかジャッキーとかねえ」
 ウェンディが挙げた面々は少なくとも学園内でも有数のあれな顔触れであった。一度動けば何かを引き起こす、そんな連中である。
「まあカムイはそれ程じゃないけれど」
「それでもね。彼女が絡むと」
 相当なものになるというのだ。彼女達の言葉は実に深刻なものがあった。
「洒落にならないし」
「困ったことにねえ」
「何か面白い方みたいですね」
 そこまで話を聞いたティンの言葉であった。
「何か御会いしたくなりました」
「こう言ってるわよ」
 ビアンカは蝉玉とウェンディに告げた。
「何か乗り気になってるけれど」
「じゃあいいんじゃない?」
 蝉玉はそれで納得するのだった。
「本人がいいって言ってるんなら」
「それもそうね」
 ウェンディも同じ考えになっていた。
「考えたらこれも最大の問題の一つだったけれどね」
「それがクリアーされたし」
「まずはめでたしね」
 こうした話は一方だけで進むものではない。両方があってはじめてなるものだ。だが今その一方であるティンが笑顔で言う。これで一つの関門を越えたのである。彼等にしてはまずは喜ぶべきことであった。
「じゃあ後はセッティングだね」
「そうだな」
 アルフレドはスターリングの言葉に頷いた。
「何時何処でするか」
「それが問題だね」
 男二人はそれについて話し合う。ピーターもそれに乗るのであった。
「だったらさ」
「いい考えがあるんだね」
「うん。ここはある程度任せて」
 笑顔で二人に告げる。
「いいかな」
「何か策があるんだな」
「秘策がね」
 笑ってアルフレドに言葉を返す。
「そういうことだから」
 その笑みには秘めたものがあった。話は彼を軸として進もうとしていた。だがそれがどうなっていくかは。ピーターにすらわからなかった。


ピーターの妹   完


                 2007・10・25 
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