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八条学園騒動記

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第六十二話 爽やかな若者その六


「そういえばそうよね」
「どうしてかしら」
「たまたま?」
 蝉玉はそう考えた。
「ひょっとして」
「いや、それは違うな」
 だがそれはアルフレドが否定してしまった。
「彼はそんなのじゃない。あれだけ誰でもいいと言っている人間が」
「そうよねえ」
「じゃあ何でかしら」
 蝉玉もウェンディもこれには答えが出ない。あれこれ考えてもどうしてなのか全くわからないのであった。しかもわからないとかなりイライラしてきた。
「まあここはね」
 それを見てビアンカが二人に声をかけてきた。
「それはそれでいいんじゃないかしら」
「いいの」
「だって。考えても仕方ないじゃない」
 うっすらと笑って述べるのだった。
「そうでしょ?」
「まあそうね」
「それじゃあ」
 二人もそれに頷く。そこでスターリングが動いた。
「すいません」
「はい」
 店員さんに声をかけていた。見れば洒落た黒いスーツの店員さんだ。何処か執事めいていてそれが店の雰囲気と妙に合っていた。
「パンケーキ下さい」
「幾つですか?」
「六つです」
 そう注文するのであった。
「シロップたっぷりと」
「あっ、いいね」
 ピーターはシロップたっぷりのパンケーキと聞いて嬉しそうな声をあげた。
「それって」
「パンケーキ好きなんだ」
「うん、それもかなり」
 そうスターリングに答えるがやはりにこにこしている。
「やっぱりパンケーキだよね」
「私も」
 ウェンディもそれは同じであった。
「やっぱりあれが一番よね」
「ああ、二人共なのね」
 蝉玉はそれを聞いて少し意外といった顔であった。
「何か面白いわね」
「そうだね」
 それにスターリングも頷く。
「僕と蝉玉って大好きなものは結構分かれてる感じだから」
「肉まんとハンバーガーとかね」
 二人共両方食べるがそれでも大好物というとどちらかなのである。その辺りが結構難しいのである。食べ物の好みは一番複雑な問題の一つである。
「他にもあるわよね」
「そうだね」
「けれどパンケーキは?」
「大好きだよ」
「大好きよ」
 にこりとしてピーターの言葉に応える。
「あれはやっぱりね」
「シロップたっぷりで」
 そこも同じであった。お互い好きなものがここにあった。
「それでいくのが一番いいよね」
「そうそう」
「たっぷりと甘く」
 ウェンディもかなりの甘党のようである。それがわかる言葉であった。
「それこそパンケーキの色が変わる位にね」
「何かそれってあれよね」
 蝉玉がそれを聞いて言う。
「金内相みたいね」
「あの人はもっと凄いでしょうけれどね」
 そこにそのパンケーキが来た。それも人数分。六人は笑顔でそれぞれの前にそのパンケーキが並べられるのを見ていた。この瞬間もまた実にいいものである。
「どんなのかちょっと想像がつかないけれど」
「まあいいんじゃないの?」
 ビアンカはまずシロップをたっぷりとかけた。黄色いパンケーキの生地が忽ちのうちに紅茶色になっていく。それを楽しげに眺めてもいた。
「それでも美味しければ」
「まあそうね」
 蝉玉も楽しげにシロップをかけながら応える。
「とにかく美味しくね」
「これで飲むのは」
「紅茶ね」
 ウェンディはにこりと笑って述べた。
「やっぱりそれでしょ」
「そうよね。紅茶」
 ビアンカもそれに頷く。
「しかもレモンティー」
「そうそう」
「やっぱりそれだよね」
 それに賛成したのは蝉玉とスターリングのカップルであった。お茶の好みは同じであるらしい。 
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