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八条学園騒動記

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第五十六話 スペードの女王その二


「あいつには散々煮え湯を飲まされてるしな」
「ではわかっている筈だ」
 タムタムはまた述べる。
「あの女がそうしたことが得意なのをな」
「そうだな。そう言われるとわかりやすいぜ」
 これでようやく納得した。
「じゃああれか。真剣にやらねえと」
「困るのは御前だ」
 言葉が一旦冷徹なものになる。
「いいな」
「ああ、よくわかったぜ」
 ようやくタムタムの言葉に乗ってきた。
「じゃあ。どうするかだよな」
「とりあえずあいつのイカサマは俺に策がある」
「そっちは任せていいんだな」
「そうだ。御前はポーカーに専念しろ」
 そう言う。
「わかったな。それで」
「ああ、じゃあ俺はポーカー専門だな」
「それでだ。今度は」
 続いて話をまた出す。
「あの女のパターンがこれだ」
「それか」
 今まで手に持っていたノートを出してきた。見ればそこにはかなり細かいデータが書き込まれていたのだった。まるで野球のそれのように。
「これはまた」
「わかるな」
 タムタムはフックに問うた。
「かなり細かくて申し訳ないが」
「いや、それはいいさ」
 フックもそれはよしとした。
「ただ。かなり細かいな」
 それに驚いているのである。これは彼の予想を越えていたのだ。
「あいつの小さな癖まで。ふんふん」
「これはすぐに気付いた」
 カードが悪い時には二度瞬きをする。そんなところまで書かれていたのだ。
「あの女の癖はかなり多い」
「成程ねえ」
「イカサマをする時にはだ」
 そこも突っ込まれていた。
「こうする」
「そうするのか」
「そうだ。その時は俺が動くからな」
「ああ、じゃあそっちは頼むぜ」
「御前の癖を合わせると」
 同時にフックのことについても細かく書かれていた。それはさながら徹底解剖であった。こうしたところは流石にタムタムであった。
「御前はどんどん勝負に出ていい」
「いつも通りだな」
「そういうことだ。御前の普通の実力でいけばかなりいける」
「イカサマを封じたらか」
「わかったな」
「何かな。思ったより簡単だな」
 次にこう述べた。
「俺はもっと言われると思ったんだけれどな」
「それは実力次第だ」
 タムタムはこう返した。
「御前の実力が高かったからだ。あの女よりもな」
「ふうん」
「後はノートをコピーしておくからよく見ておいてくれ。いいな」
「じゃあそういうことで終わりだな」
「ただ。当分酒とナンパは慎んだ方がいい」
「なっ!?」
 この言葉がフックにとって一番の恐怖だった。それをいきなり言いつけられて彼は顔だけでなく身体全体も凍りつかせたのであった。
「今何つったよ」
「だから酒とナンパは止めておけ」
 彼はまた言った。
「いいな」
「よ、よかねえよそんなの」
 彼はすぐに反論した。
「何で俺がそんなことを」
「全ては勝つ為だ」
 やはり冷徹な言葉だった。
「あの女にな」
「それとこれとは関係ねえだろ!?」
 狼狽しきった顔になって反論する。
「何で酒と女の子までよ」
「情報が漏れる」
 タムタムはやはり冷徹に述べてきた、
「そうなれば終わりだ」
「それかよ」
「わかったな。せめて酒は家の中でやれ」
「ちぇっ」
 それを言われて口を尖らせる。
「それはよく踏まえてくれ」
「じゃあ家でやるか?」
 フックはそこまで聞いてこう提案してきた。タムタムは目の光を少し変えてそれに応える。 
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